JRPによるサタデーミーティング(定例会見)において、来シーズンのスーパーフォーミュラレースの併催レースとして、TCRマシンによるスプリントレースを開催することが発表された。
会見を行ったJRPの倉下氏によると、シリーズタイトルは「TCRジャパンシリーズ」(仮称)とし、運営は株式会社日本レースプロモーション(代表取締役社長・倉下明)、コックス株式会社(代表取締役社長・渦尻栄治)、株式会社童夢(代表取締役社長・高橋拓也)の3社により設立する「日本TCRマネジメント株式会社」により行う。
参加ドライバーは、アマチュアのジェントルマンドライバーとし、プロドライバーの参加は認めない予定。台数は13台から始め、将来的には25台程度を目標とする。車両は現状のTCRマシンであるホンダシビックやアウディを中心にしてスタートするが、車種を増やすべく自動車メーカーに対する働きかけを継続して行うとのこと。
現状、スーパーGTシリーズではF4レースを併催しており、観客は1つのイベントでツーリングカーとフォーミュラのレースを楽しむことができる。スーパーフォーミュラもTCRレースの併催で同様になるが、ジェントルマンドライバーによるレースを、参加者のみならず観客にとってどこまで魅力的なものにできるかが、シリーズの成否を左右しそうだ。
まとめ: Shigeru KITAMICHI
Photo: Yoshinori OHNISHI
予選日、日本レースプロモーション(JRP)による恒例のサタデーミーティング(定例会見)が行われ、来シーズンの暫定スケジュールが発表された。
来シーズンは今シーズン同様全7戦で行われるが、発表されたスケジュールに関しては、スーパーGTを運営するGTアソシエーションなどをの調整を経て、チームにも観客にも負担にならないよう配慮したとのこと。
2019年全日本スーパーフォーミュラ選手権暫定スケジュール
第1戦 4月20~21日 鈴鹿サーキット
第2戦 5月18~19日 オートポリス
第3戦 6月22~23日 スポーツランドSUGO
第4戦 7月13~14日 富士スピードウェイ
第5戦 8月17~18日 ツインリンクもてぎ
第6戦 9月28~29日 岡山国際サーキット
第7戦 10月26~27日 鈴鹿サーキット
また、今シーズンの第6戦岡山では、予選Q3でオーバーテイクシステムを2回使用できるようにすること、最終戦鈴鹿は1レース制(昨年は2レース制)で行われることも併せて発表された。
まとめ: Shigeru KITAMICHI
Photo: Yoshinori OHNISHI
前戦の富士から約1か月のインターバルを経て、決戦の舞台は秋の気配漂うツインリンク(TR)もてぎに移された。今シーズンはこのもてぎ戦を含めて残り3戦。今回の結果がタイトルの行方を大きく左右することは間違いのないところだ。
この週末、急に涼しくなった関東地方だが、北関東に位置するTRもてぎは尚更秋の気配が漂っている。予選日は早朝から快晴。予報によるとこの週末雨の心配はなさそうだ。
昨日金曜日に行われた専有走行では、#8大嶋和也(UOMO SUNOCO SF14)が唯一人1分34秒を切る1分33秒772をマーク。予選日の朝、9時40分から1時間行われたフリー走行では、これが当面のターゲットタイムとなった。
全車ミディアムタイヤを履いて走行をスタートし、順調に周回を重ねていたが、開始15分、ディフェンディングチャンピオン#1石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO INGING SF14)が最終コーナーでスピン。エンジンを止めコース上にストップしてしまったため、走行は一時中断となる。
再開後、30分を過ぎた頃からソフトタイヤに交換しアタックを開始するマシンが出始め、まずは#17塚越広大(REAL SF14)が昨日のトップタイムを上回る1分33秒170でトップに立った。
開始40分を過ぎ、#64ナレイン・カーティケヤン(TCS NAKAJIMA RACING SF14)が1分33秒001、#65伊沢拓也(TCS NAKAJIMA RACING SF14)が1分32秒641と、ナカジマレーシングの2台が相次いでトップタイムをマーク。好調さをアピールした。
残り10分を切ってから、チャンピオンを争う#16山本尚貴(TEAM MUGEN SF14)、#3ニック・キャシディ(ORIENTALBIO KONDO SF14)、#19関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14)がソフトタイヤに交換してアタックするも、#3キャシディが1分32秒974で6番手に食い込むのがやっと。シリーズをリードするドライバー達は軒並み下位に沈み、午後の予選に向け不安を残すことになった。
最後の最後で貫録を見せたのは、コースレコード(昨年マークした1分31秒888)ホルダーの#5野尻智紀(DOCOMO DANDELION M5S SF14)。ソフトタイヤでの一発アタックで#65伊沢を上回る1分32秒476を叩き出し、もてぎに強いところを見せ走行を締めくくった。
Text: Shigeru KITAMICHI
Phot: Motorsports Forum
決勝日朝、スーパーGTを運営するGTアソシエイション(GTA)坂東正明代表による定例会見が行われた。
- 7月末に発表された来季カレンダーについて
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結果的には今シーズンと同様になったが、検討の過程では3月開幕の可能性なども検討した。ただ、3月開催となると路面温度も低くなるので、安全性を考え岡山での十分なタイヤテストが必要になる。また、2月に行われるセパンでのテスト走行との兼ね合いなどで、例年どおりの開幕時期になった。その他にも、8月の富士は2020年の東京オリンピック、9月のオートポリスはラグビーのワールドカップの開催なども考慮した。
また、第7戦SUGO(9/22)の後にドイツで、最終戦もてぎ(11/10)の後に日本で、ドイツツーリングカー選手権(DTM)とのジョイントイベント(「交流戦」から呼称変更)を開催する予定である。
- DTMとのジョイントイベントについて
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スーパーGTとDTMがジョイントイベントをヨーロッパとアジアで行うための技術規則「CLASS 1(クラス・ワン)」が固まり、DTMの統括団体であるITRと合意した。パーツサプライヤーであるGTAとITRの知的財産権の保護についても規定している。また、この規定は2030年まで継続することとしており、これはレースが中長期の展望に基づいて開催されることを意味している。これによって、チームはこれまで単年度契約だったスポンサー契約を中長期で考えることができるようになると思っている。自動車・タイヤメーカーも同様に中長期での取り組みが可能になる。
2019年はクラス・ワン規定+αで、2020年からはクラス・ワン規定でジョイントイベントを行うことになる。ドイツ戦には15台のGT500マシンを送り込み、日本戦(富士か鈴鹿で開催)には最低12台のアウディ、BMWが来ることになる。将来的には、ヨーロッパ、アメリカ、アジアでそれぞれ2戦ずつ行うことを視野に入れて展開したい。現在、中国での開催の話も出ている。
- インバウンドの増加について
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現在も、タイ戦に関しては、タイの観光省、大使館などと官民一体で取り組んでいる。タイの人は、日本で観戦したいものとして、サッカー、バレーに次いでモータースポーツを挙げている。これはこれまでの我々の取り組みの成果だと感じている。今回、国土交通省の政務次官なども来場していただいている。2020年の東京オリンピックを視野に入れ、外国人の観客増を考えていきたい。
- eスポーツ(電気自動車レース)について
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将来的には、環境的な視点で当然考えていかなければならないものと認識はしており、今後の課題ととらえている。ただ、今すぐそちらの方向に進むというわけではない。音や匂いなど五感を生かしたレースが基本であると考えているので、その先にあるものだと思っている。
まとめ&Photo: Shigeru KITAMICHI
7月8日、全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦の決勝が、静岡県・富士スピードウェイで行われ、ポールポジションスタートの#3ニック・キャシディ(ORIENTALBIO KONDO SF14)が、#1石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO INGING SF14)の追撃を振り切って初優勝。チャンピオン争いでもリーダーの#16山本尚貴(TEAM MUGEN SF14)に1ポイント差に迫った。(観客:7月7日(土)10,600人/8日(日)20,800人)
心配された天候も落ち着き、曇り空ながらドライコンディションでスタートを迎えることになった決勝。勝敗を左右すると思われたタイヤ選択は、グリッドに並んだ19台中ソフト8台、ミディアム11台という構図となり、これが序盤のレース展開に大きく影響することになった。
スタートでは4番グリッドの#16山本が遅れ、代わって#19関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14)がジャンプアップ。1周目を終えた順位は、#3キャシディ、#1石浦、#19関口、#16山本、#36中嶋一貴(VANTELIN KOWA TOM'S SF14)、#6松下信治(DOCOMO DANDELION M6Y SF14)。この上位6台はすべてソフトタイヤユーザー。予選10位から順位を上げた#6松下はグリッド前方にいたミディアムタイヤユーザー4台を1周の間にすべて抜き去っていた。
それほど序盤のソフトとミディアムタイヤの差は大きく、ミディアムユーザーは序盤でのピットインを強いられ、残る40周以上をソフトタイヤで走らざるを得なくなってしまった。しかし、これが絶対的に不利かというとそうでもなく、悩んだ末にミディアムでのスタートを選択した#2国本雄資(JMS P.MU/CERUMO INGING SF14)とチームにとっては想定内。ピットイン後もトップから60秒遅れの9位をキープし続けた。
トップを快走する#3キャシディと1秒差で追う#1石浦の2台は、周回を重ねる度に後続を引き離していくが、2人を苦しめたのがピットインしたバックマーカーの存在。数台のマシンがトップ争いの前に立ちはだかり、進路を譲れといういうブルーフラッグが出ても、それなりのペースで2人の前を走り続けた。この集団による空力的な影響は目に見えないものの、トップ2台のマシンバランスを狂わせタイヤを必要以上に摩耗させることになった。
これによって、ペースの上がらなくなった#3キャシディは35周、#1石浦も40周終了時にピットイン。#1石浦はトップに立った時点で見えない敵を追うように攻め続けたが、思ったほどタイムを上げることはできず、おまけにピットアウトで「1速に入れたはずがニュートラルだった」と貴重な1秒をロス。#3キャシディを逆転することはできなかった。
上位陣のピットインがすべて終わった45周時の順位は、トップ#3キャシディ、3秒遅れで#1石浦、そして2台からは大きく遅れたものの、狙い通りのレース運びをした#2国本が3位、以下#20平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14)、#36中嶋となり、上位はすべてトヨタエンジンユーザーが占めることになった。
残り10周を切ってからレースはこう着状態となり、#3キャシディと#1石浦の差も3秒から詰まることなく、#3キャシディが自身にとってはスーパーフォーミュラで初、近藤レーシングにとって2008年以来10年振りとなる嬉しい嬉しい優勝のチェッカーを受けた。
チャンピオン争いは、大きくリードしていた#16山本が8位に沈み1点しか加えられず合計22点、ポールポジションポイントと合わせ11点を加え合計21点となった#3キャシディが僅か1点差に急接近することになった。これで3戦を残して、一騎打ちの様相を呈してきた山本とキャシディだが、この2人の争いを横目で睨みながら、石浦が虎視眈々と逆転を狙うという構図になってきた。
次戦は8月19日、真夏のツインリンクもてぎ。ディフェンディングチャンプ石浦が底力を発揮して、今季3人目のウィナーになるのか。山本対キャシディの争いがさらに熾烈を極めるのか。シリーズの行方を見極める重要な1戦になりそうだ。
Text:Shigeru KITAMICHI
Photo: Motorsports Forum
7月8日、全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦富士決勝日。午前9時から30分間行われたフリー走行では、ポールシッターの#3ニック・キャシディ(ORIENTALBIO KONDO SF14)がトップタイムをマーク。予選で下位グリッドに沈んだ#18小林可夢偉(KCMG Elyse SF14)が3番手と気を吐いた。
天候に翻弄された昨日の予選から一夜明け、サーキット上空は雲は多いものの路面はドライ。予報では1日曇りという状況だ。各チームは、決勝に向けドライ路面でのセッティングを進めながら走行を続ける。
特に富士スピードウェイでは初めての2スペックタイヤ制の導入となるため、レースの行方を左右するソフト、ミディアム両タイヤの状況を見極めようと、各ドライバーは積極的に周回を重ねる。
好調さを窺わせたのが、セルモ・インギングチームの2台、#1石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO INGING SF14)、#2国本雄資(JMS P.MU/CERUMO INGING SF14)ともに、走行開始から好タイムをマークし、最終的に5番手、6番手と好位置をキープ。決勝に向けて順調に仕上がっているようだ。
昨日予選Q2の混乱の中で不本意な14番グリッドとなった#18可夢偉も3番手タイム。決勝でどこまで追い上げるか楽しみな存在だ。
雨中の予選で見事なアタックを見せたポールシッターの#3キャシディは、終了10分前までは下位に沈んでいたものの、最後に大きくタイムを削ってトップで走行を終えた。安定した速さという点では、やや不安を残すフリー走行となった。
気になるのが、昨日の予選で雨に惑わされQ1敗退となってしまった#5野尻智紀(DOCOMO DANDELION M5S SF14)だ。現在、シリーズポイントでは、連勝中の#16山本尚貴(TEAM MUGEN SF14)、#3キャシディに次ぐ3位につけているものの、フロントローに並んだ2人に対し、このフリー走行でもブービーの18番手といいところなく終わってしまった。今回の結果次第ではシリーズ争いから脱落してしまうだけに踏ん張りどころだ。
期待が大きかった大物ルーキーの#15ダニエル・ティクトゥム(TEAM MUGEN SF14)は、決勝も最後尾スタートと今回はここまでまったく光るところが見えない。フリー走行も12番手。決勝での巻き返しに期待したいところだ。
走行終了間際に雨が降り出すなど、天候は未だ不安定だ。コンディションが気になる決勝は、午後2時15分スタート、55周で争われる。
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Motorsports Forum
- PP #3ニック・キャシディ(ORIENTALBIO KONDO SF14)
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「今シーズンはきちんと結果を残そう思って臨んでいるので、このポールポジションはすごく嬉しいです。今日一番難しかったのは、ドライでもウェットでもいけるセッティングを見出すことでした。予選中、チームは無線でセッティングをどう変更するか聞いてきましたが、僕は『何も変えないでくれ』と言いました。エンジニアは驚いていたようですが(笑)、僕はどんなコンディションでもいける自信がありました。最後のQ3は中嶋選手がポールポジションかと思いましたが、自分ができることを最大限やろうと思いました」
- 2位 #16山本尚貴(TEAM MUGEN SF14)
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「非常に難しいコンディションでした。Q3はまさかあんなに雨が降るとは思っていませんでした。すぐにレインタイヤに交換しましたが、2周アタックできたドライバーと1周しかできなかったドライバーで明暗が分かれた感じですね。こういう荒れた予選で2位を獲得でき、チームも自分自身も成長していることを実感できました。明日はこの流れをしっかり生かしたいと思います。」
- 3位 #1石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO INGING SF14)
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「判断が難しい予選でした。天候を予測するというより、天候の変化にいかに臨機応変に対応できるかが問われたように思います。その点で2台がQ3まで進めたのは、チームの力だと思います。Q3は中嶋選手が有利と思いましたが、ピットに入ったとき、1周しか計測できないとチームから言われたので、集中して走りました。1周しかアタックできなかったことを考えると、3位という結果には満足しています」
まとめ: Shigeru KITAMICHI
Photo: Yoshinori OHNISHI
7月7日、全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦の公式予選が、静岡県・富士スピードウェイで行われた。気まぐれな天候に翻弄されたセッションとなったが、目まぐるしく変わるコンディションのなかで安定した速さを見せた#3ニック・キャシディ(ORIENTALBIO KONDO SF14)が、ポールポジションを獲得。チャンピオン最右翼の#16山本尚貴(TEAM MUGEN SF14)、ディフェンディングチャンピオンの#1石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO INGING SF14)が続いた。
Q1
予報に反して予選開始前に雨がパラついたため、各チームはコンディションが悪化する前にマシンをコースに送り出す。いつもなら、終了間際にアタックが繰り広げられる予選だが、今回のQ1は様子が異なった。
Q1での主役は、#16山本と#19関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14)。両者がタイムを更新しながら、タイミングモニターのトップに名を連ねる。
予選時間の半分、10分が経過したところで、全車一旦ピットに戻ってニュータイヤに交換するが、ここで雨がやや強くなってくる。各チームのスタッフは空を見上げて祈るが雨は止まず、前半のアタックで順位が決まった。
ここで、前戦のポールシッター#5野尻智紀(DOCOMO DANDELION M5S SF14)、台風の目となることが期待されていた#15ダニエル・ティクトゥム(TEAM MUGEN SF14)を含む5台が涙を飲んだ。
Q2
気まぐれな天候のおかげで、Q2のタイヤ選択はドライタイヤ組とレインタイヤ組に分かれることになった。しかし、セッションが始まると雨は止み、コンディションは急速に回復。レイン組はドライタイヤへの交換を強いられることになった。
ここで、やや判断が遅れたのが、Q1で好調だった#19関口。開始3分を経過してからピットに滑り込んだため、最後の1周、ワンチャンスに賭けざるを得なくなった。
慌しいセッションでトップタイムをマークしたのは、#2国本雄資(JMS P.MU/CERUMO INGING SF14)。2位以下も#20平川 亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14)、#3ニック・キャシディ(ORIENTALBIO KONDO SF14)らの若手が台頭し、「あと1周あると思っていた」という#18小林可夢偉(KCMG Elyse SF14)を含む6台はここでノックアウトの憂き目をみることになった。
Q3
Q2で回復した天候が、僅か10分のインターバルの間に急変。セッション直前に空が見る見るうちに暗くなり、雨粒が落ちてきたかと思うと雨足がどんどん強くなっていった。
この状況のなか、ほとんどのマシンがスリックタイヤを選択していたが、この天候を読んでいたかのような#36中嶋一貴(VANTELIN KOWA TOM'S SF14)だけが唯一レインタイヤをチョイス。この時点では#37中嶋のポールポジションが濃厚と思われた。
他のマシンも諦めることなくレインタイヤに交換してアタック。#37中嶋は早々に1分38秒840をマークしてトップに立っていたが、ドライ路面でレインタイヤを痛めてしまったのか、その後はタイムアップならず。これをタイヤ交換は遅れたものの、雨のなか激走を見せた#1石浦が、1周のみのアタックながら僅かに逆転。
しかし、それも束の間、予選終了間際に、2周目のアタックに入っていた#3キャシディと#16山本が、次々にタイムを更新し、大混乱の予選にピリオドを打った。#3キャシディは、昨年の菅生戦に続き、自身2度目のポールポジション。
決勝は、明日午後2時15分から55周で行われる
Text:Shigeru KITAMICHI
Photo: Motorsports Forum
予選日、日本レースプロモーション(JRP)による恒例のサタデーミーティング(定例会見)が行われ、決勝の解説を務める脇阪寿一氏が思いを語った。
- 倉下明・JRP代表取締役社長
- 以前、ある番組に脇阪選手、本山選手がゲストとしてきたことがあり、若手に対する熱い思いを語っていました。それが印象的だったので、ぜひ脇阪さんにスーパーフォーミュラの解説をと思い、昨年からお願いをしていました。
- 脇阪寿一氏
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ここのところスーパーGT(SGT)に関わっていますが、SGTはエンターテイメントとしてウェイトハンデ制をとっています。一方、スーパーフォーミュラ(SF)は純粋に速さを追及しているカテゴリーで、アスリートであるドライバーとしては、SFが最高峰と感じています。
SFは若手の時期覇権争いの行方が見所で、自分としても非常に興味があります。解説では、ドライバーにフューチャーして、ドライバーがどんなことを考え、どんな立ち位置でレースに臨んでいるのか、そのあたりを視聴者の方に伝えたいと思っています。
取材で各ピットを回らせていただきましたが、自分が伝えたいことはドライバーにも喜んでもらえることだと感じました。例えば、平川選手が今シーズンはすべてQ3まで進むことを自分に課していることなどは、広く伝えることで観る側もドキドキを感じてもらえると思います。
また、山本選手は今年SGTではバトン選手と、SFではティクトゥム選手と組んでいますが、彼にとっては勝っても得はないものの、負けるとかなり損をすることになると思います。彼も言っていましたが、ティクトゥム選手は実はとてつもなく凄い選手で、そういうチームメイトと競り合う山本選手の立ち位置というのは、非常に面白いと思います。そんなことを伝えて、観る人が感情移入できるような解説をしたいと思います。
まとめ: Shigeru KITAMICHI
Photo: Yoshinori OHNISHI
関西以西が大雨に見舞われた週末。予選日の富士スピードウェイは小雨。コースは朝方まで降り続いた雨で、全周にわたって薄らと水が浮いている状況だ。
午前9時10分、1時間のフリー走行が始まる。各車レインタイヤを履き、水しぶきを上げながら慎重に周回を重ねる。ラップタイムは1分40秒前後と、去年のポールポジションタイム1分23秒には遠く及ばない。
チームルマンの2台、#7トム・ディルマン(UOMO SUNOCO SF14)と#8大嶋和也(UOMO SUNOCO SF14)は、午後の予選に向けレインタイヤを温存する作戦なのか、ピットで待機している。
20分を経過したあたりから、雨が強くなり、各車はピットに滑り込んで様子見となる。このコースが空いたタイミングで、走行を見合わせていた#7ディルマン、#8大嶋和也がコースイン。
ここまでのトップタイムは、#1石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO INGING SF14)が5周目にマークした1分39秒521。ルーキー#6松下信治(DOCOMO DANDELION M6Y SF14)が僅差で続き、この2人が1分39秒台。
40分を過ぎて、徐々にコースコンディションが回復し、#6松下が39秒506、#17塚越広大(REAL SF14)が39秒380、#5野尻智紀(DOCOMO DANDELION M5S SF14)が38秒614と、少しずつタイムを削り取りながらトップタイムを更新。
50分を過ぎると、ダンロップコーナーの進入はほんのり乾くなどコンディションがさらに回復。#6松下38秒598、#19関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14)37秒896、#5野尻37秒679、そして、最後に#4山下健太(ORIENTALBIO KONDO SF14)が37秒319のトップタイムをマークして、朝のフリー走行を締めくくった。連勝中の#16山本尚貴(TEAM MUGEN SF14)は、1分38秒372で12番手。
ただ、予選の行われる午後には天候の回復が見込まれている。フリー走行のセッティングを生かすことができる可能性は少なそうだ。
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Motorsports Forum
6月3日、国内で10年振りに開催された24時間レース「スーパーテック富士24時間レース」が静岡県・富士スピードウェイで行われ、粘りの走りを見せた#99Y's distraction GTNET GT-R(浜野/星野/藤波/安田/Zheng)が総合優勝を遂げた。
チェッカーまで残り3時間となってから、アクシデントが相次いだ。
残り3時間を切ってまもなく、ST-4クラス#58ウィンマックステインワコーズDC5☆KRPがオイル漏れを起こし、さらにそのオイルに引火して、火を引きずるような形でコカコーラコーナーのコースサイドに車を止めた。コース上のオイルに乗ってコースアウトする車両も出たため、処理のために赤旗が提示されレース中断となる。
再開後、残り2時間を切ったところで、総合10位で奮闘していた#51DIAMANGO Caymanが電気系トラブルでストップ。
さらに、トップを追っていた総合2位#83Phoenix Racing Asia R8がダンロップコーナーで#3ENDLESS GT-Rと接触。サスペンションを痛めてしまい、ピットで交換作業を行うことになってしまった。
これで#777D'station Porscheが2位に上がるが、その座も長くは続かず、残り1時間15分で突如エンジントラブルが発生しストップ。トップを追う立場のマシンにトラブルが相次ぎ、どうやら終盤になって勝利の女神は#99GT-Rに微笑んだようだ。
これで楽になった#99GT-Rはチェッカーに向け淡々と周回を重ね、新生なった富士24時間レースの記念すべきウィナーとなった。
最後の最後までドキドキ、ワクワクさせたのはST-4クラスの#55Sunoasis田中建築86。残り40分、トップを走る#884林テレンプ SHADE RACING 86が最後の給油でピットインし、逆転でトップに浮上。#55チームはドライバー交替の準備もしていたため、周囲は給油のためにピットインすると思っていたが、何と周囲を欺き、そのまま走り続けてチェッカーを受けてしまった。
白熱した各クラスの争いは、1台のみエントリーのST-1クラス#47D'station Porsche cupは安定した走りで総合7位フィニッシュ。ST-3クラスは#68埼玉トヨペットGreen Brave GR SPORTマークXが逃げ切って念願の初優勝。ST-TCRクラスはシビック勢の脱落もあり、#75m-1 CARFACTORY RS3 LMSが、ST-2クラスは#6新菱オート☆DIXCELエボⅩが独走で優勝。ST-5クラスは、#88村上モータースMAZDAロードスターが#37DXLワコーズNOPROデミオSKY-Dの追撃を振り切った。
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Keiichiro TAKESHITA
午前12時、レースもいよいよ残り3時間。天候に恵まれた24時間レースも締めくくりが近づいてきた。18~21時間の間で大きなアクシデントは起きていないが、マシンもピットクルーも疲労が積み重なっている。
残念だったのは、ST-2クラスの#59DAMD MOTUL ED WRX STIがマシントラブルに見舞われてしまったことだ。開始早々他車に突っ込まれ右側面を大きくヘコませたものの、メカニックの素早い作業でレースに復帰。クラス2位まで順位を回復していたものの、20時間17分経過時にマシントラブルでストップ。その後、修復したものの満身創痍となってしまった。
総合を争うST-Xクラスは、#99Y's distraction GTNET GT-Rがトップに立ち、徐々に2位以下を引き離している。レース折り返しではトップから5周のビハインドを背負っていたものの、底力を発揮し、2位#83Phoenix Racing Asia R8に2周、#777D'station Porscheに5周の差をつけている。
総合7位には、1台のみエントリーのST-1クラス#47D'station Porsche cupがコンスタントな走りで順位をキープしている。
総合8位、ST-3クラスのトップ争いは、#68埼玉トヨペットGreen Brave GR SPORTマークXと#62DENSO Le Beausset RC350の2台に絞られてきた。ディーラーチームとして奮闘する#68マークXは念願の優勝に向けてラストスパートをかけている。
総合10位は1台エントリーのST-Zクラス#51DIAMANGO Cayman。最高齢78歳の石原選手を擁するチームだ。
総合12位はST-TCRクラストップの#75m-1 CARFACTORY RS3 LMS。#97シビックの脱落により独走状態となっている。
総合16位は、ST-2クラストップの#6新菱オート☆DIXCELエボⅩ。こちらも独走態勢を続けている。
総合17位、混戦のST-4クラスは、#884林テレンプ SHADE RACING 86と#55Sunoasis田中建築86の競り合いが続いている。
総合32位、ST-5クラスは、#88村上モータースMAZDAロードスターを#37DXLワコーズNOPROデミオSKY-Dが1周遅れで追う展開が続いている。
Text:Shigeru KITAMICHI
午前9時、富士スピードウェイは快晴。霊峰富士が美しい姿を見せている。レース開始から18時間が経過して、トラブルを抱えているマシンはあるものの、ほとんどが走り続けている。
この時間に順位変動があったのはST-TCRクラス。15時間を経過して間もなく、トップを快走していた#97Modulo CIVIC TCRの左フロントタイヤが外れるというアクシデントが発生。修理をして再びコースに送り出すのに1時間以上を要し、大きくポジションを落としてしまった。
これで#75m-1 CARFACTORY RS3 LMSがトップに立ち、2位は#65L&JR Mars Audi RS3 LMSと、アウディのワンツー態勢が整ったが、それも長くは続かず、17時間半を経過したところで、#65アウディRS3が、300Rでクラッシュ。足回りにダメージを負って動けず、車両撤去のためにフルコースイエロー(FCY)となった。
このFCYは、義務となっているメンテナンスタイム(20時間経過までに8分×2回)を消化していないチームにとっては絶好のタイミングとなった。
総合を争うST-Xクラスでは、#99Y's distraction GTNET GT-Rがクラッシュで左フロント部を痛めるが、メンテナンスタイムを使って修復。2周をロスしたが、アウディ2台とGT-Rの三つ巴の戦いが続いている。
ST-3クラスは、#68埼玉トヨペットGreen Brave GR SPORTマークX、#62DENSO Le Beausset RC350、#38muta Racing ADVICS IS 350 TWSの3台による争いが継続中。
ST-2クラスは、#6新菱オート☆DIXCELエボⅩが独走態勢。#17DXLアラゴスタNOPROアクセラSKY-Dを6ラップ引き離している。
ST-5クラスは、#88村上モータースMAZDAロードスターを#37DXLワコーズNOPROデミオSKY-Dが1周遅れで追っている。
Text:Shigeru KITAMICHI
午前6時になって空はすっかり明るくなった。天候には恵まれたものの、夜明けを迎える頃にトラブルが相次いだ。
13時間を経過して間もなく、ST-4のトップを快走していた#86TOM'S SPIRIT 86に魔の手が伸びる。リアから白煙を上げてスローダウンすると、そのままピットへ。どうやらデフトラブルのようだ。メカニックの必死の作業で30分を要してコースに復帰するが、再び白煙を上げてコースサイドにストップ。その後再修理したものの、勝負の権利は完全に失ってしまった。
これでST-4クラスは、#884林テレンプ SHADE RACING 86と#55Sunoasis田中建築86の一騎打ちの様相を呈してきた。
14時間30分を経過した頃、今度は総合トップを走る#3ENDLESS GT-Rが左フロント部から白煙を上げて緊急ピットイン。大きくタイムロスしてしまい、トップから10周遅れの総合6位まで後退してしまった。
#3GT-Rの脱落によって、ST-Xクラスによる総合優勝争いは、#83Phoenix Racing Asia R8と#81J-Fly Racing R8、2台のアウディR8と#99Y's distraction GTNET GT-Rの争いになった。
他のクラスは大きな順位変動はなく、ST-TCRは、#97Modulo CIVIC TCRが#75m-1 CARFACTORY RS3 LMSを1周リード。ST-3クラスは、#68埼玉トヨペットGreen Brave GR SPORTマークXがトップを守り、#38muta Racing ADVICS IS 350 TWS、そして#62DENSO Le Beausset RC350が追っている。
ST-2クラスは、#6新菱オート☆DIXCELエボⅩが順調に独走中。ST-5クラスは、#88村上モータースMAZDAロードスターがトップをキープ、#69J'S RACING Moty's制動屋FITが続いている。
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Kazuhiro NOINE
時間の経過とともに夕闇が迫ってきた。各マシンはライトを点灯し、いよいよ24時間レースらしい雰囲気になってきた。
総合トップを争うST-Xクラスの2台のGT-Rは、4時間を経過してもその差は10秒余り。順調に周回を重ねるGT-Rに対し、総合3位を走行していた#777D'station Porscheは、3時間半を経過したところで他車と接触してスピン。エンジン始動に手間取りタイムロス。さらにピットに滑り込んでチェックを行うが、エンジン回りにトラブルが見つかったのか20分間作業が続き、6位まで後退してしまった。
ST-TCRクラスは、自力に勝る#98FLORAL CIVIC TCRがトップに浮上。これに、#10Racingline PERFORMANCE GOLF TCRが続き、速さはあるものの安定性に欠けるアウディ勢は徐々に後退している。
ST-3クラスは#68埼玉トヨペットGreen Brave GR SPORTマークXがハイペースでトップを堅持。これを本命#62DENSO Le Beausset RC350が追っている。#62RC350はピットストップ回数を少なくする作戦のようだ。この2台の争いは今後も目が離せない。
ST-4クラスは、本命#86TOM'S SPIRIT 86がトップを守っているが、2位には#13ENDLESS 86がジワジワと上がってきている。
ST-2クラスは、#6新菱オート☆DIXCELエボⅩがリードしているが、#6エボXを含めてこのクラスのラップタイムが2分00秒~02秒なのに対し、序盤のアクシデントで大きく遅れた#59DAMD MOTUL ED WRX STIが1分57~59秒のハイペースで追い上げている。トップとの差はまだ8周あるがこの追い上げには注目だ。
ST-5クラスは、#69J'S RACING Moty's制動屋FITが、トップをキープしているが、2位には女性ドライバーで固めた#50LOVE DRIVE RACINGロードスターが上がってきている。
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Keiichiro TAKESHITA
午後3時、ローリングスタートで24時間レースの幕が切って落とされた。
予想どおり#3ENDLESS GT-Rと#99Y's distraction GTNET GT-R、2台のGT-Rがランデブー走行で3位以下をジワジワと離していく。後方はほぼ予選順で周回を重ねていく。
27分経過時、1コーナーの進入で、総合3位を走っていたST-Xクラスの#82Phoenix Racing Asia R8が、ST-2クラスの#59DAMD MOTUL ED WRX STIに接触。このアクシデンで#82R8は足回りを痛めてコース上にストップ。早くもリタイアとなる。
一方、避けようのなかった突撃を食らった#59WRXは、右側面を大きくヘコませてピットイン。即座に修理にかかるが、ピットクルーは、パドックに停まっていたスタッフのノーマルWRXから右ドアを移植するという手術を施し、25分という短時間でコースに復帰させてしまった。
このアクシデントでレースはセーフティカー(SC)ランとなるが、42分経過時にレースが再開すると、SCランで間に入った下位クラスのマシンを利用して、#3GTRが#99GT-Rとの差を一気に開く。以後、両者は8秒の差を保ったままレースは進んでいく。
ST-TCRクラスは、#65L&JR Mars Audi RS3 LMSが大きくリード。2位に#75m-1 CARFACTORY RS3 LMSがつけ、アウディ勢がシビックを抑える形となっている。
ST-3クラスは#68埼玉トヨペットGreen Brave GR SPORTマークXが快調で、2位以下を引き離している。ST-4クラスは、本命#86TOM'S SPIRIT 86を#55Sunoasis田中建築86が追う展開となっている。
ST-5クラスは、#69J'S RACING Moty's制動屋FITが、#88村上モータースMAZDAロードスターとの差を少しずつ開きながら、トップを快走している
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Keiichiro TAKESHITA
「富士スーパーテック24時間レース」決勝日、午前10時10分から40分間のウォームアップ走行が行われ、各チーム、決勝に向けてのチェックを行った。
予選ではGTR勢の後塵を拝したアウディR8だが、ここでは#81J-Fly Racing R8が総合のベストタイム。上位3台をR8が占め、これに#777D'station Porscheが続いた。2台のGTRはポールシッター#3ENDLESS GT-Rが5番手、予選2位の#99Y's distraction GTNET GT-Rは出走しなかった。
ST-TCRクラスもアウディ勢が好調。クラスPPの#65L&JR Mars Audi RS3 LMSを筆頭に4台のRS3がシビック勢を抑えた。
熾烈な戦いが予想される注目のST-3、ST-4クラスは、スーパーフォーミュラ、スーパーGTドライバーを揃えた豪華な布陣で臨む#62DENSO Le Beausset RC350(ST-3クラス)と、スーパーGT、F3ドライバーの乗る#86TOM'S SPIRIT 86(ST-4クラス)が他を大きく引き離すタイムをマーク。この2台はトヨタワークスともいえる存在だ。
国内では10年ぶり、富士スピードウェイでは50年振りとなる24時間レースの決勝は、午後3時にスタートを迎える。
Text:Shigeru KITAMICHI
Photo: Keiichiro TAKESHITA
5月27日、全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦の決勝が、宮城県・スポーツランドSUGOで行われ、ピットインのタイミングで好判断を見せた#16山本尚貴(TEAM MUGEN SF14)が開幕戦鈴鹿に続く連勝。前戦の中止で全6戦となったシリーズで2勝とチャンピオンを大きく引き寄せた。2位は#3ニック・キャシディ(ORIENTALBIO KONDO SF14)、3位は#36中嶋一貴(VANTELIN KOWA TOM'S SF14)が入った。(観客:5月26日(土)7,700人/27日(日)16,500人)
例年の秋から初夏にスケジュール変更された菅生戦。天候に恵まれた新緑のサーキットは、風が涼しく爽やかだ。前戦のオートポリスが悪天候で中止となったため、実質2戦目となる今回。菅生では初となる2スペックタイヤ制の導入、マカオGP王者#15ダニエル・ティクトゥム(TEAM MUGEN SF14)の参戦、菅生に滅法強い#19関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14)の後方グリッドからの追い上げ、そして菅生に棲むといわれる“魔物”の出現など見所は満載だ。
ポールシッターの#5野尻智紀(DOCOMO DANDELION M55 SF14)をはじめ、上位陣はソフトタイヤを選択。スタートでは大きな波乱はなく#5野尻、#18小林可夢偉(KCMG Elyse SF14)、#20平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14)の順で1周目を終える。
最初に動いたのは予選11位の#3キャシディ。5周終了時にピットに滑り込み、タイヤをミディアムからソフトに交換。残る63周をソフトタイヤで燃料を節約しながら走り切るというギャンブルに出るが、結果的にこれが功を奏することになる。
16周目、今回のレースを左右することになるアクシデントが起きる。後方を走っていた#37ジェームス・ロシター(VANTELIN KOWA TOM'S SF14)と#50千代勝正(B-MAX Racing SF14)が、馬の背コーナーで絡んでコースアウト。この事故処理のセーフティカー(SC)ランの間にピットインするか否かが、レース結果に大きく影響することになった。
ここで即座に反応したのが、5位を走行していた#16山本。SCが入るか入らないかのタイミングでピットに滑り込む。この後、#36中嶋、#20平川、#5野尻などもピットインするが、「SCが入りそうになったらピットインさせる」と準備をしていた無限チームの判断は早かった。逆に、#18可夢偉、#2国本雄資(JMS P.MU/CERUMO INGING)、#6松下信治(DOCOMO DANDELION M6Y SF14)らの上位陣は、タイミングを見誤ってしまった。
これで実質トップに立った#16山本は、先頭を走る#18可夢偉との差が大きく開くことのないように攻め続け、前を走るマシンがピットインする度に順位を上げていった。#18可夢偉はハイペースを維持し、40秒近く要するピットインのタイムロスを稼ごうとしたが、ピットインする44周目まで#16山本に30秒のマージンを築くのがやっと。おまけに作業に手間取り、コースに復帰したときは11位まで順位を落としてしまった。
終盤、#16山本は安定したペースで2位#3キャシディとの差を保ちながら、マシンをゴールまで運び、今季無傷の2連勝。「まさか今日勝てるとは思わなかった」と言いつつも、チャンピオン争いを大きくリードすることになった。ギャンブルに成功した#3キャシディは燃料を気にしながらも、#36中嶋を抑えきって嬉しい2位フィニッシュ。
なお、注目の#15ティクトゥムは1周目に3つポジションを上げ6位で戻ってくるなど、光るところを見せたものの、13周目に#17塚越広大(REAL SF14)との接触で足回りを痛めてリタイア。次戦富士に期待したい。
また、ミディアムタイヤでスタートした#19関口は、終盤までピットインをせずに走り続けたが、今回菅生の魔物は#19関口に微笑まず、波乱は再び起きなかった。それでも、ソフトタイヤに交換した終盤、1分06秒300という他より1秒以上速い驚異のファステストラップを記録して存在をアピールした。
次戦の舞台は、7月8日夏の富士スピートウェイ。山本が連勝記録を伸ばすのか。誰かが山本の連勝にストップをかけるのか。高速バトルの行方に注目だ。
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Motorsports Forum
5月27日、全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦決勝日。スポーツランドSUGO上空はやや雲が多く涼しい天候となった。午前9時から30分間行われたフリー走行では、#19関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14)がトップタイムをマーク。予選上位陣も順調な仕上がりを見せた。
決勝日朝のフリー走行には、昨日のフリー走行でクラッシュし予選に出走できなかった#65伊沢拓也(TCS NAKAJIMA RACING SF14)を含む全19台が出走。各チームとドライバーは決勝のセッティングを確認すべく、精力的に周回を重ねた。今回もレースでは「2スペックタイヤ」と呼ばれるミディアムとソフト2種類のタイヤを使わなければならない。どちらを先に使うか、また交換のタイミングなど、開幕戦の鈴鹿でも各チームの作戦が分かれたところだ。このタイヤをいかに使うかが上位進出の大きな鍵になる。
開始12分過ぎ、#3ニック・キャシディ(ORIENTALBIO KONDO SF14)の左後輪が外れるというアクシデントが発生。#3キャシディはコース上にマシンを止め、赤旗提示により走行は一時中断となった。ここまでのトップタイムは昨日ペナルティで予選下位に沈んだ#19関口の1分07秒338。昨日の鬱憤を晴らすべく精力的に周回を重ねる。
#19関口に続いたのが、注目のマカオGP王者#15ダニエル・ティクトゥム(TEAM MUGEN SF14)。初参戦ながら順応性の高さを見せ、決勝では台風の目になることを予感させる。今回のレースは、この2人がどこまで順位を上げるかが大きな見どころになるだろう。
多くのドライバーが前半にソフトタイヤを履いていたため、再開後も大きな順位変動はなく走行は終了。#19関口、#15ティクトゥムに続いたのは、予選2位の#18小林可夢偉(KCMG Elyse SF14)、そして、後半にソフトタイヤを履いてタイムを縮めてきたポールシッターの#5野尻智紀(DOCOMO DANDELION M55 SF14)と、予選上位陣は順調な仕上がりを見せた。
予選出走ならなかった#65伊沢拓也(TCS NAKAJIMA RACING SF14)は8番手タイムと、マシン修復が問題ないことを確認でき一安心だ。
決勝は午後2時15分スタート。68周で争われる。
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Motorsports Forum
5月26日、全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦の公式予選が、宮城県のスポーツランドSUGOで行われ、#5野尻智紀(DOCOMO DANDELION M55 SF14)が、完璧なアタックでコースレコードを更新。自身3度目のポールポジションを獲得した。2位は#18小林可夢偉(KCMG Elyse SF14)、3位は第2戦のポールシッター#20平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14)と続いた。
日差しは強いものの、気温24度と過ごしやすい天候となった菅生。フリー走行の結果を見ても僅差の戦いになることが予想できるだけに、各ドライバーはいかにクリアラップを取るかに神経を集中させることになる。午後1時20分から行われたノックアウト方式の予選では、残念ながら朝のフリー走行でクラッシュをした#65伊沢拓也(TCS NAKAJIMA RACING SF14)は出走ならず。残る18台によるタイムアタックが繰り広げられた。
Q1
ここで好調さをアピールしたのは、#6松下信治(DOCOMO DANDELION M6Y SF14)。最初のアタックでトップタイム1分5秒840を叩き出すと、さらに5秒365までタイムを削る。最後は#2国本雄資(JMS P.MU/CERUMO INGING)にトップの座を譲ったものの、終始安定した速さを見せた。
逆に不運だったのが、#19関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14)。残り3分を切ったところで、#7トム・ディルマン(UOMO SUNOCO SF14)がコースアウトし走行が中断したが、この黄旗提示の際にベストタイムを出したとしてそのタイムは抹消。悠々クリアしていたはずのQ1で涙を飲む結果となった。
Q2
このセッションからソフトタイヤを使用できるが、#6松下はここでも速さを見せ、見事トップタイム。100分の4秒差で#1石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO INGING)、100分の6秒差で#2国本が続き、この3者はコースレコードを更新。上位4台をダンディアライアンとセルモ・チームが占めることになった。
午前中のインタビューで「必ずQ3に進む」と言っていた、初参戦のマカオGP王者#15ダニエル・ティクトゥム(TEAM MUGEN SF14)は惜しくも9位。それでも、初のマシン、初のコースでQ3進出の一歩手前まで上がってくる順応性は只者ではないことを窺わせた。
Q3
好調#6松下のポール奪取に注目が集まったが、その#6松下は誰よりも早くコースインし、じっくりとタイヤを温める作戦をとった。しかし、これが裏目に出たのか、Q2のタイムを上回ることができず1分5秒048と、#20平川がマークした1分4秒985に届かなかった。ここで並外れた集中力を見せたのが#5野尻。Q1・5位、Q2・4位とここまでは目立った速さを見せていなかったものの、Q2で#6松下が記録したレコードを上回る1分4秒694をマークし、見事ポールポジションを獲得。マシンを降りると「菅生はチャレンジングなサーキット。ソフトタイヤでアタックすると違った世界が見えるんです」と笑顔で語った。
途中のセッションタイムで野尻を上回り、最後の最後に大逆転を狙った#1石浦は、SPコーナーで勢い余って痛恨のハーフスピン。逆転ポールはならなかった。
決勝は、明日午後2時15分から68周で行われる
Text:Shigeru KITAMICHI
Photo: Motorsports Forum
予選日の午前、日本レースプロモーション(JRP)による恒例のサタデーミーティング(定例会見)が行われ、マカオGPのウィナーで今回初参戦のダニエル・ティクトゥム(#15TEAM MUGEN SF14)にスーパーフォーミュラ(SF)の印象などを聞いた。また、日本レースプロモーション(JRP)倉下明・代表取締役社長から来季以降のスケジュールなどについての説明があった。
- ダニエル・ティクトゥム
- 今回が、初来日です。もちろん初SF、初SUGOです。シュミレーターも経験せずに来たのでまったく未知の世界でした。今回の話は2か月前にいただきました。ドライビングコーチからもSFの素晴らしさを聞いていたので、とても楽しみにしていましたし、18歳の僕にこのようなチャンスを与えていただいたことを感謝しています。SFはダウンフォースがあって楽しいクルマです。昨日から走ってクルマ、サーキット、タイヤにも随分慣れてきました。フリー走行ではアタックラップにトラフィックに遭ってしまいましたが、予選では必ずQ3まで進みたいと思います。来季のことは未定ですが、どんな話が来ても応えられるように準備はしています。今回の来日で日本の人、文化が大変気に入りましたので、日本で走れたら嬉しいですね。
- 倉下明JRP社長
- 先日、スーパーGTの開催された鈴鹿でGTAの坂東代表と来季以降3年間のカレンダーについて話し合いをしました。2020年にはオリンピック・パラリンピックも控えているので、そのあたりも考慮し、3年間、バランス良く、安定して各サーキットで同じ時期に開催できるようにしたいと思っています。少なくとも今年5月の4週連続のような形は避けたいと思います。新車SF19については7月4~5日に富士スピードウェイでシェイクダウンします。走行は1台のみ、ホンダエンジン搭載車になる予定で、ドライバーについては調整中です。
まとめ: Shigeru KITAMICHI
Photo: Yoshinori OHNISHI
例年第6戦として9月に行われるSUGO戦だが、今年は第3戦として5月の開催となった。
新緑の美しいスポーツランドSUGOで午前9時から1時間の予定で行われたフリー走行は、2度のクラッシュで中断。各チームはやや消化不良まま予選を迎えることとなった。
昨日行われた専有走行でのトップタイムは#1石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO INGING)の1分7秒151。これが当面のターゲットタイムとなるかと思われたが、開始10分過ぎには、#64ナレイン・カーティケヤン(TCS NAKAJIMA RACING SF14)が、早くも1分6秒台に入れてくる。
これを皮切りに6秒台をマークするドライバーが相次ぐが、開始24分に#64カーティケヤンが最終コーナーでコースアウト。アウト側スポンジにフロントからクラッシュしてしまう。マシンのダメージは大きくはなかったが、ここで走行は一時中断。
再開後、前回のポールシッター#20平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14)が1分6秒030でトップタイムを更新。ここからソフトタイヤによる本格的なアタックが始まるかと思った矢先、今度は#65伊沢拓也(TCS NAKAJIMA RACING SF14)がS字の立ち上がりでコントロールを失いガードレールにクラッシュ。フロント部に大きなダメージを負ってしまう。大事には至らなかったが、伊沢も少し足を引きずりながらマシンから降りてくる。
残り8分で再開されてからは、ソフトタイヤによるアタックが行われ、最終的に#1石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO INGING)が1分05秒663までタイムを削り、これにチームメイトの#2国本雄資(JMS P.MU/CERUMO INGING)が続く形で走行は終了。
好調のセルモチームとは対照的に、中嶋レーシングは予選までの限られた時間をマシンの修復に費やすことになってしまった。
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Motorsports Forum
決勝日朝、スーパーGTを運営するGTアソシエイション(GTA)坂東正明代表による定例会見が行われた。
- マシンの性能調整(BOP)について
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開幕戦でNSXの速さが目立ったが、現時点ではイコールコンディションは保たれていると考えているので、レース結果によって変更することは考えていない。そもそもBOPは自動車メーカーの参加を促すという考えもあって設けているので、ミッドシップハンデを含め技術的な視点での性能調整は、3メーカーも加わった話し合いを経て決めている。変える場合はきちんと手順を踏む必要がある。GT300クラスは、GT3車両とJAF GT車両の違いに加え、チームの知恵の部分もあって速さに差が出ている。性能調整委員会には、パワーウェイトレシオを基準に、レース結果なども考慮したうえで決めてくれるようお願いしている。
- 鈴鹿10時間レースについて
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鈴鹿10時間はGT300のアジア統一戦という位置づけで考えているので、(ブランパン耐久シリーズを主催する)SROとともにマシンの参加について協力する方向で動いている。現状でスーパーGTからは11台+αの参加が見込まれているので、GTAはこれを支援するという立場である。ただ、タイヤがワンメイクでピレリを履くことになるので、各チーム、スポンサーとの関係もあり、そのあたりをどうクリアするのかが課題ではある。
- スーパーGTレースの今後(若手エンジニア育成)について
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レースは今回も集客は順調で有難いことだが、(今後もレースを継続していくためには)チームが会社として成り立つようGTAとしても支援していかなければならないと感じている。特に、若手エンジニアの育成は大きな課題である。その点ではケンジ(チーム・ルマンの山田健二エンジニア/4月22日逝去)を失ったのは大きい。若手が入りやすい環境づくりは急務であり、そのためにチームが会社として労働条件なども整えていく必要があると思う。モータースポーツの発展のため、そういう基盤づくりをしていこうと考えている。
まとめ&Photo: Shigeru KITAMICHI
全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦の決勝が、9月24日、快晴の宮城県・スポーツランドSUGOで行われ、スタートダッシュを決めた予選2位の#19関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14)が、朝のフリー走行でクラッシュしたハンデを乗り越え、今季2勝目を飾った。この結果#19関口はシリーズ4位に浮上。最終戦のチャンピオン争いに名乗りを上げた。(観客:9月23日(土)8,700人/24日(日)14,000人)
秋晴れのSUGO。サーキット上空には青空が広がり、日差しも朝からかなり強くなった。シリーズチャンピオンの行方を占う上で重要な1戦となるだけに、ポイント上位のドライバーはレース前のウォームアップから気合十分。グリッドにはいつも以上の緊張が漂っていた。
ところが、フロントローに並ぶ#19関口のマシンだけは、スタート直前になってフロントサスペンションのアーム交換を行っていた。朝のクラッシュ後に修復はしたものの、ウォームアップ走行後に再度チェックしたところ、不具合が発見されたのだ。しかし、そのドタバタにも動じない#19関口は、スタートを失敗したポールポジションの#3ニック・キャシディ(フジ・コーポレーションKONDO SF14)を横目に見事なスタートを見せる。
そこからの#19関口は、昨年のSUGOのレースを彷彿する走りで、2位#15ピエール・ガスリー(TEAM無限SF14)、3位#37中嶋一貴(VANTELIN KOWA TOM'S SF14)との差を開いていく。10周目には1秒、20周目には3秒、30周目には6秒と僅かずつではあるが、マージンは着実に築かれていった。
一方、不運に見舞われたのは、スタートを失敗した#3キャシディと予選3位の#36アンドレ・ロッテラー(VANTELIN KOWA TOM'S SF14)。#3キャシディは、スタート前に規定時間内に準備をしなかったとして、また、#36ロッテラーは10周目に早目のピットインを敢行したが、その際にピットロードの速度違反を犯したと判定され、両者ともにドライブスルーペナルティを課され、上位フィニッシュの権利を失ってしまった。
周回遅れが出始め#15ガスリーにやや差を詰められた42周目、トップを快走する#19関口が上位陣の中で最初にピットイン。給油のみを済ませて6位で復帰するが、この時、ガソリンがうまく入らず、#19関口はチームが残量を正確に把握できないなかで、残り周回を走ることになってしまう。残る上位陣は、レース終盤となった56周以降に相次いでピットに滑り込むが、大きな順位変動はなかった。
注目は「給油なしでは走り切れない」という定説を覆し、ノーピット作戦を取った#18小林可夢偉(KCMG Elyse SF14)、#7フェリックス・ローゼンクヴィスト(SUNOCO TEAM LEMANS SF14)、#16山本尚貴(TEAM無限SF14)の3台。終盤まで#18可夢偉は4位、#7ローゼンクヴィストは5位、#16山本は7位を走行していたが、#16山本は2周を残してガス欠ストップ。#18可夢偉と#7ローゼンクヴィストは最終ラップにペースを落とさざるを得なくなり、それぞれ順位を落としてチェッカーを受けた。
最終ラップ、「ガソリン残量が心配になって少しペースを落とさせた」(星野監督)という#19関口の背後に#3ガスリーが迫ったが、結局#19関口、#15ガスリー、#37中嶋の順でチェッカー。#19関口は今季2勝目を飾るとともに、SUGO戦は昨年に続く連勝を果たした。
この結果、シリーズポイントは、しぶとく走り切り6位でフィニッシュした#2石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING SF14)が33.5ポイントでリーダーの座をかろうじて守り、0.5ポイント差で#3ガスリー、以下、#7ローゼンクヴィスト28.5ポイント、#19関口25.0ポイントと続くことになった。なお、最終戦(鈴鹿)は、2レース制でボーナスポイントがそれぞれ3ポイント加算される。
Text:Shigeru KITAMICHI
Photo: Motorsports Forum
9月24日、全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦SUGO決勝日。熱戦の舞台となるスポーツランドSUGO上空は快晴。絶好のレース日和となった。決勝の行方を見極めるうえで重要な朝のフリー走行は、#18小林可夢偉(KCMG Elyse SF14)がトップタイムをマーク。予選上位陣は順当な仕上がりを見せた。
今回のレースはタイヤ交換、給油の義務はない。また、使用タイヤはミディアムの1種類のみ。このため、決勝ではギャンブル的な要素のある作戦は取り難くなる。加えて抜きづらいコース。一概には言えないが、フリー走行のタイム=決勝ペースと考えると、「予選上位+フリー走行上位」が勝つための条件になってくる。
開始10分を過ぎたところで、#19関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14)が、3コーナー先でクラッシュ。左フロントサスペンションを痛めてしまった。決勝までは時間があるのでマシンの修復は問題ないと思うが、フロントロースタートの関口にとって、決勝に向けセッティングを進められないのはかなり痛い。これで、走行は一時中断。
中断があったため、実質の走行時間は20分程度となってしまったが、最終的な順位は、#18小林可夢偉(KCMG Elyse SF14)(予選5位)、#2石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING SF14)(予選8位)、#65ナレイン・カーティケヤン(NAKAJIMA RACING SF14)(予選13位)、#20ヤン・マーデンボロー(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14)(予選6位)、#36アンドレ・ロッテラー(VANTELIN KOWA TOM'S SF14)(予選4位)、#3ニック・キャシディ(フジ・コーポレーションKONDO SF14)(予選PP)。
クラッシュしてしまった#19関口(予選2位)、10番手だった#15ピエール・ガスリー(TEAM無限SF14)(予選3位)以外の上位陣は、フリー走行でも好タイムをマークし、仕上がりが順調であることを窺わせた。
決勝は午後2時10分スタート。68周で争われる。
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Motorsports Forum
9月23日、全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦の公式予選が、宮城県のスポーツランドSUGOで行われ、#3ニック・キャシディ(フジ・コーポレーションKONDO SF14)が大方の予想を覆し、コースレコードで初のポールポジションを獲得。#19関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14)が僅差で2位、連勝中の#15ピエール・ガスリー(TEAM無限SF14)がこれに続いた。
空はどんより曇っているものの、朝方まで降り続いていた雨も上がり、コースコンディションはドライ。多くのドライバーが異口同音に「SUGOはオーバーテイクが難しい」と言い、他のサーキットより予選の比重が高いことを認めている。午後1時15分から行われたノックアウト方式の予選では、まずはポールポジションに挑戦する権利を得るため、Q3進出を目指して熾烈なタイムアタックが繰り広げられた。
Q1
気温21度、路面温度22度と、予想よりかなり涼しい天候となった予選。各ドライバーはタイヤをいかに発熱させグリップ力を得るかという点に気を使いながらアタックに入る。1回目のアタックが終わった段階で、1分06秒060をマークした#20ヤン・マーデンボロー(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF14)がトップ。これにチームメイトの#19関口が続き、インパルチームは安定した速さを見せた。
一旦ピット入りマシンの微調整とタイヤ交換をして、2回目のアタックに入っても、インパルチーム2台の速さは変わらず、両者ともにコンマ5秒ほどタイムを縮め、今度は#19関口、#20マーデンボローの順でQ1を終えた。3番手はこの週末好調の#36アンドレ・ロッテラー(VANTELIN KOWA TOM'S SF14)。なお、前回のポールシッター#40野尻智紀(DOCOMO DANDELION M40S SF14)は屈辱のQ1敗退。
Q2
Q1でインパルチームの後塵を拝した#36ロッテラーだが、Q2では前車との間隔を開けると見事なアタックを見せ、2番手#19関口に0.26秒差をつけてトップタイム。#37中嶋一貴(VANTELIN KOWA TOM'S SF14)も3番手に入りQ2はトムスチームが主役に躍り出た。#36ロッテラー同様、この週末好調の#18小林可夢偉(KCMG Elyse SF14)が4番手。Q1に進んだ8台のうちホンダエンジンは#15ピエール・ガスリー(TEAM無限SF14)の1台のみ。ディフェンディングチャンピオン#1国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING SF14)はここで姿を消した。
Q3
ここまでの流れでは、インパル対トムスの構図のなかで最後のポール争いが繰り広げられると誰もが予想していた……しかし、Q3の最初に1分05秒080のコースレコードに迫る好タイムをマークしたのは、Q1、Q2と少しずつセッティングを変えてきた、SUGO初体験の#15ガスリーだった。残る7人はこれをターゲットタイムとしてアタックするが、#36ロッテラーは1分05秒089と僅か1000分の9秒届かず、#19関口(1分05秒154)、#20マーデンボロー(1分05秒242)もガスリーを上回ることはできなかった。
#15ガスリーの初ポールが見えてきた(ガスリー自身もそう思っていた)と思った途端、伏兵が登場する。#3キャシディだ。Q1は8位、Q2は7位と振わなかった#3キャシディだが、自身も「完璧なラップだった」というように、最終コーナーをギリギリでクリアしてコントロールラインを通過したタイムはコースレコードを更新する1分04秒910。さらに、意地を見せた#19関口がアタックを継続して1分04秒988を叩き出し、この2人が決勝のフロントローに並ぶこととなった。
決勝は、明日24日午後2時10分から68周で行われる
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Motorsports Forum
予選日の午前、日本レースプロモーション(JRP)による恒例のサタデーミーティング(定例会見)が行われ、経験豊富なエンジニア、スティーブ・クラーク氏と、来季F1へのステップアップが噂されるピエール・ガスリー選手に、スーパーフォーミュラ(SF)の印象などを聞いた。
- スティーブ・クラーク(SUNOCO TEAM LEMANSエンジニア)
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海外にいた時からSFの存在はもちろん知っていました。ただ、実際に関わるまではGP2に近いカテゴリーと思っていましたが、かなり違っていましたね。ダウンフォース、エンジンパワー、タイヤのグリップなど、全体的にパフォーマンスが高いと感じました。GP2はあくまでもサポートレースですが、SFはレベルの高い素晴らしい選手権です。参加しているドライバーも経験豊かな日本人が多いですしね。日本食が好きで、飛行機の移動が苦にならないなら、海外の若手にもチャレンジングなこのカテゴリーに挑戦してほしいと思います。
- ピエール・ガスリー(#15TEAM無限SF14)
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今シーズンSFに参戦できたことは、僕にとって貴重な経験でした。豊富な経験を持つドライバーが多いSFは、シーズン当初は難しいと思うこともありましたが、レースを重ねるにつれて結果もついてきていますし、成長できていると感じています。ただ、日本に来る前は日本のことも、SFのこともほとんど知りませんでした。寿司が食べられるということくらいで(笑)。GP2からそのままF1に行ければいいですが、それは非常に難しいことです。SFで経験を積めることはドライバーにとって重要と思います。
まとめ: Shigeru KITAMICHI
Photo: Yoshinori OHNISHI
9月23日、全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦の舞台となるスポーツランドSUGOは、朝方まで降り続いていた雨の影響でコースは完全ウェット。しかし、午後の予選、明日の決勝は天候が回復することが確実視されているため、朝9時からのフリー走行では、各チームはあえてリスクを冒してアタックすることはせず、マシンチェックと予選に向けてのタイヤの皮むきに時間を費やした。
走行開始時は全車レインタイヤを履いてコースイン。周回を重ねるにつれてレコードラインは乾いていき、各チームはドライタイヤへの交換するタイミングを計っていたが、風がほとんどなく、日も照ることはなかったため、思ったよりコース状況は回復しなかった。レインタイヤでのベストは#40野尻智紀(DOCOMO DANDELION M40S SF14)の1分14秒194。
それでも、開始から40分が過ぎた頃から各車ピットイン。#10塚越広大(REAL SF14)がドライタイヤに換えてコースインすると、堰を切ったように各車ドライタイヤでコースに戻った。ただ、ほとんどのマシンがタイムアタックはせず、予選に向けニュータイヤの皮むき作業に終始した。
そんななか、#36アンドレ・ロッテラー(VANTELIN KOWA TOM'S SF14)、#3ニック・キャシディ(フジ・コーポレーションKONDO SF14)、#7フェリックス・ローゼンクヴィスト(SUNOCO TEAM LEMANS SF14)の3台は果敢にタイムを削り、最後に#3ローゼンクヴィストが1分9秒895をマークしてフリー走行を締めくくった。
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Motorsports Forum
9月3日、スーパー耐久シリーズ2017第5戦「富士SUPER TEC」の決勝が、静岡県・富士スピードウェイで行われ、ST-Xクラスはポールポジションからスタートした#8ARN Ferrari 488 GT3(永井宏明/佐々木孝太/銘苅翼)が、終始安定した走りで優勝を飾った。(観客:9/2予選日10,100人、9/3決勝日13,000人)
暑さは残るものの秋の気配を感じる天候となった富士スピードウェイ。シリーズ最長10時間の戦いは、各クラスで好バトルが繰り広げらる好レースとなった。心配された雨は最後まで降らず、セーフティカー導入も1回のみというクリーンなレースだった。
最速のST-Xクラスは、序盤はPPスタートの#8フェラーリと#89HubAuto Ferrari 488 GT3(モーリス・チェン/吉本大樹/坂本祐也/河野駿佑)が、終盤は#8フェラーリと#777D'station Porsche(星野敏/荒聖治/近藤翼)が、ピットインのタイミングで交互にレースをリードする展開となったが、最後は地力に勝る#8フェラーリが#777ポルシェの追撃を振り切って連勝を飾った。
来年6月には富士24時間レースが開催されることが発表されたが、鈴鹿でも8月にはGT3マシンによる世界一決定戦(10時間レース)が予定されている。活躍の場が多くなっているGT3マシンによるレースは、今後一層の盛り上がりが期待される。
ST-TCRクラスは、参加台数こそ少ないものの今回はゴルフ対シビック、そして豪華な助っ人ドライバーに注目が集まった。レースは、逃げる#10Racingline PERFORMANCE GOLF TCR(Philippe Devesa/密山祥吾/脇阪寿一)を2台のシビック、#97Modulo CIVIC TCR(伊藤真一/幸内秀憲/道上龍/中野信治)と#98Modulo CIVIC TCR(黒澤琢弥/石川京侍/加藤寛規/吉田広樹)が追う展開となった。速さでシビックを上回る#10ゴルフは、今回が参加2戦目と耐久性が不安視されたが、見事ノントラブルで10時間を走り切って初優勝。対するシビックはスプリント用マシンとのことで、こちらも耐久性に不安を抱えていたが、#97は6時間経過直前のクラス2位走行中にコースアウト、#98も7時間手前でトラブルにより大きく後退してしまうなど、今回はいいところなく終わった。
もうひとつの注目、ST-4クラスは、終盤、先行する#93SKR ENGINEERING ings S2000(太田侑弥/佐々木雅弘/柴田優作)を#86TOM'S SPIRIT 86(松井孝允/蒲生尚弥/坪井翔/井口卓人)が追い上げる展開となった。この攻防は残り1時間を切ってからも続いたが、何と残り8分を切ったところで、トップを快走していた#93S2000の右フロントタイヤが脱落。ほぼ手中に収めていた勝利を逃してしまった。これで#86ハチロクが労せずしてトップに立ち今季4勝目。最終戦を残してチャンピオンを決めた。2位には5位から着実に順位を上げてきた#13ENDLESS・ADVAN・86(小河諒/高橋翼/花里祐弥/村田信博)が入った。
終盤までもつれたST-3クラスは、6時間を過ぎてトップに立った#62DENSO Le Beausset RC350(嵯峨宏紀/中山雄一/山下健太/平木湧也)が、#68埼玉トヨペットGreenBraveマークX(服部尚貴/脇阪薫一/平沼貴之)と残り1時間を切ってからの攻防を制して今季2勝目。#62RC350とシリーズを争う#39ADVICS TRACY RC350 DPS(手塚祐弥/前嶋秀司/鈴木陽/松井猛敏)は、序盤首位を走ったものの、8時間過ぎに接触行為によるペナルティを課され3位。シリーズ争いが厳しくなった。
ST-5クラスは、序盤から#37DXLアラゴスタNOPROデミオSKY-D(関豊/梅田剛/井尻薫)がリード。3連勝中の#88村上モータースMAZDAロードスターND(村上博幸/脇谷猛/加藤正将/雨宮恵司)が追い上げる展開となった。速さでは#88ロードスターが有利と見られたが、2度にわたるペナルティで大きくタイムロス。これが最後まで響き#37デミオが嬉しい今季初優勝を飾った。最終的に2位まで挽回した#88ロードスターはチャンピオン決定。
ST-1,2クラスは、ポールスタートの#31Nissoku Porsche991 GT3 Cup(小川勝人/影山正美/富田竜一郎)、#59DAMD MOTUL ED WRX STI(大澤学/後藤比東至/谷口信輝)が序盤から後続を引き離して独走優勝。#59WRXは今季3勝目を挙げ、こちらも最終戦を待たずにチャンピオン決定となった。


Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Keiichiro TAKESHITA
Hiroyuki MINAMI
9月1日、2018年スーパー耐久シリーズの1戦として、富士スピードウェイで24時間レースを行うことが発表されたが、これに関し第5戦の予選終了後、質疑の時間が設けられた。
出席者:
富士スピードウェイ株式会社 代表取締役社長 原口英二郎氏
スーパー耐久機構(STO) 事務局長 桑山晴美氏
■開催の経緯は?
(原口)富士スピードウェイとしては、かつてから耐久レースを大切にしてきた。“耐久の富士”として、究極の24時間レースを開催したいという希望は持っていた。さまざまな条件が整わないと難しいが、これまで積み重ねてきたノウハウで可能と判断し開催に踏み切ることにした。ハード、ソフト、周辺対策など詳細はこれから詰めていく。
■開催時期を6月にしたのは?
(原口)欧州も同じだが日照時間が長い時期を選んだ。梅雨はあまり考慮していない。どの時期でも天候が崩れるときはあると思っている。
■どんなイベントにしたいか?
(原口)ルマンやニュルブリンクなどと同様に、地域と一体になったイベントとして、地域に理解される「文化」として開催したい。
(桑山)過去のものと同じではいけないと思っている。今の時代背景にあったレースを日本人の手で育てたい。アジアから世界に発信できるレースにしたい。
■宿泊など夜の場内開放は?
今もスーパーGTでは宿泊OKにしている。そういうノウハウはあるので、同様に場内に宿泊できるイベントにしようと思っている。お客さんが楽しめるコンテンツも用意したい。
■エントラントは?
(桑山)基本はシリーズの年間エントラントを対象としたい。ただ、クラスに関しては少し幅を持って考えていきたいと思っている。可能であれば皆にリスペクトされるドライバーなど色々な方に走っていただきたい。
(原口)台数的な制限もあるので、STOと相談をしながら検討していきたい。
Text & Photo:Shigeru KITAMICHI
9月2日、スーパー耐久シリーズ2017第5戦「富士SUPER TEC」の公式予選が、静岡県・富士スピードウェイで行われ、今シーズン全戦でポールポジション(PP)を奪っているST-Xクラスの#8ARN Ferrari 488 GT3(永井宏明/佐々木孝太/銘苅翼)が、熾烈な争いを制し5戦連続の総合PPを決めた。
朝方には秋の気配も漂っていたが、天候の回復とともに気温が上昇し、予選の始まる12時45分にはすっかり夏の陽気となった。決勝は10時間という長丁場。通常のレースより決勝グリッドの重要性は低いものの、シリーズタイトルを考えるとPPに与えられる1ポイントの重さは無視できない。A,Bドライバーの合算タイムで争われるため、富士を得意とするドライバーにオーダーを組み替えて予選に臨んだチームもあった。
ST-Xクラスは、結果だけ見れば#8フェラーリの5連続PPとなったが、Bドライバーの予選では#3ENDLESS・ADVAN・GTR(ユーク・タニグチ/山内英輝/元嶋佑弥)がトップタイムをマーク。#1スリーボンド日産自動車大学校GT-R(内田優大/藤井誠暢/平峰一貴)もPP争いに加わって最後まで順位変動があるなど、#8フェラーリも決して楽なPP奪取ではなかった。
盛り上がったのはハチロクが多くエントリーしているST-4クラス。唯一のS2000である#93SKR ENGINEERING ings S2000(太田侑弥/佐々木雅弘/柴田優作)のBドライバー佐々木が、終了間際に1分56秒764と他を圧倒するタイムを叩き出し、逆転で開幕戦以来の2度目のクラスPPを奪取。#86TOM'S SPIRIT 86(松井孝允/蒲生尚弥/坪井翔/井口卓人)の4連続PPを阻止した。
ST-TCRクラスは、#10Racingline PERFORMANCE GOLF TCR(Philippe Devesa/密山祥吾/脇阪寿一)のBドライバー密山が、Aドライバーでつけられた差を逆転。#45LIQUI MOLY RS3 LMS(田ヶ原章蔵/白坂卓也/竹田直人/新井敏弘)の連続PPをストップさせ、#10ゴルフに初クラスPPをもたらした。
ST-1クラスは、エントリーが2台と寂しいが、#31Nissoku Porsche991 GT3 Cup(小川勝人/影山正美/富田竜一郎)のBドライバー影山が、数年ぶりにコースレコードを更新。富士育ちの意地を見せた。
ST-2クラスは、ポイントリーダーの#59DAMD MOTUL ED WRX STI(大澤学/後藤比東至/谷口信輝)が、ST-3クラスは、前戦で今シーズン初優勝を飾った#39ADVICS TRACY RC350 DPS(手塚祐弥/前嶋秀司/鈴木陽/松井猛敏)が、ST-5クラスは、大本命#88村上モータースMAZDAロードスターND(村上博幸/脇谷猛/加藤正将/雨宮恵司)が、それぞれクラスPPを奪った。
シリーズ最長、10時間レースの決勝は、明日3日午前8時にスタートを迎える。
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Keiichiro TAKESHITA
Hiroyuki MINAMI
決勝日朝、恒例のGTアソシエイション坂東正明代表による定例会見が行われた。
■SUGO戦はセーフティカー(SC)導入が結果に影響したが改善策は。
SCはもともとGT500クラスのトップを抑えると、GT300クラスが周回として損をしてしまうのを防ぐために導入している。SUGO戦では2回目と3回目のSC導入の間隔が近かったために、GT500クラスにも有利、不利が出てしまった。世界的には、フルコースイエローやイエローゾーンで対応しているのは承知しているが、コースの長さなどによって導入が難しいサーキットもある。サーキットオフィシャルの事故処理作業も考えなければいけないので、ピットロードと同様に60km/hの速度制限を設けるなど、日本の事情に合ったフルコースイエローの導入を検討していく。
■来シーズンのスケジュールが発表された。ポイントは。
今年10月開催のタイ戦を7月にずらしたが、これはタイ開催のモトGPと、6月のルマン24時間との関連である。また、鈴鹿1000kmがシリーズから外れるので、鈴鹿を5月に入れ、5月だったオートポリス戦を10月開催にした。距離については、1000kmがなくなったので、8月の富士戦の距離を伸ばすことでほぼ決定している。
■2018年限りでメルセデスがDTM(ドイツツーリングカー選手権)からの撤退を発表したが、影響は。
ITR(DTMの運営組織)が最も驚いたのではないか。7月末に今後のDTMとスーパーGTの連携などについての話し合う会議があったが、その場でいきなり撤退の発表があったようだ。その後、ITRとはテレビ会議で話し合った。今後、アウディやBMWとも話し合いを持つことになるだろうが、こちらの基本的なスタンスはこれまでと変わらない。
マニュファクチャラー(自動車メーカー、製造者)主導だとこういうことが起きるが、スーパーGTではそのようなことは許されないと思っている。ここまで作り上げてきたものを1社の方針で崩すことは筋が通らないと感じているし、そうならないように調整していく。
まとめ&Photo: Shigeru KITAMICHI
8月5日、静岡県・富士スピードウェイで、2017オートバックス スーパーGT第5戦「FUJI GT 300km RACE」の公式練習が行われ、GT500クラスは、予選さながらのタイムアタックの末、#19WedsSport ADVAN LC500(関口雄飛/国本雄資組)が、GT300クラスは安定した速さを見せた#55ARTA BMW M6 GT3(高木真一/ショーン・ウォーキンショー組)がトップタイムをマークした。
上空に雲は多いものの時折日が差す天候のなか、朝8時50分から10時35分までスケジュールで練習走行が行われた。注目はやはりGT500クラス。開幕4連勝のレクサス勢は殆どのマシンが70kg以上のウエイトハンディを背負っており、そのなかでどこまで速さを維持できるのか。前回のSUGO戦で予選上位を占めながら不運なSC導入で勝ちを逃した感のあるNSX勢は是が非でも勝利をものにしたいところ。また、23号車と46号車がコンスタントな成績を残しているGT-R勢も、ここでポイントを伸ばしてレクサスの牙城を崩したいところだ。
それぞれの思惑が交錯するなか始まった練習走行。開始から好調さを窺わせたのが、#23MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)と#12カルソニックIMPUL GT-R(安田裕信/ヤン・マーデンボロー組)、2台のGT-R。走行開始後まもなく#23MOTUL GT-Rがマークした1分30秒740は終盤まで破られることはなかった。この2台に割って入ったのがレクサス勢で唯一ウェイトハンディが18kgと少ない#19WedsSportレクサスだった。
残り10分、GT500の専有時間帯に入ると、#19WedsSportレクサスが1分30秒190をマークしてトップに立つが、GT-R勢も#12カルソニックGT-R、#24フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R(佐々木大樹/J・P・デ・オリベイラ組)、#46S Road CRAFTSPORTS GT-R(本山哲/千代勝正組)の3台が相次いで大きくタイムアップ。上位5台中3台をGT-Rが占めるという日産陣営にとって、午後の予選に期待を繋ぐ願ってもない状況になった。
やはり富士ではウェイトハンディが効く。今回レクサスは厳しい……誰もがそう思った残り1分。まさに走行が終わろうとしたその時だった。何とウェイト74kg、72kgを積む#37KeePer TOM'S LC500(平川亮/ニック・キャシディ組)と#36au TOM'S LC500(中嶋一貴/ジェームス・ロシター組)が、#19WedsSportレクサスに次ぐ2番手、3番手のタイムを叩き出し、終わってみればレクサスが1~3位を独占。予選さながらのアタックに日産、ホンダ陣営はしてやられた格好になった。
GT300クラスは、直線の長い富士ではやはりFIA GT3マシンが速く、#55ARTA BMW M6 GT3(高木真一/ショーン・ウォーキンショー組)、#9GULF NAC PORSCHE 911(ジョノ・レスター/峰尾恭輔組)が走行開始からトップを競い続けた。これに続いたのが何と70kgのウェイトを積む#4グッドスマイル初音ミクAMG(谷口信輝/片岡龍也組)。開幕戦を制した#4グッドスマイルAMGは、ウェイトを増やしながらもコンスタントに入賞を重ねている。
JAF-GTマシンの最上位は、7番手の#30TOYOTA PRIUS apr GT(永井宏明/佐々木孝太組)。チームメイトの#31TOYOTA PRIUS apr GT(嵯峨宏紀/久保凜太郎組)も9番手となった。今シーズンは目立った成績を残していないため、ウェイトはそれぞれ0kg、12kg。今回はチャンスがありそうだ。同様に10番手の#2シンティアム・アップル・ロータス(高橋一穂/加藤寛規組)もウェイトは0kg。SUGO戦のクラッシュを修復し、新たに装着した空力パーツも効果を発揮しているようだ。
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Keiichiro TAKESHITA
7月22日、宮城県・スポーツランドSUGOで、2017オートバックス スーパーGT第3戦「SUGO GT 300km RACE」の公式練習が行われ、GT500クラスは#6WAKO'S 4CR LC500(大嶋和也/アンドレ・カルダレッリ組)が、GT300クラスは#60SYNTIUM LMcorsa RC F GT3(飯田章/吉本大樹組)がそれぞれトップタイムをマークした。
朝9時から行われた練習走行は、上空を雲に覆われた蒸し暑い天候のなか始まった。
開幕から4連勝を目論むレクサス勢が中心となると思われたが、開始早々開幕戦を制した#37KeePer TOM'S LC500(平川亮/ニック・キャシディ組)がコースアウト。ダメージは無かったがグラベルの砂利を巻き込み、処理のために貴重な時間を費やすことになってしまった。
好調な滑り出しを見せたのがGT-R勢の#24フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R(佐々木大樹/J・P・デ・オリベイラ組)。序盤トップタイムとなる1分13秒510をマークすると、その後も精力的にセッティングを進め、最終的に3番手となる1分12秒505までタイムを削ってきた。
NSX勢もレクサスに一矢報いようと気を吐き#8ARTA NSX-GT(野尻智紀/小林崇志組)が1分12秒489で2番手タイムをマーク。#17KEIHIN NSX-GT(塚越広大/小暮卓史組)が4番手、#16MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀/中嶋大祐)が7番手と、各チームが安定した速さを見せた。
意外に苦戦した感のあるレクサスだが、ここまでの好成績で各マシンはかなりのウェイトを積んでおり、苦しい走りを強いられている。#6WAKO'S 4CR LC500(大嶋和也/アンドレ・カルダレッリ組)がトップとはなったものの、#36au TOM'S LC500(中嶋一貴/ジェームス・ロシター組)が5番手といまひとつ速さを示せず、#37も終盤トラブルでストップするなど、一抹の不安を残した。
GT300クラスは、#60RCFが開始45分あたりで最終的なトップタイムとなる1分19秒670をマーク。好調ぶりを窺わせた。以下、#3B-MAX NDDP GT-R(星野一樹/高星明誠組)、#25VivaC 86 MC(松井孝允/山下健太組)が続き、海外GT3マシンを抑えて、国産マシンが健闘した。
なお、午後から天候が崩れるとの予報も出ており、午後2時10分から始まる予選のコンディションが気になるところだ。
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Katsuhiko KOBAYASHI