TCRジャパンサンデーシリーズ第5戦は16日、ツインリンクもてぎで公式予選を行い、大蔵峰樹(M-PROTOTYPING Team STILE CORSE)がポールポジションを獲得した。
本来サンデーシリーズの公式予選はそのシリーズ名称の通り、日曜日に行われるのが通例だが、今回は本日午前8時40分より15分間で行われた。
ここではまずは加藤正将(Audi Team Mars)が2分1秒399でトップに立つ。しかしここでも大蔵峰樹(M-PROTOTYPING Team STILE CORSE)が速い。1秒010をたたきだしトップに立った。
この後、大蔵を上回るドライバーは現れず、大蔵が土日シリーズでダブルポールを決めた。
2位には加藤が続き、終了直前に3位に浮上したMototino(55MOTO RACING)が入った。
4位にはヒロボン(バースレーシングプロジェクト【BRP】)が、5位には塩谷烈州(全薬工業 with TEAM G/MOTION')が、終了直前には猪爪杏奈(DOME RACING)が6位に滑り込んできた。
決勝は明日午前10時5分より20分間+1周で行われる。
Text: Yoshinori OHNISHI
Photo: Motorsports Forum
TCRジャパンサタデーシリーズ第5戦は16日、ツインリンクもてぎで公式予選を行い、大蔵峰樹(M-PROTOTYPING Team STILE CORSE)がポールポジションを獲得した。
公式予選は午前8時15分より15分間で行われた。上空には雲が広がり肌寒い。
開始と同時に全車一斉にコースイン。1~2周を回って、加藤正将(Audi Team Mars)、大蔵峰樹(M-PROTOTYPING Team STILE CORSE)、佐藤潤(Adenau IDI GOLF TCR)、大山正芳(ダイワN通商アキランドCIVIC)はいったんピットに戻ってきた。
この間、初出場の猪爪杏奈(DOME RACING)が2分4秒477でまずはトップに立つ。その後、Mototino(55MOTO RACING)が3秒868でトップに立つも、猪爪が2秒333でトップを奪い返した。
さらにヒロボン(バースレーシングプロジェクト【BRP】)が2分1秒611でトップに立つ。 加藤が2位に続き、3位には昨年大病を患い、復帰したものの体調が万全でない塩谷烈州(全薬工業 with TEAM G/MOTION')が3位に浮上してきた。猪爪は4位に落ちた。
ところがここで、大蔵が2位を大きく離す、2分0秒978でトップに浮上。2位ヒロボン、3位加藤、塩谷4位、猪爪が5位に続く。
終了直前には、塩谷が2分1秒689で2位に食い込む健闘をみせた。
結局、ポールポジションは大蔵、2位には塩谷、3位にはヒロボン、4位には加藤、5位には猪爪、6位には佐藤が入った。
決勝は本日午前11時55分より20分間+1周で行われる。
Text: Yoshinori OHNISHI
Photo: Motorsports Forum
全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦 -RIJ- (2021/10/16) Qualifying Weather:Cloudy Course:Dry
2021 TCR JAPAN SUNDAY Series Round 5 ツインリンクもてぎ 4.801379km
Pos | № | Driver | Maker Model Team | Time | Behind | Gap | km/h |
1 | 73 | 大蔵 峰樹 | Alfa Romeo Giulietta Veloce TCR M-PROTOTYPING Team STILE CORSE | 2'01.010 | - | - | 142.839 |
2 | 65 | 加藤 正将 | Audi RS3 LMS Audi Team Mars | 2'01.399 | 0.389 | 0.389 | 142.381 |
3 | 55 | Mototino | Honda CIVIC TCR 55MOTO RACING | 2'01.577 | 0.567 | 0.178 | 142.173 |
4 | 19 | ヒロボン | CUPRA TCR バースレーシングプロジェクト【BRP】 | 2'01.713 | 0.703 | 0.136 | 142.014 |
5 | 62 | 塩谷 烈州 | Honda CIVIC TCR 全薬工業 with TEAM G/MOTION' | 2'01.720 | 0.710 | 0.007 | 142.006 |
6 | 98 | 猪爪 杏奈 | Honda CIVIC TCR DOME RACING | 2'01.972 | 0.962 | 0.252 | 141.713 |
7 | 10 | 佐藤 潤 | Volkswagen Golf GTI TCR Adenau IDI GOLF TCR | 2'02.203 | 1.193 | 0.231 | 141.445 |
8 | 71 | 大山 正芳 | Honda CIVIC TCR ダイワN通商アキランドCIVIC | 2'02.268 | 1.258 | 0.065 | 141.369 |
9 | 17 | 鈴木 建自 | Audi RS3 LMS バースレーシングプロジェクト【BRP】 | 2'02.479 | 1.469 | 0.211 | 141.126 |
10 | 7 | 牧野 淳 | Audi RS3 LMS 麻布ワコーズEDニルズNGK | 2'03.537 | 2.527 | 1.058 | 139.917 |
---- 以上基準タイム(110% - 2'13.111)予選通過 ---- |
全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦 -RIJ- (2021/10/15) Qualifying Weather:Cloudy Course:Dry
2021 TCR JAPAN SATURDAY Series Round 5 ツインリンクもてぎ 4.801379km
Pos | № | Driver | Maker Model Team | Time | Behind | Gap | km/h |
1 | 73 | 大蔵 峰樹 | Alfa Romeo Giulietta Veloce TCR M-PROTOTYPING Team STILE CORSE | 2'00.978 | - | - | 142.877 |
2 | 62 | 塩谷 烈州 | Honda CIVIC TCR 全薬工業 with TEAM G/MOTION' | 2'01.639 | 0.661 | 0.661 | 142.101 |
3 | 19 | ヒロボン | CUPRA TCR バースレーシングプロジェクト【BRP】 | 2'01.661 | 0.683 | 0.022 | 142.075 |
4 | 65 | 加藤 正将 | Audi RS3 LMS Audi Team Mars | 2'01.841 | 0.863 | 0.180 | 141.865 |
5 | 98 | 猪爪 杏奈 | Honda CIVIC TCR DOME RACING | 2'01.896 | 0.918 | 0.055 | 141.801 |
6 | 10 | 佐藤 潤 | Volkswagen Golf GTI TCR Adenau IDI GOLF TCR | 2'02.621 | 1.643 | 0.725 | 140.963 |
7 | 55 | Mototino | Honda CIVIC TCR 55MOTO RACING | 2'02.930 | 1.952 | 0.309 | 140.608 |
8 | 71 | 大山 正芳 | Honda CIVIC TCR ダイワN通商アキランドCIVIC | 2'03.095 | 2.117 | 0.165 | 140.420 |
9 | 17 | 鈴木 建自 | Audi RS3 LMS バースレーシングプロジェクト【BRP】 | 2'03.436 | 2.458 | 0.341 | 140.032 |
10 | 7 | 牧野 淳 | Audi RS3 LMS 麻布ワコーズEDニルズNGK | 2'04.127 | 3.149 | 0.691 | 139.252 |
---- 以上基準タイム(110% - 2'13.075)予選通過 ---- |
全日本スーパーフォーミュラ選手権を運営する株式会社日本レースプロモーション(JRP)は15日、午後3時30分より、第6戦の行われているツインリンクもてぎで、恒例の「金曜会見」を行った。
「金曜会見」は毎年、チャンピオンの可能性のあるドライバーが最終戦に出席して行っているが、今シーズンは、このもてぎでチャンピオンの決まる可能性のある野尻智紀(TEAM MUGEN)が出席して、最終戦前の第6戦で行われた。
--これまでの圧倒的に強かったレースを振り返って
「こういう会見に足をはこべて光栄です。まだまだやらないといけないこともありますが、いままで積み重ねてきたのがあり、手応えを感じています。開幕戦から結果も残っているし、チームとともにやってきたことが、いい方向に出続けている。こんなにうまくいくことがあるのか、こんなに強いチームがあるのかと思える状態で望めています」
--ポイントは意識しているか
「当然自分の人生にかかわることなので把握はしています。気候の変わったこの第6戦で前回以上のパフォーマンスを出すことに注力しています」
--メンタルが変わった
「経験を積んで大人になりました。まわりの人たちのがんばりにいい影響が出ていますし、チームがもてぎに来るまで、細かいところまでしっかりやってきています。同じチームの仲間が、感動を覚えるような取り組みをしていますし、奮い立たされます。ぼくだけが変わったわけではなく、すべてがうまくいっています。ぼくがチームに与えるのもあるし、チームがぼくにもたらしてくれるのもかなり大きいです」
--天候が不安定だが
「コンディションが分からないので、想定して持って来ていますが、路面温度が冷えてタイヤが発動するのか、ダウンフォースが増えてグリップするのか、どっちにころんでも策はあるので、不安はないです。いつもどおり細かいところまでやるので、今週もパフォーマンスを発揮できると思います」
--これまでと今年、大きく違うところは
「ぼくは、たくさん失敗をしている側のドライバーなので、普段、油断してつまずいたりが多いです。そういったことがないように過去のレースを振り返って常に完璧にいられるのはどうしたらいいか考えてきます。車に対しての考え方や知識もここ1~2年で伸びました」
--ライバルは
「誰かを相手に戦うというよりは、自分たちのパフォーマンスに注力すれば先は見えてくると思うので、そこだけを考えたいです。ただ、並ばれても引く気はありません。ライバルは何が何でも落とせないし、ぼくは大きくリードをしているので、逆に引かないということでプレッシャーをかければ、向こうにリスクがかかってきます。この状況を自分たちのリスクにしないことですね」
--無限ファンのみさなんに対して
「いままでドライバーとしては情けない走りをしてきたほうが多かったです。5年も6年も前、フォーミュラ・チャレンジ・ジャパンとかF3とか過去振り返ると、自分がここまで来れると思っていませんでした。弱気になったこともありましたが、たくさんの人が支えてくれたので、あと一歩を着実に踏んで、今シーズンのタイトルを、このもてぎでつかみに行きたいと思います。変わらず、応援をいただければと思います」
Text & Photo: Yoshinori OHNISHI
今年スーパーFJもてぎ・菅生シリーズを制した里見乃亜代表率いる「RiNoAレーシングプロジェクト」では、来シーズンの参戦に向けて、新人ドライバーを10月24日開催のスーパーFJ筑波シリーズ戦に参戦させることを発表した。
ドライバーは内田涼風(ウチダ スズカゼ)選手で、2017年全日本カート選手権FP-Jrクラスで第5戦茂木大会優勝(年間ランキング11位)、2020年茂木カートレースsenior MAXシリーズランキング3位などのキャリアを有する。
今年のもてぎ・菅生シリーズで他を圧する強さを見せた同チームが発掘した新たなタレントの才能に注目が集まる。
以下、プレスリリース
2021年度よりRiNoA Racing projectの練習生でもある内田涼風を筑波シリーズ第6戦にスポット参戦致します。
今シーズンから本格的にフォーミュラにステップアップをし、筑波サーキットで練習を重ねて来ました。参戦意義としては早い段階からフォーミュラレースに慣れる事をメインとしますが、出場するからには優勝を目指して戦います。
2021年茂木・菅生シリーズのチャンピオンチームとして新たな育成プログラムで参戦して参りますので皆様のご支援・ご声援宜しくお願い致します。
参戦概要&コメント
- 内田涼風
-
「RiNoA racing project から筑波スーパーFJシリーズ第6戦にスポット参戦致します。フォーミュラデビューレースとなります。優勝を目指し、積極的に攻めていこうと思いますので、応援宜しくお願い致します」
- 里見乃亜
-
「今シーズンより新たな育成プログラムとして練習生の内田をスポット参戦させる事を決めました。早い段階からレースに慣れさせ来年度の開幕戦に万全の体制で戦えるアドバンテージを得る事がメインでもありますが、出場するからには攻めの姿勢で優勝を目指していきます。新たなるステップアップドライバーの応援宜しくお願い致します」
参戦概要
参戦クラス | S-FJ 筑波シリーズ第6戦 |
エントラント名 | RiNoA Racing project |
チーム代表 | 里見 乃亜 |
車両名称 | RiNoA NRS ED |
カーナンバー | 39 |
車両メンテナンス | NRS |
使用オイル | Moty’s |
ドライバー | 内田 涼風 |
RiNoA Racing project
10月10日(日)にスポーツランド菅生で開催された2021年もてぎ・菅生スーパーFJ選手権シリーズ選手権最終第6戦に、学生によるチームが参戦した。
新潟市にある自動車関連の専門学校である「新潟国際自動車大学校」のモータースポーツ科は、自動車整備に加えてカートやツーリングカー、入門フォーミュラでのドライビングやメンテンンスの授業を行っており、後期授業の一環として、生徒によるスーパーFJレースへの出場を今回行った。
レースチームは、生徒のみで構成され、教師は現場での直接サポートは行わず、学生たちがメカニック、ドライバー、チームの運営までを行うとの事。
これまで校内のコースや近所のミニサーキットなどで実習を行いドライビングやメンテナンスの習熟を図ってきたという。
今回のエントリーは2台。34号車と38号車、マシンは同じMYSTのKKSである。レース前日の練習走行の前にチームを代表してメカニックの2年生、酒井君に話を聞いた。
--全員学生によるチームだと聞いたが?
酒井「チームはメカニックもドライバーも全て生徒で構成されていて、先生は基本現地には来なくて、何かあったら連絡を取って指示を仰ぎます。あとは隣のピットの『アルビレックスレーシングチーム』の方がサポートをしてくれます」
--昨日までの練習走行での感触は?
「ドライバーがクルマもコースも初めてなので、慣れの問題もあって、1分35秒とか34秒というタイムで走っています。今日の午後の走行はこの天気(雨)なのでタイムは期待できませんので、晴れてくれればいいと思います。ウエット路面の経験はないです。このまま雨ならウエットでの走行をクルマもドライバーも初めて経験することになります。前日までの練習では、34号車は調子がよいが、38号車は挙動が掴みづらいようです」
--ドライバーは交代で参戦?
「ひとり1台ずつ割り当てています(34号車・磐上選手、38号車・小林選手)。上期にクルマを学んで、あとは学校の近くのミニサーキットで走らせてシフトなどを練習し、後期にレースを実践します。レースへの参加は今回と11月の富士スピードウェイの大会を予定していて、ドライバーやメカニックはどちらも同じ体制になります」
--マシンセッティングはどうしている?
「学校にいる間に先生に指導を受けてセットアップして持ち込んでいるので、現地に来てからセッティングの変更は基本行わない。慣れる方が先決という感じです」
午後2時20分から開始された練習走行は残念ながら雨となり、レインコンデションの習熟を行うこととなった。しかしながら早々に34号車の磐上選手がスピンしてしまい赤旗の原因に。38号車の小林選手は順調に周回を重ねるがその後も他のマシンのコースアウトで赤旗となり、7周程度しか走ることはできなかった。これもまたレースである。
回収されて来た34号車はフロントウイングがかなり破損しており、チームはさっそく修理に取りかかる。ドライバーの磐上選手によるとコースアウトから復帰する際に縁石に当ててしまって破損したとのこと。
フロントウイング本体は損傷が大きくてそっくり交換。翼端のプレートは無事なのでそのまま利用するとの事。また、グラベルに出てしまったマシンは砂利を抱え込んでいるのでその清掃も必要になる。フロントウイングの修理を行う者と清掃やその他の箇所のメンテナンスを行う者に手分けしての作業は。筆者がサーキットを後にした5時半過ぎになってもまだ続けられていた。
■レース当日
・予選
レース当日は酒井君が期待していた好天気。朝9時に筆者がサーキットに来た時にには、34号車はきれいに修復され、38号車共々カウルを磨かれ準備万端になっていた。
10時35分に15分間の予選開始。19台のマシンが出場する。路面はところどころウエットパッチがあるが、レコードラインはほぼ乾いておりスリックタイヤで行けるコンデション。34号車、38号車もスリックタイヤでコースイン。
ウオームアップを終えて各車徐々にタイムを上げ始める。5分経過時点でトップは早くも1分31秒台。34号車38号車はまだ40秒が切れないが、そこから次第にタイムを上げて行く。順位も最下位を脱し、16位前後に上がってきている。
その後も2台は順調に周回を重ねて、セッション終盤に38号車・小林選手が1分33秒809で16位、34号車・磐上選手が1分33秒817で17位のタイムをマークした。その差僅かに0.008秒。マシンの性能とドライバーの技量が拮抗している事を証明した。
ドライバーのコメント
- 34号車・磐上選手 17位
-
「初めての予選だったので、後ろから速いマシンがバンバン来るかなと思って、速い人が来たら後ろから追いついて行こうと思っていたのですが、中々捕まえられなかった。あと前でスピンしているクルマがいたりで、クリアラップが全然取れなかった。その中でも(きちんと)走れたのでよかったです」
- 38号車・小林選手 16位
-
「32秒台を目標に走っていたのですが・・。1本目の走行にしてはいい感じで走れたので、自分としては満足しています。初めてのレースなのでクルマはいじらず、自分がクルマに合わせる方向で走ります」
・決勝
12周で行われる決勝は午後3時35分開始予定。本日の最終レースで5時間近いインターバルがあるが、メカニックはマシンの整備に余念がなく、ドライバーは予選での走りを見直すなど時間はあっという間に過ぎて行く。
予定より5分遅れて3時40分にコースイン。他のマシンに混じって34号車、38号車もグリッドに向かう。
ダミーグリッドに着いたマシンをメカニックやメンバーが取り囲み最後の点検、ドライバーの激励を行い3分前になるとグリッドから退去。ドライバーが孤独と向き合う時間が流れる。
フォーメーションラップを終えてグリッドに戻りレーススタート。38号車小林選手はポジションキープでスタートしたが34号車磐上選手はベテラン2台に抜かれて順位を落とし19位で第1セクターを通過。そのままの順位で1周目を終えた。小林選手は前のマシンを1秒程度の差で追い上げている。
2台は順調に走行を重ねて行ったが、7周目の第2コーナーで小林選手がスピン、アウト側のグラベルに入ってしまい脱出不可能に。ここで小林選手のレースは終了、レースはセーフティカーランになりその間に38号車はオフィシャルの手で撤去され、レースは10周目から再開。残りは3周。
34号車磐上選手は初体験のリスタートをソツなくこなし、前を行く9号車を1秒未満の差で追い、ファイナルラップは1分34秒616の自己ベストタイムをマークして、前と僅か0.225秒の差でフィニッシュした。
ドライバーのコメント
- 34号車・磐上選手 18位
-
「(初レースの感想は?)結果がスタボロで、自分の中では(100点満点で)10点とか0点のレベルです。それでも最後まで走ってレースの流れや、スタート、セーフティカーランまで体験できて、収穫は多かったと感じています。自分の走りや結果(最下位)は納得できなかったです。前を抜くチャンスも山ほどあったのにそれを活かせなかったのが悔しいです」
- 38号車・小林選手 リタイヤ
-
「第2コーナーでスピンしてしまいました。自分の前のマシンがだいぶペースを乱していて、これはイケると気持ちが先走って、ちょっと(コーナー進入で)突っ込み過ぎました。第1コーナー第2コーナーと向うが姿勢を乱しているのを見てしまって、それにつられてアウトにはらんで縁石に乗ってしまいスピンしました。そこまでは順調で、今まで一番クルマの動きが分かり、(姿勢の)曲げ方とかが分かったので前の集団について行けましたが、それもあって先走ってしまったかも。マシンのダメージはないですが、メンタルはかなりやられました(笑)。完走できなかっただけに、メカの人には申し訳ないです」
学生ドライバー、メカニックのレース挑戦は いささかほろ苦い部分もあったようだが貴重な経験を積めたことで、皆充実した表情で撤収作業を行っていた。
次のレース出場は11月20日の富士スピードウェイとの事で、菅生とはまた違った高速サーキットを楽しんでもらいたいものである。
Text: Junichi SEKINE
Photo: Kazuhiro NOINE
Asako SHIMA
2021年もてぎ・菅生スーパーFJ選手権シリーズ選手権、最終第6戦決勝が10月10日(日)にスポーツランドSUGOで開催され、12周のレースをポールポジションからスタートの8号車・岡本大地(FTK・レブレーシングガレージ)が独走で優勝した。
午前中は曇り空だったスポーツランドSUGOだが午後には陽射しが強くなり、風は涼しいものの日向では汗ばむほどの陽気となった。しかしスーパーFJの決勝レースは午後3時40分にコースインで、山あいにあるSUGOではここから急激に気温が下がる。それにつれて路面温度も刻々と下がっていくため、ヨコハマタイヤの技術者の予想通りタイヤの設定が難しいコンディションとなった。
シリーズチャンピオンは今回欠場の81号車・佐藤樹(群馬トヨペット リノア ED)で決まっており、シリーズ2位の座を33号車・伊藤慎之典(テイクファーストチャリ走10V)と13号車・四倉悠聖(ZAP日本平中自動車10V ED)の2名が争う。現在60ポイントvs51ポイントで伊藤がリードしており、四倉は伊藤より上位でフィニッシュしないことには勝負にならないが、予選は伊藤2番手、四倉6番手と差がついている。ここから四倉が逆転のチャンスを掴めるかも注目だ。
全車スリックタイヤでコースイン。午後3時55分にフォーメーションラップ開始後、所定のグリッドに着くとレッドライトが消滅してクリーンにスタートが切られた。
フロントロウからスタートの岡本と伊藤がスムーズに発進したのに対して、その後方3番グリッドからスタートの7号車・髙口大将(FTK・レヴレーシングガレージ)が一瞬出遅れ、後方集団に飲み込まれてしまう。岡本~伊藤に続くのは4番手スタートの32号車・渡会太一(オートバックス ドラゴコルセ)、5番手スタートの36号車・長谷部一真(ALBIREX RD10V)がそれぞれ1ポジションアップで第1コーナーに飛び込み、高口は5位まで順位を落としてしまう。
岡本はスタートダッシュに成功し、伊藤と渡会が牽制しあっている間に差をつけてバックストレートを通過、スタートで出遅れた高口はまずSPコーナーで長谷部の前に出て4番手に上がると、前を行く2台を追い始める。長谷部のマシンは最終コーナー入口の110Rコーナーでテールを滑らせてタイムをロス、6番手スタートの四倉が背後に迫る。
1周目を終えて岡本は早くも2位伊藤に1.693秒の差、3位渡会は伊藤に0.62秒の差でコントロールラインを通過。高口に続き長谷部を捉えた四倉はスリップを効かせてストレートで前に出て5番手へ進出。長谷部は6番手にダウン。以下22号車・内藤大輝(RCIT RaiseUP MT)~91号車・前田大道(ELEVレーシングドリーム)~5号車・板倉慎哉(Fレーシング)と続き10位にはジェントルマンクラスでトップの0号車・夕田大助(LAPS)がつけている。
3周目を終えてトップ岡本は2位伊藤に3.853秒のギャップを築き早くも独走態勢。伊藤は僅か0.695秒差の渡会からの攻勢をしのぐ戦いとなっており、岡本を追いかけることができない。その隙に4位高口も0.592秒差まで渡会に迫り3台による2位争いになる。
後方ではジェントルマンクラスの夕田が速く全体の8位まで進出、前田を追いかける。ジェントルマンクラス2位は総合11位の90号車・上吹越哲也(FTK・レヴレーシングガレージ)。
岡本は1分30秒台のタイムで2位以下との差をさらに広げ5周目には5.867秒差とする。その後方、伊藤と渡会のギャップは0.367秒まで縮まり高口も渡会に0.282秒差、と3台がテール・ツー・ノーズ状態に連なってメインストレートを走り抜ける。
2位グループ3台の均衡が崩れたのは7周目の1コーナー。その前6周目の最終コーナー入口で4位高口がアウト側から渡会に仕掛けていく。半車身ほど渡会が前で最終コーナーから立ち上がり、上り勾配10%のストレートを並んで駆け上がると渡会がスリップを嫌ってイン側に寄せ、高口はアウトから並びかける。そのままサイド・バイ・サイドで第1コーナーに進入。高口がアウトから渡会の前に出て遂に3位を奪いとるが、渡会はすかさず高口のテールに張り付いて逆転のチャンスを窺う。後方では5位四倉に長谷部が食らいついてレインボーコーナーでインを窺うが、ここは四倉がブロック、2台は立ち上がりでアウト側のダートに片輪を落とすところまで我慢比べを行うが四倉が守り切った。。
この時2コーナーで16番手を走行していたルーキー、38号車・小林雄太(新潟国際自動車ワコーズED KKS)が単独スピン。グラベルにコースアウトして停止、すかさずセーフティカー(SC)ランが宣言され、各車のギャップはリセットされてしまう。各車左右にウィービングを繰り返してタイヤの温度を維持しようとしているように見えるが、リーダーの岡本はあまりマシンを振っていない。
SCランは2周に及び、10周目からレース再開。3周の超スプリントが始まる。
9周目のバックストレート終わりでSCのフラッシュライトが消え10周目からのレース再開が宣言されると、先頭の岡本がペースのコントロールを始める。いったんは大きくペースダウンしてSCとの距離を置いた後で、SPコーナー出口から加速を開始。ホームストレートを駆け上がる頃には車速を乗せて後続を突き放してコントロールラインを通過してレース再開。
各車ポジションを守って第1コーナーに入っていくが、後方では10位を走る10号車・阿部光(ZAP SPEED 10V ED)が夕田に並びかけて2コーナーまでに前に出て9位にアップ。ジェントルマンクラス首位の夕田は全体10位にダウンする。しかし夕田はすぐにこれを挽回。安部を逆転して9位で10周目を終えた。
岡本はSC前の6秒ものマージンを失ったとはいえ、リスタート時のトップの優位を生かして2位伊藤とのギャップを再び拡げにかかり、10周目を終えて1.133秒のギャップを再度築く。一方でSC入り直前まで完全にテール・ツー・ノーズ状態だった2位グループの3台は逆にギャップが拡がる恰好になり、2位伊藤と3位高口は1.128秒差、高口と4位渡会は1.947秒差となる。一方5位を争う四倉と長谷部は再び接近戦になり、自己ベストを出した前田までもがここに絡んできている。
岡本は続く11周目、12周目とファステストラップを更新してダメ押しの様に伊藤とのギャップを拡げ、最終的に3.012秒の差で悠然とチェッカードフラッグを受けて優勝を飾った。2位の伊藤はSC明け後ペースが上がらずファイナルラップには高口に0.514秒差まで詰め寄られたが辛くも逃げ切った。
その高口を追っていた4位の渡会、5位四倉、6位長谷部はそれぞれ1.5秒程度まで間隔を開けてフィニッシュ。前田は長谷部まで0.268秒と追い詰めたが届かず7位に終わった。
ジェントルマンクラスは終始10位以内で走行していた夕田が全体9位で優勝。2位は上吹越が全体12位でフィニッシュ。スポット参戦の2名に続いて55号車・伊勢屋貴史(アルビ☆あやし眼科☆10V ED)が入った。
■レース後のコメント
- 優勝 8号車・岡本大地(FTK・レブレーシングガレージ)
-
「(完勝だったがSC中は何を考えていた?)SCが入る前からタイムが落ち気味になっていたので、タイヤが熱ダレしているのかと思っていた。なのでSC中はあまりウィービングせずに(タイヤを)冷やす方向で考えていたのだが、間違っていたのかも。SC明けにあまりグリップ感が無かったので、逆にタイヤの温度が十分上がっていなかったのかも知れない。その他は全く問題はなく、クルマのバランスもよかった。(タイヤの)内圧だけ予選から変えて少し低めでスタートしたが、それも良かったと思う」
- 2位 33号車・伊藤慎之典(テイクファーストチャリ走10V)
-
「(岡本選手は追えなかった?)バトルもなくて彼は速かった。(2位はきっちり守った?)最後はちょっと詰め寄られてしまったが、ラスト1周は後ろとの距離を見て、自分がミスしないように、絶対に抜かれない間合いは確保しながらコントロールラインまでもたせた。(SC明けのタイヤの状態は?)むしろSC明けの方がタイヤのグリップ感がよかった。SC中もタイヤの温度を高いままで維持していた。(ランキング2位確定だが)2位は取れたが、出来れば今日の段階でチャンピオン争いをしていたかった。結局今年まだ優勝もなく2位が3回で終わってしまったので、勝ちたかった。来年も参戦できるなら勝ちたいしシリーズチャンピオンも取りたい。その前に年末の日本一決定戦で頑張る」
- 3位 7号車・髙口大将(FTK・レヴレーシングガレージ)
-
「スタートで失敗した。ジャンピングスタートしたかと思って一度クラッチを切って出遅れてしまった。自分のレースペースはいいと分かっていたので、後ろは気にしないで前を追いかけて行ったが、速い箇所が自分とは違っていて、抜くのに手こずってしまった。渡会選手を抜いた直後にSCになったので、そこはぎりぎりで状況よかったと思った。最後は自分の方が速かったので、もう一つ上(の順位)を狙えたのかなと思う」
- 4位 32号車・渡会太一(オートバックス ドラゴコルセ)
-
「まず、前回失敗したスタートを今回は反省してうまくできたことはよかった。SC明けのリスタートでだいぶ前と離れてしまって、そのまま追いつくこともできなかった。そのあたりが次の課題だ。(タイヤは?)きつかった、トップ3台に比べて(自分は)全然ペースが速くなくて、その部分で厳しかった」
今シーズンのもてぎ・菅生スーパーFJ選手権シリーズはこれにて終了。佐藤樹が6戦中4勝、ポールポジション5回と強さと速さを見せてチャンピオンを獲得。最終戦までもつれ込んだシリーズランキング2位の争いは、今回2位で15ポイントを上積みした伊藤が計75ポイントとなり2位を獲得。四倉は3位となった。
また、スーパーFJジャパンチャレンジについては首位岡本大地が24ポイント、2位高口が16ポイントと8ポイント差になり、次戦11月の富士のレースを残して、岡本の2年連続チャンピオンが確定した事になる。
(ポイント類は手元集計)
Text: Junichi SEKI
Photo: Kazuhiro NOINE
SUGOチャンピオンカップレースシリーズ第6戦 -RIJ- (2021/10/10) Final Race Weather:Cloudy Course:Dry
2021 スーパーFJもてぎ・菅生シリーズ Round 6 スポーツランドSUGO 3.5865km
Pos | No | Cls | Cls Pos | Driver | Car Maker Model | Lap | Time | Behind | Gap |
1 | 8 | | | 岡本 大地 | FTK・レヴレーシングガレージ MYST KK-S2 | 12 | 20'34.130 | - | - |
2 | 33 | | | 伊藤 慎之典 | テイクファーストチャリ走10V TOKYO R&D RD10V | 12 | 20'37.142 | 3.012 | 3.012 |
3 | 7 | | | 髙口 大将 | FTK・レヴレーシングガレージ MYST KK-S2 | 12 | 20'37.656 | 3.526 | 0.514 |
4 | 32 | | | 渡会 太一 | オートバックス ドラゴコルセ TOKYO R&D RD10V | 12 | 20'40.119 | 5.989 | 2.463 |
5 | 13 | | | 四倉 悠聖 | ZAP日本平中自動車10V ED TOKYO R&D RD10V | 12 | 20'41.543 | 7.413 | 1.424 |
6 | 36 | | | 長谷部 一真 | ALBIREX RD10V TOKYO R&D RD10V | 12 | 20'43.108 | 8.978 | 1.565 |
7 | 91 | | | 前田 大道 | ELEVレーシングドリーム10V TOKYO R&D RD10V | 12 | 20'43.376 | 9.246 | 0.268 |
8 | 22 | | | 内藤 大輝 | RCIT RaiseUP MT MYST KK-S2 | 12 | 20'47.995 | 13.865 | 4.619 |
9 | 0 | G | 1 | 夕田 大助 | LAPS MYST KK-S2 | 12 | 20'48.464 | 14.334 | 0.469 |
10 | 5 | | | 板倉 慎哉 | Fレーシング MYST KK-S2 | 12 | 20'48.805 | 14.675 | 0.341 |
11 | 10 | | | 阿部 光 | ZAP SPEED 10V ED TOKYO R&D RD10V | 12 | 20'51.881 | 17.751 | 3.076 |
12 | 90 | G | 2 | 上吹越 哲也 | FTK・レヴレーシングガレージ MYST KK-S2 | 12 | 20'52.395 | 18.265 | 0.514 |
13 | 35 | | | 大川 烈弥 | アルビビヨンドKKS GIA ED MYST KK-S | 12 | 20'53.635 | 19.505 | 1.240 |
14 | 17 | | | 平 裕介 | ZAP_大窪熔材_10V_ED TOKYO R&D RD10V | 12 | 20'54.512 | 20.382 | 0.877 |
15 | 21 | | | 大友 敦仁 | カローラ宮城RaiseUP07 WEST 07J | 12 | 20'55.150 | 21.020 | 0.638 |
16 | 55 | G | 3 | 伊勢屋 貴史 | アルビ☆あやし眼科☆10V ED TOKYO R&D RD10V | 12 | 20'58.160 | 24.030 | 3.010 |
17 | 9 | G | 4 | 安藤 弘人 | ZAP SPEED 10V ED TOKYO R&D RD10V | 12 | 21'02.442 | 28.312 | 4.282 |
18 | 34 | | | 磐上 隼斗 | 新潟国際自動車ワコーズED KKS MYST KK-S | 12 | 21'02.667 | 28.537 | 0.225 |
---- 以上規定周回数(90% - 10Laps)完走 ---- |
- | 38 | | | 小林 雄太 | 新潟国際自動車ワコーズED KKS MYST KK-S | 6 | 9'44.042 | 6Laps | 6Laps |
- Fastest Lap: CarNo.8 岡本大地(FTK・レヴレーシングガレージ) 1'30.169 (12/12) 143.191km/h
2021年もてぎ・菅生スーパーFJ選手権シリーズ選手権最終第6戦の予選が10月10日(日)にスポーツランドSUGOで開催され、鈴鹿シリーズを制してスポット参戦してきた8号車・岡本大地(FTK・レブレーシングガレージ)が2位以下に0.8秒以上の大差をつけてポールポジションを獲得した。
ツインリンクもてぎとスポーツランドSUGOを転戦して行われる同シリーズは今回の第6戦が最終戦。チャンピオンシップはすでに前戦もてぎで81号車・佐藤樹(群馬トヨペット リノア ED)の獲得が決まっており、その佐藤は今回欠場。しかしシリーズ2位の争いは継続中で、ここまで60ポイント獲得でランキング2位の33号車・伊藤慎之典(テイクファーストチャリ走10V)と同51ポントで3位の13号車・四倉悠聖(ZAP日本平中自動車10V ED)の2名がその座を争っており、佐藤不在の大会で共に優勝でランキング2位獲得を目指してもいる。
しかしながらこの二人を悩ませる存在になるのが、今回スポット参戦の岡本。鈴鹿シリーズを2年連続で制して、次なるターゲット、全国各地のスーパーFJシリーズ戦の中で1イベントをピックアップ(岡山ともてぎは1イベント2レース)してポイントランキングを競う「スーパーFJジャパンチャレンジ」獲得に向けて同シリーズ対象となる本大会にエントリーしてきた。
岡本は第2戦オートポリス、第3戦/第4戦岡山国際サーキットの3大会に出場し全て優勝して18ポイントと現在ランキング首位。2位のチームメイト、7号車・髙口大将(FTK・レヴレーシングガレージ)に6ポイントの差をつけており、こちらも2年連続チャンピオンに向けて地歩を固めつつある。
前日までの練習走行ではその岡本がドライコンディションでは他の選手より1秒も速かったという情報もあり、各陣営は嫌でも岡本を意識せざるを得ない状況になっていた。
エントリーは今シーズン最大の19台。シリーズ最終戦ということもあり、今シーズン初参戦の選手が数名おり、前述の高口は今シーズン途中から鈴鹿シリーズをメインに岡本と帯同して活動し、今回初めてSUGOでのレース。同じく鈴鹿シリーズに参戦している5号車・板倉慎哉(Fレーシング)も今年関東は初見参、また10号車・阿部光(ZAP SPEED 10V ED)は実に15年ぶりのスーパーFJレース参戦との事。そして、新潟にある「新潟国際自動車大学校」からエントリーの34号車・磐上隼斗(新潟国際自動車ワコーズED KKS)と38号車・小林雄太(新潟国際自動車ワコーズED KKS)の2名はドライバー、メカニック共に同校の生徒という構成で、モータースポーツ科2年生の後期授業の一環として、初のレース参戦である。
迎えた予選は午前10時35分開始で15分間、天候は曇りで時折薄日が差す程度。前日降った雨の名残でコース各所にウエットパッチが見られるが、レコードラインは乾いており、各車スリックタイヤでコースインした。
数周のウオームアップでタイヤも暖まり、まずは残り11分の時点で岡本が1分32秒393でトップに立ち、高口、22号車・内藤大輝(RCIT RaiseUP MT)が続く。続いて四倉が1分32秒185をマークしトップに立つが、直後に32号車・渡会太一(オートバックス ドラゴコルセ)が1分31秒918で四倉を追い落とす。3位には36号車・長谷部一真(ALBIREX RD10V)が上がり岡本が4番手へドロップ。
残り9分を切って、岡本が本格的にタイムアタックを開始。第1セクター、第2セクター、第3セクターと最速タイムで走り、1分29秒605と一気に29秒台に入れて来る。2番手には伊藤が1分31秒085で上がってくるが、岡本とは実に1.48秒の差がある。
岡本は次の周回で1分29秒299とさらにタイムを縮め、2番手に伊藤、以下長谷部~四倉~渡会~高口~内藤と続き、8番手に91号車・前田大道(ELEVレーシングドリーム)が上がって来た。
36才以上が対象のジェントルマンクラスは全体10番手に0号車・夕田大助(LAPS)がいてクラストップ、クラス2番手は90号車・上吹越哲也(FTK・レヴレーシングガレージ)が全体の15番手で続いている。
残り5分で四倉が1分30秒882を出して2番手を取り返し、さらに高口が1分30秒089と自己ベストを更新し再び2番手へ。続いて渡会が1分30秒328で四倉を上回り3番手へ、四倉4番手、伊藤は5番手までドロップ。さらに長谷部が1分30秒702を出し四倉の上に出る。
拮抗する2番手以下の争いをよそに岡本はトップタイムを刻み続け、残り4分で1分29秒164までタイムを削り、2番手高口に0.923の差をつけると、さらにアタックを続け、第1、第3セクターの最速を更新すると1分29秒を切って1分28秒982でコントロールラインを通過。圧倒的とも言える速さを見せつけた。
2番手以下の争いは残り1分を切ったタイミングで伊藤が1分29秒826と29秒台に入れてフロントロウを確保する一方、同じく高口を上回りたい渡会だったが第1セクターでオーバーラン、チャンスを逸して明暗を分けた。
ポールポジション岡本と2番手伊藤の差は0.844秒。高口、渡会と続き、終盤タイムが伸びなかった四倉は長谷部に続く6番手。内藤が7番手、最後まで4列めを争った前田と板倉は最後に板倉が0.453秒の差で8番手、前田9番手となった。
ジェントルマンクラスは夕田が一時総合12番手まで落とした順位を再度10番手に戻してクラストップ、総合15番手でクラス2番手上吹越に0.758秒の差をつけた。
今回初めてレース参戦の磐上と小林の新潟国際自動車コンビは、小林が1分33秒809で16番手、磐上が1分33秒817で17番手からスタートすることになった。
■予選後のコメント
- ポールポジション 8号車・岡本大地(FTK・レブレーシングガレージ) 1分28秒982
-
「(練習走行から好調と聞いているが?)今回は走行枠が少なくて、自分は金曜日から走ったが、赤旗も多くて満足に練習できなくてちょっと困った。ただ、みんなもマトモに走れていない中で、去年走った経験がある分が自分のアドバンテージになったかなと思うが、それだけ(しか差はない)、とも言える」
- 2位 33号車・伊藤慎之典(テイクファーストチャリ走10V) 1分29秒826 トップとの差0.844秒
-
「岡本君からは1秒近く離されてしまった。練習から彼は速かったので、コンマ5秒以内の差にとどめたかった。コンマ5秒以内の差でいられれば、決勝でもスタートで何とか前に出てうまく(勝負を)やれるかもしれない、と思っていたのだが。今の予選(マシンが)混んでいるところに居たもので、1周しかまともにタイムアタックできなかった。もう1周クリアラップを取ることができたら、タイムを上げられたと思う、コンマ5秒(の短縮の目は)は見えていたと思う。それが叶わなかったのは残念だ。決勝に向けてはクルマの調子はいいので、スタート頑張ります(笑)」
- 3位 7号車・髙口大将(FTK・レヴレーシングガレージ) 1分30秒045 トップとの差1.063秒
-
「(チェッカーフラッグ後の最後の1周で好タイムが出たが?)本当は29秒台に入れたかった。序盤に自分の位置取りをしっかりやってから、早めにタイムを上げて、そこから少しずつ詰めていく予定だっったのだが、自分のミスで(マシンの調子に)合わせられないところがあって、最後の1周だけ(走りを)まとめることができた。もうちょっと(詰めて)行きたかった。トップとは離れてしまったが、2番手とはそう差がない(0.219秒)ので、落ち着いてレースして行けばチャンスはあると思うので、そこを逃さずにいきたい。チームメイト(岡本大地)が頭張っているところで同じくらいにバトルができるようでないとダメなので、そこは頑張らないと」
- 4位 32号車・渡会太一(オートバックス ドラゴコルセ) 1分30秒328 トップとの差1.346秒
-
「(トップとのタイム差について)めちゃくちゃ悔しい。自分のミスで1周(の走りを)まとめ切れることができなかった。そこが自分の課題でもある。(決勝に向けては?)1周通した走りをまとめることができれば、ラップタイム自体悪くはなさそうなので、とにかく焦らずに、ミスをせずにポジションを上げられたらな、と思う」
予選後にヨコハマタイヤのエンジニアに聞いたところ、予選では第1コーナーへのブレーキングでフロントタイヤをロックさせるマシンが散見されたという。実際フラットスポットを作って帰って来たマシンもあった。
これは前日まで気温が低かったのに対して、本日は気温が上昇しておりコンディションが変わってきている事に対処できてない場合が考えられるとの事。決勝は本日の最終レースで路面温度がさらに変化するのでその点考えてセットアップしないとタイヤが厳しくなるそうだ。
決勝は本日の最終レースで15時35分スタート予定。岡本に挑める者が現れるか、はたまた昨年の遠征の時のように岡本がホーム勢をちぎるのか、注目だ。
Text: Junichi SEKINE
Photo: Kazuhiro NOINE
Asako SHIMA
SUGOチャンピオンカップレースシリーズ第6戦 -RIJ- (2021/10/10) Qualifying Weather:Fine Course:Dry
2021 スーパーFJもてぎ・菅生シリーズ Round 6 スポーツランドSUGO 3.5865km
Pos | № | Cls | Cls Pos | Driver | Car Maker Model | Time | Behind | Gap | km/h |
1 | 8 | | | 岡本 大地 | FTK・レヴレーシングガレージ MYST KK-S2 | 1'28.982 | - | - | 145.101 |
2 | 33 | | | 伊藤 慎之典 | テイクファーストチャリ走10V TOKYO R&D RD10V | 1'29.826 | 0.844 | 0.844 | 143.738 |
3 | 7 | | | 髙口 大将 | FTK・レヴレーシングガレージ MYST KK-S2 | 1'30.045 | 1.063 | 0.219 | 143.388 |
4 | 32 | | | 渡会 太一 | オートバックス ドラゴコルセ TOKYO R&D RD10V | 1'30.328 | 1.346 | 0.283 | 142.939 |
5 | 36 | | | 長谷部 一真 | ALBIREX RD10V TOKYO R&D RD10V | 1'30.702 | 1.720 | 0.374 | 142.350 |
6 | 13 | | | 四倉 悠聖 | ZAP日本平中自動車10V ED TOKYO R&D RD10V | 1'30.808 | 1.826 | 0.106 | 142.184 |
7 | 22 | | | 内藤 大輝 | RCIT RaiseUP MT MYST KK-S2 | 1'31.157 | 2.175 | 0.349 | 141.639 |
8 | 5 | | | 板倉 慎哉 | Fレーシング MYST KK-S2 | 1'31.266 | 2.284 | 0.109 | 141.470 |
9 | 91 | | | 前田 大道 | ELEVレーシングドリーム10V TOKYO R&D RD10V | 1'31.719 | 2.737 | 0.453 | 140.771 |
10 | 0 | G | 1 | 夕田 大助 | LAPS MYST KK-S2 | 1'32.368 | 3.386 | 0.649 | 139.782 |
11 | 35 | | | 大川 烈弥 | アルビビヨンドKKS GIA ED MYST KK-S | 1'32.392 | 3.410 | 0.024 | 139.746 |
12 | 10 | | | 阿部 光 | ZAP SPEED 10V ED TOKYO R&D RD10V | 1'32.480 | 3.498 | 0.088 | 139.613 |
13 | 21 | | | 大友 敦仁 | カローラ宮城RaiseUP07 WEST 07J | 1'32.638 | 3.656 | 0.158 | 139.375 |
14 | 17 | | | 平 裕介 | ZAP_大窪熔材_10V_ED TOKYO R&D RD10V | 1'32.664 | 3.682 | 0.026 | 139.336 |
15 | 90 | G | 2 | 上吹越 哲也 | FTK・レヴレーシングガレージ MYST KK-S2 | 1'33.126 | 4.144 | 0.462 | 138.644 |
16 | 38 | | | 小林 雄太 | 新潟国際自動車ワコーズED KKS MYST KK-S | 1'33.809 | 4.827 | 0.683 | 137.635 |
17 | 34 | | | 磐上 隼斗 | 新潟国際自動車ワコーズED KKS MYST KK-S | 1'33.817 | 4.835 | 0.008 | 137.623 |
18 | 9 | G | 3 | 安藤 弘人 | ZAP SPEED 10V ED TOKYO R&D RD10V | 1'33.958 | 4.976 | 0.141 | 137.417 |
19 | 55 | G | 4 | 伊勢屋 貴史 | アルビ☆あやし眼科☆10V ED TOKYO R&D RD10V | 1'34.188 | 5.206 | 0.230 | 137.081 |
---- 以上基準タイム(130% - 1'56.503)予選通過 ---- |
今大会の三浦愛は、FIA-F4などで活躍する若手が多く参戦するなかで、第10戦は予選3位、決勝はスピンもあり5位フィニッシュ。第11戦の予選は3回の赤旗中断のなか5位、決勝は追い上げてきたシリーズリーダー古谷悠河を抑え切ったものの順位は4位と、表彰台に届かずに終わった。
それでも初めてファステストラップを記録するなど収穫はあったようだ。本人にレースを振り返ってもらった。
-
「第10戦は、スタートで順位は守ったものの、レインボーで接触しそうになって失速、追いつかなくちゃと思った次の周にS字でスピン。すぐコースには戻りましたが、その後、今田選手を抜くのに手こずってしまいました。でもファステストを狙って走りました。終盤は思うような走りができたように思います」
「第11戦は、レースの内容としては悪くはなかったと思いますが、序盤のペースが課題です。(古谷選手との攻防では)自分の良いところと古谷選手の良いところを見極めて、落ち着いて走れたように思います。後半雨量が増えてきましたが、ペースは回りよりも良かったので、やっぱり序盤が課題です」
(三浦選手が抑え切ったことで古谷選手のチャンピオン決定が最終大会に持ち越しになりましたが)
「それは良かったです(笑)。それだけは阻止しようと思って臨みましたので」
「今回は表彰台には立てませんでしたが、第10戦で初めてファステストラップを記録しました。今までぎりぎりで逃していましたが、やっと取れました。第11戦は、最後まで古谷選手を抑えることができましたし、今シーズン課題としていたことのうち2つがクリアできました。最終戦に向けて手応えを得ることができました」
「まだ、タイヤが温まっていないときのタイムの出し方や、レースのポジション取りなど課題はありますが、最終戦も気持ちで負けないようにしたいと思います」
まとめ: Shigeru KITAMICHI
Photo: Kazuhiro NOINE
- 総合優勝 #77澤龍之介(D'stationF111/3)
-
「第10戦は少しマシンセッティングやタイヤの内圧を外してしまったので、今回はアジャストして臨みました。それが良かったと思います」
「大草選手は雨が強い印象があったので、後半追い上げられているときは不安でした。でも、エンジニアが無線で状況を教えてくれたので冷静に走れました」
「まだ何も決まってはいませんが、鈴鹿もぜひ出たいです」
- マスタークラス優勝 #7畑 享志(F111/3)
-
「今度はちゃんと勝てました(笑)。クラッチがだめになっていてスタートは諦めていたんですが、意外にうまくいきました。もし出遅れても、最終コーナーが速かったので、そこで抜けるだろうとは思っていました」
「終盤はタイヤが限界を迎えてかなり厳しくて、ステキナレーシングの若手2人が迫ってきていましたが、意地で抑えました」
まとめ: Shigeru KITAMICHI
Photo: Kazuhiro NOINE
10月9日、フォーミュラ・リージョナル選手権(FORMULA REGIONAL JAPANESE CHAMPIONSHIP)第11戦の決勝が宮城県・スポーツランドSUGOで行われ、澤龍之介(D'stationF111/3)がポールポジションから逃げ切って今季2勝目を飾った。
マスタークラスは、序盤で順位を上げた#7畑享志(F111/3)が第10戦に続き連勝を飾った。
一向に好転しない天候は、第11戦のスタート時刻になっても冷たく細かい雨を降らし続けた。今回は全車レインタイヤを装着してスタートを迎えた。
ポールポジションの#77澤は好スタートで1コーナーに飛び込むと、1周目で早くも2.8秒のギャップを築いてコントロールラインに戻ってくる。これを追うのが予選2位の#45大草りき(PONOS Racing)と予選3位の#3小川颯太(Sutekina Racing)だが、#3小川はペースが上がらず、この後ズルズルと順位を落としてしまう。
一方、予選のクラッシュで最後尾スタートとなった#28古谷悠河(TOM'S YOUTH)は、1周目に6位までジャンプアップ。まずは前を行く#8三浦愛(ARTA F111/3)を攻略しようと攻め立てる。
トップ#77澤は快調に飛ばし、7周目には2位#45大草に対し、6秒という大きなマージンを築くが、この頃から雨足が強くなり、やや硬目のセッティングで臨んでいた#77澤は#45大草に徐々に追い上げられることになる。
トップ2車には置いていかれたものの、3位#11太田格之進(Rn-sportsF111/3)は単独3位の座を確固たるものにし、その後方では#8三浦、#28古谷のバトルが続く。
降り続く雨の中、トップ2車の差は周回を重ねる度に縮まっていき14周目には2.8秒となった。
しかし、トップ#77澤は「大草選手に追い上げられてかなり不安でした」とは言うものの、残り周回を安定して走りきり、富士大会に続き、ここ菅生でも1勝をあげた。しかも、今回はポール・トゥ・ウィンという完勝だった。
#8三浦愛と#28古谷のバトルは終盤まで続いたが、#8三浦愛が「古谷選手と速いところが違っていたのでそこを確実に抑えるようにしました」と最後まで前には出さず、この結果、#28古谷のチャンピオン決定を最終鈴鹿大会に持ち越すことに成功した。
マスタークラスは、「最終コーナーが他車より速かった」という#7畑が、序盤で一気にトップに躍り出ると、そのまま逃げ切って連勝のフィニッシュ。
#7畑の連勝により、マスタークラスのチャンピオン争いは混沌としてきた。こちらも鈴鹿大会で決することになった。
Text:Shigeru KITAMICHI
Photo: Kazuhiro NOINE
SUGOチャンピオンカップレースシリーズ第6戦 -RIJ- (2021/10/09) Final Race Weather:Rain Course:Wet
2021 FORMULA REGIONAL JAPANESE CHAMPIONSHIP Round 11 スポーツランドSUGO 3.5865km
Pos | No | Cls | Cls Pos | Driver | Car Team | Lap | Time | Behind | Gap |
1 | 77 | | | 澤 龍之介 | D'station F111/3 D'station Racing | 17 | 26'15.867 | - | - |
2 | 45 | | | 大草 りき | PONOS Racing PONOS Racing | 17 | 26'17.973 | 2.106 | 2.106 |
3 | 11 | | | 太田 格之進 | Rn-sports F111/3 Rn-sports | 17 | 26'32.797 | 16.930 | 14.824 |
4 | 8 | | | 三浦 愛 | ARTA F111/3 Team Super License | 17 | 26'36.516 | 20.649 | 3.719 |
5 | 28 | | | 古谷 悠河 | TOM'S YOUTH TOM'S YOUTH | 17 | 26'39.353 | 23.486 | 2.837 |
6 | 7 | M | 1 | 畑 亨志 | F111/3 Team Super License | 17 | 26'53.693 | 37.826 | 14.340 |
7 | 3 | | | 小川 颯太 | Sutekina Racing SUTEKINA RACING TEAM | 17 | 26'54.696 | 38.829 | 1.003 |
8 | 5 | | | 塩津 佑介 | Sutekina Racing SUTEKINA RACING TEAM | 17 | 27'01.111 | 45.244 | 6.415 |
9 | 4 | M | 2 | 今田 信宏 | JMS RACING with B-MAX B-MAX ENGINEERING | 17 | 27'09.720 | 53.853 | 8.609 |
10 | 96 | M | 3 | TAKUMI | B-MAX ENGINEERING FRJ B-MAX ENGINEERING | 17 | 27'27.294 | 1'11.427 | 17.574 |
11 | 39 | M | 4 | 田中 優暉 | ASCLAYIndサクセスES イーグルスポーツ | 17 | 27'28.902 | 1'13.035 | 1.608 |
12 | 30 | M | 5 | DRAGON | B-MAX ENGINEERING FRJ B-MAX ENGINEERING | 17 | 27'40.762 | 1'24.895 | 11.860 |
13 | 34 | M | 6 | 三浦 勝 | CMS F111 C.M.S motor sport's project | 16 | 26'24.597 | 1Lap | 1Lap |
---- 以上規定周回数(90% - 15Lapsx)完走 ---- |
- Fastest Lap: CarNo.45 大草りき (PONOS Racing) 1'29.259 (4/17) 144.651km/h
- 総合優勝 古谷悠河(TOM'S YOUTH)
-
「珍しくスタートが決まりました。スタートで抜くのは2回目くらいです(笑)。1周目はペースが上がらずに苦しかったですが、何とか守りきって、2周目以降は良いペースで走れました」
「Q2で自分のミスでマシンを壊してしまいましたが、こんなに完璧なマシンを用意してくれたチームに感謝です。次のレースは最後尾スタートですが、このペースで走れれば何とかなると思います」
- マスタークラス優勝 #7畑 享志(F111/3)
-
「自分らしいレースでした(笑)。雨なのでスタートで早めに2速に入れたら、全然前に進まなくて抜かれました。そこからは気持ちを切り替えて1台ずつ抜くことを心掛けました」
「途中までなかなかペースが上がらなかったのですが、乾いたラインを走るようにしたら、どんどんペースが上がって前に追いつきました。最後は前が接触し、今田選手のペースが落ちていたので前に出ることができました」
まとめ: Shigeru KITAMICHI
Photo: Asako SHIMA
10月9日、フォーミュラ・リージョナル選手権(FORMULA REGIONAL JAPANESE CHAMPIONSHIP)第10戦の決勝が宮城県・スポーツランドSUGOで行われ、2番グリッドから好スタートを決めた古谷悠河(TOM'S YOUTH)が独走で今季3勝目を飾った。
マスタークラスは、スタートで出遅れたもののトップ2車の接触で、#7畑享志(F111/3)がクラス優勝を飾った。
上空には暗い雲が垂れ込めているものの、雨は上がり、ややコンディションが回復しつつあるなか、スタート時刻を迎えた。
ほとんどのマシンがレインタイヤを履いてレースに臨むが、#3小川颯太(Sutekina Racing)と#5塩津佑介(Sutekina Racing)のチームメイト2人は、優勝を狙ってスリックタイヤでスタートするというギャンブルに出た。
好スタートを見せたのは、フロントローイン側、2番グリッドの#28古谷。スタートで出遅れることの多い#28古谷だが、ポールスタートの#77澤龍之介(D'stationF111/3)を1~2コーナーでかわしてトップに躍り出る。
この後、ややペースの上がらない#28古谷を、2周目に2位に上がった#45大草りき(PONOS Racing)、#77澤、#11太田格之進(Rn-sportsF111/3)が攻め立てるが、それを何とか凌いだ#28古谷は3周目から徐々に独走態勢を築いていく。
チャンピオン争いで#28古谷に先行したい#8三浦愛(ARTA F111/3)は、スタート後の混乱のなかで遅れ、おまけにスピンも喫してしまい、マスターズのなかに埋もれてしまう。
スリックタイヤでスタートした#3小川、#5塩津の2人は、完全に賭けが外れてしまい、後方に沈んでしまった。
周回を重ねる度に上位陣の差は開いていき、6周目からは縦に長い展開になる。快走を続ける#28古谷は、濡れた路面をものともせず、6周目3.4秒、8周目4.8秒、10周目6.5秒と着実に2位#45大草との差を開いていく。
結局、17周を危なげなく走りきった#28古谷が、2位を11秒以上離す独走で今季3勝目を飾るチェッカーを受け、シリーズチャンピオンを大きく引き寄せた。
マスタークラスは、終盤15周目の1コーナーでドラマが起きた。
トップを走る#4今田信宏(JMS RACING with B-MAX)のインに#96TAKUMI(B-MAX ENGINEERING FRJ)が飛び込むが、両者は接触。#4今田は遅れ、#96TAKUMIがトップでチェッカーを受けたが、1コーナーの行為が危険行為と判定されプラス10秒のペナルティ。
漁夫の利を得た#7畑が、今季2勝目を飾った。
Text:Shigeru KITAMICHI
Photo: Kazuhiro NOINE
SUGOチャンピオンカップレースシリーズ第6戦 -RIJ- (2021/10/09) Final Race Weather:Cloudy Course:Wet
2021 FORMULA REGIONAL JAPANESE CHAMPIONSHIP Round 10 スポーツランドSUGO 3.5865km
Pos | No | Cls | Cls Pos | Driver | Car Team | Lap | Time | Behind | Gap |
1 | 28 | | | 古谷 悠河 | TOM'S YOUTH TOM'S YOUTH | 17 | 25'37.692 | - | - |
2 | 45 | | | 大草 りき | PONOS Racing PONOS Racing | 17 | 25'49.185 | 11.493 | 11.493 |
3 | 77 | | | 澤 龍之介 | D'station F111/3 D'station Racing | 17 | 26'03.685 | 25.993 | 14.500 |
4 | 11 | | | 太田 格之進 | Rn-sports F111/3 Rn-sports | 17 | 26'07.967 | 30.275 | 4.282 |
5 | 8 | | | 三浦 愛 | ARTA F111/3 Team Super License | 17 | 26'11.578 | 33.886 | 3.611 |
6 | 7 | M | 1 | 畑 亨志 | F111/3 Team Super License | 17 | 26'30.125 | 52.433 | 18.547 |
7 | 4 | M | 2 | 今田 信宏 | JMS RACING with B-MAX B-MAX ENGINEERING | 17 | 26'31.616 | 53.924 | 1.491 |
8 | 30 | M | 3 | DRAGON | B-MAX ENGINEERING FRJ B-MAX ENGINEERING | 17 | 26'38.062 | 1'00.370 | 6.446 |
9 | *96 | M | 4 | TAKUMI | B-MAX ENGINEERING FRJ B-MAX ENGINEERING | 17 | 26'39.254 | 1'01.562 | 1.192 |
10 | 39 | M | 5 | 田中 優暉 | ASCLAYIndサクセスES イーグルスポーツ | 17 | 26'54.469 | 1'16.777 | 15.215 |
11 | 34 | M | 6 | 三浦 勝 | CMS F111 C.M.S motor sport's project | 17 | 27'05.155 | 1'27.463 | 10.686 |
12 | 3 | | | 小川 颯太 | Sutekina Racing SUTEKINA RACING TEAM | 16 | 26'10.019 | 1Lap | 1Lap |
13 | 5 | | | 塩津 佑介 | Sutekina Racing SUTEKINA RACING TEAM | 15 | 25'47.397 | 2Laps | 1Lap |
---- 以上規定周回数(90% - 15Lapsx)完走 ---- |
- Fastest Lap: CarNo.8 三浦愛(ARTA F111/3) 1'29.051 (17/17) 144.989km/h
- CarNo.3は、2021 FRJ選手権統一規則書第31条4.2)(スタート手順/3分前提示後の作業)により、協議結果に対して10秒加算のペナルティーを科した。
- CarNo.96は、2021 FRJ選手権統一規則書第16条1.2)(危険なドライブ行為/他社のコースアウトを強いる)による、協議結果に対して10秒加算のペナルティーを科した。
- 第10,11戦総合PP #77澤龍之介(D'stationF111/3)
-
「1回目の予選は、プッシュし続けないとタイヤの温度が下がってしまうので常に前へ、前へという気持ちで走りました。結果として逆転できたという感じです」
「2回目は、大草選手にトップに出られたときは不安で仕方なかったです。最後の1周は集中していきました。最後の最後にタイムが出せて本当に嬉しいです」
「雨は得意意識はなかったのですが、こうして結果が出たので決勝は自信を持って臨みたいと思います」
- 第10戦マスタークラスPP #7畑 享志(F111/3)
-
「無理はしていないんですけど、それなりに走っての結果です。スーパーフォーミュラ・ライツで雨の菅生は経験がありましたので、その慣れはあったのかなと思います」
「予選2回目のクラッシュは一瞬でした。クルマが直れば、仕上がりは良いので、スタートで前に出られればいけると思います」
- 第11戦マスタークラスPP #4今田信宏(JMS RACING with B-MAX)
-
「昨日のドライの専有走行はめちゃくちゃ良かったのでドライでやりたかったですが、雨も苦手意識はありません。どちらかというと好きです」
「1回目は、さぁ行こうというときに赤旗が出てしまいました。2回目の最後はワンラップはベストの走りをしようと思っていきました」
「まだチャンピオンの可能性はあるので、残りレースは4連勝を狙います」
まとめ: Shigeru KITAMICHI
Photo: Kazuhiro NOINE
10月9日、フォーミュラ・リージョナル選手権(FORMULA REGIONAL JAPANESE CHAMPIONSHIP)第11戦の予選が宮城県・スポーツランドSUGOで行われ、第10戦に続いて#77澤龍之介(D'stationF111/3)がポールポジションを獲得した。
マスタークラスは、#4今田信宏(JMS RACING with B-MAX)がクラスポールを獲得した。
第10戦の予選に続いて行われた第11戦の予選は、開始時間が近づくにつれ、小粒の雨ながら雨足がやや強くなってくる。
このため、雨に足をすくわれる選手が続出。度々赤旗で中断される予選となった。
開始早々、クラッシュを演じてしまったのは、シリーズリーダーの#28古谷悠河(TOM'S YOUTH)。「自分のミスだった」とSPコーナーの出口で姿勢を崩しスピン。アウト側のガードレールに激しく接触。サスペンションを痛めてしまった。
これで1回目の中断。
残り12分で再開した予選だったが、ここまでマスタークラスのなかで抜き出たタイムをマークしていた第10戦のクラスポールシッター、#7畑享志(F111/3)が#28古谷と同じような形でクラッシュ。リアウイングを失ってしまった。
これで2回目の中断。
ここまでの順位は、#45大草りき(PONOS Racing)、#77澤、#3小川颯太(Sutekina Racing)がトップ3。マスタークラスは、#7畑、#4今田、#30DRAGON(B-MAX ENGINEERING FRJ)と続く。
残り5分で再開した予選だったが、今度は#3小川がレインボーコーナーでコースアウト。グラベルにハマってしまった。
これで3回目の中断。
そして、残り3分で再開した予選はワンラップアタックとなった。
このチャンスをものにしたのが#77澤。雨の中、集中した走りで中断前に#45大草がマークしていた1分33秒141を僅か1000分の9秒上回り、逆転で連続ポールポジションをものにした。
マスタークラスは、逆転でシリーズチャンピオンを狙う#4今田が、現在のリーダー#39田中優暉(ASCLAYIndサクセスES)を抑えてクラスポールを獲得した。
第11戦の決勝は、本日午後3時40分から25分レースとして行われる。
Text:Shigeru KITAMICHI
Photo: Kazuhiro NOINE
10月9日、フォーミュラ・リージョナル選手権(FORMULA REGIONAL JAPANESE CHAMPIONSHIP)第10戦の予選が宮城県・スポーツランドSUGOで行われ、前回初参戦の富士で優勝を飾った#77澤龍之介(D'stationF111/3)がポールポジションを獲得した。
マスタークラスは、#7畑享志(F111/3)がクラスポールを獲得した。
シリーズも残すところ今回を含め2大会4レースだが、終盤になって若手ドライバーのエントリーが増えてきた。今回は新たにFIA-F4を戦う#11太田格之進(Rn-sportsF111/3)が加わり、もてぎ大会で2勝をあげた#45大草りき(PONOS Racing)も再エントリー。優勝候補となる若手は7人に増えた。
誰が勝ってもおかしくない状態だけに、予選から白熱した戦いが期待された。
未明から降った雨でコースコンディションはウエット。各ドライバーは15分という短い時間のなかで、慎重さを保ちながらも果敢にアタックを続ける。
開始からトップタイムをマークし続けたのは#28古谷悠河(TOM'S YOUTH)。これに#77澤、#8三浦愛(ARTA F111/3)が続く形で進んだ。
#28古谷は少しずつタイムを上げ、1分33秒485まで詰めるが、コースコンディションも回復しつつあった終盤、#77澤が1分32秒519で逆転。#28古谷も1分32秒746で迫るが僅かに届かず。
#77澤が更にタイムアップし1分32秒489をマークしたところで、マスタークラスの#39田中優暉(ASCLAYIndサクセスES)がS字コーナー手前でコースアウト。ストップしてしまったため、赤旗が提示され予選は終了となった。
再逆転を狙っていた#28古谷にとっては、悔しい終わり方となってしまった。
マスタークラスは「ウエットコンディションなので無理をしないよう走った」と言いながらも#7畑がクラスポールを獲得。最後に逆転ポールを狙っていた#4今田信宏(JMS RACING with B-MAX)は赤旗終了に悔しがることしきりだった。
第10戦の決勝は、本日午前11時40分から25分レースとして行われる。
Text:Shigeru KITAMICHI
Photo: Kazuhiro NOINE
SUGOチャンピオンカップレースシリーズ第6戦 -RIJ- (2021/10/09) Qualifying Weather:Rain Course:Wet
2021 FORMULA REGIONAL JAPANESE CHAMPIONSHIP Round 11 スポーツランドSUGO 3.5865km
Pos | № | Cls | Cls Pos | Driver | Car Team | Time | Behind | Gap | km/h |
1 | 77 | | | 澤 龍之介 | D'station F111/3 D'station Racing | 1'33.132 | - | - | 138.635 |
2 | 45 | | | 大草 りき | PONOS Racing PONOS Racing | 1'33.141 | 0.009 | 0.009 | 138.622 |
3 | 3 | | | 小川 颯太 | Sutekina Racing SUTEKINA RACING TEAM | 1'33.665 | 0.533 | 0.524 | 137.847 |
4 | 11 | | | 太田 格之進 | Rn-sports F111/3 Rn-sports | 1'33.995 | 0.863 | 0.330 | 137.363 |
5 | 5 | | | 塩津 佑介 | Sutekina Racing SUTEKINA RACING TEAM | 1'35.350 | 2.218 | 1.355 | 135.411 |
6 | 8 | | | 三浦 愛 | ARTA F111/3 Team Super License | 1'35.437 | 2.305 | 0.087 | 135.287 |
7 | 4 | M | 1 | 今田 信宏 | JMS RACING with B-MAX B-MAX ENGINEERING | 1'37.550 | 4.418 | 2.113 | 132.357 |
8 | 39 | M | 2 | 田中 優暉 | ASCLAYIndサクセスES イーグルスポーツ | 1'39.755 | 6.623 | 2.205 | 129.431 |
9 | 96 | M | 3 | TAKUMI | B-MAX ENGINEERING FRJ B-MAX ENGINEERING | 1'41.428 | 8.296 | 1.673 | 127.296 |
10 | 7 | M | 4 | 畑 亨志 | F111/3 Team Super License | 1'41.492 | 8.360 | 0.064 | 127.216 |
11 | 30 | M | 5 | DRAGON | B-MAX ENGINEERING FRJ B-MAX ENGINEERING | 1'42.350 | 9.218 | 0.858 | 126.149 |
---- 以上基準タイム(110% - 1'42.445)予選通過 ---- |
- | 34 | M | - | 三浦 勝 | CMS F111 C.M.S motor sport's project | 1'43.454 | 10.322 | 1.104 | 124.803 |
- | 28 | | | 古谷 悠河 | TOM'S YOUTH TOM'S YOUTH | no time | - | - | - |
SUGOチャンピオンカップレースシリーズ第6戦 -RIJ- (2021/10/09) Qualifying Weather:Rain Course:Wet
2021 FORMULA REGIONAL JAPANESE CHAMPIONSHIP Round 10 スポーツランドSUGO 3.5865km
Pos | № | Cls | Cls Pos | Driver | Car Team | Time | Behind | Gap | km/h |
1 | 77 | | | 澤 龍之介 | D'station F111/3 D'station Racing | 1'32.489 | - | - | 139.599 |
2 | 28 | | | 古谷 悠河 | TOM'S YOUTH TOM'S YOUTH | 1'32.746 | 0.257 | 0.257 | 139.212 |
3 | 8 | | | 三浦 愛 | ARTA F111/3 Team Super License | 1'32.931 | 0.442 | 0.185 | 138.935 |
4 | 45 | | | 大草 りき | PONOS Racing PONOS Racing | 1'32.943 | 0.454 | 0.012 | 138.917 |
5 | 3 | | | 小川 颯太 | Sutekina Racing SUTEKINA RACING TEAM | 1'34.269 | 1.780 | 1.326 | 136.963 |
6 | 11 | | | 太田 格之進 | Rn-sports F111/3 Rn-sports | 1'34.753 | 2.264 | 0.484 | 136.264 |
7 | 5 | | | 塩津 佑介 | Sutekina Racing SUTEKINA RACING TEAM | 1'35.161 | 2.672 | 0.408 | 135.680 |
8 | 7 | M | 1 | 畑 亨志 | F111/3 Team Super License | 1'36.453 | 3.964 | 1.292 | 133.862 |
9 | 4 | M | 2 | 今田 信宏 | JMS RACING with B-MAX B-MAX ENGINEERING | 1'37.723 | 5.234 | 1.270 | 132.122 |
10 | 39 | M | 3 | 田中 優暉 | ASCLAYIndサクセスES イーグルスポーツ | 1'37.896 | 5.407 | 0.173 | 131.889 |
11 | 30 | M | 4 | DRAGON | B-MAX ENGINEERING FRJ B-MAX ENGINEERING | 1'39.102 | 6.613 | 1.206 | 130.284 |
12 | 96 | M | 5 | TAKUMI | B-MAX ENGINEERING FRJ B-MAX ENGINEERING | 1'40.249 | 7.760 | 1.147 | 128.793 |
13 | 34 | M | 6 | 三浦 勝 | CMS F111 C.M.S motor sport's project | 1'41.505 | 9.016 | 1.256 | 127.200 |
---- 以上基準タイム(110% - 1'41.838)予選通過 ---- |
今週末行われるフォーミュラ・リージョナル・ジャパニーズ選手権(FRJ)、スポーツランドSUGO大会のエントリーが発表された。
前回の富士大会に比べると台数は若干減ったものの、オーバーオールを争う若手が7台と過去最多になった。
メンバーは、スポット参戦ながら第4,6戦もてぎで優勝の大草りき(PONOS Racing)、オーディションを勝ち上がり第9戦富士で優勝を遂げた澤龍之介(D'station Racing)、第8戦富士で2~3位に入った#3小川颯太(Sutekina Racing)と#5塩津佑介(Sutekina Racing)、そして初登場の太田格之進(Rn-sportsF111/3)はマスタークラスの常連、植田のマシンでの参戦だ。
これを迎え撃つシリーズフル参戦組は、第5,7戦を制した古谷悠河(TOM'S YOUTH)と第8戦で初優勝を遂げた三浦愛(ARTA F111/3)だ。シリーズチャンピオンを争う2人、特に逆転チャンピオンを狙う三浦愛にとっては、FIA-F4経験のある若手を抑えての優勝が必要なだけに正念場となる。
マスタークラスも、田中優暉(ASCLAYIndサクセスES)、TAKUMI(B-MAX ENGINEERING FRJ)、三浦勝(CMS F111)によるシリーズ争いがし烈になっており、こちらも目が離せない。
抜きにくい中速コースのスポーツランドSUGOが舞台なだけに、予選から激しい戦いが見られそうだ。
なお、今回は日程が変更になった関係で、10月9日(土)のワンデーレースとなる。
タイムスケジュール
08:00~第10戦予選
08:25~第11戦予選
11:40~第10戦決勝 【Youtubeライブ】
15:40~第11戦決勝 【Youtubeライブ】
エントリー
Driver(Car)/Entrant
#3 小川颯太(Sutekina Racing)/SUTEKINA RACING TEAM
#4M 今田信宏(JMS RACING with B-MAX)/B-MAX ENGINEERING
#5 塩津佑介(Sutekina Racing)/SUTEKINA RACING TEAM
#7M 畑 享志(F111/3)/Super License
#8 三浦 愛(ARTA F111/3)/Super License
#11 太田格之進(Rn-sportsF111/3)/Rn-sports
#28 古谷悠河(TOM'S YOUTH)/TOM'S YOUTH
#30M DRAGON(B-MAX ENGINEERING FRJ)/B-MAX ENGINEERING
#34M 三浦 勝(CMS F111)/CMS motor sports project
#39M 田中優暉(ASCLAYIndサクセスES)/イーグルスポーツ
#45 大草りき(PONOS Racing)/PONOS Racing
#77 澤龍之介(D'station Racing)/D'station Racing
#96M TAKUMI(B-MAX ENGINEERING FRJ)/B-MAX ENGINEERING
※ゼッケン後のMマークはマスタークラス
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Motorsports Forum
目指すチームはトムス
短期間でトップカテゴリーにまで辿り着いたB-MAXレーシングだが、チームづくりはまだ道半ばだ。
二人三脚でチーム運営をする組田と宮田は、口を揃えて「目指すのはトムス」と言う。トムスは別格だと。だから、チームをスタートさせたときから、トムスに追いつけ追い越せを目標にやってきたという。
組田と宮田のタッグは、本田宗一郎と藤澤武夫に似ているかもしれない
組田は、かつてトムスの強さはどこにあるのかをレース関係者に聞いて回ったことがある。そこで見い出した強さの秘訣は、チームスタッフの定着率が高いこと、同じメンバーでやり続けることだった。
そこで、長期間一緒に働ける環境づくりを目指し、ある時からチーム運営のコアな部分は社員で行う路線に切り替え、社員を一人ずつ増やしていった。
チーム発足から11年で確実に目指す形には近づいている。あとは結果だ。
まずは1勝が目標
チームの目標を尋ねると、組田はこう答えた。
「目標は、スーパーフォーミュラでチャンピオンを取り、名実ともに日本一になることです。F3までは達成してきましたので、スーパーフォーミュラでチャンピオンを取るまでは続けたいと思っています」
「ただ、1勝もしていないのにチャンピオンなんて口にするのはおこがましい。まずは1勝です。今シーズンの残り2戦で何とか達成したいと思います」
B-MAXレーシングがまた一歩階段を上がることができるのか、10月17日の第6戦(もてぎ)、10月31日の最終戦(鈴鹿)に注目だ。
情熱を注ぐドライバー育成
B-MAXレーシングは、これまで全日本F3、SFライツで何人ものドライバーをサポートしてきた。
今シーズンSFライツで走る名取鉄平もその一人だ。名取は昨シーズンでホンダの育成枠を外れることになった。ただ、組田は育て方次第で伸びると見て声をかけた。組田は「彼がチャンピオンを獲って、どこかのメーカーに声をかけられたら僕の目標は達成です」と言う。
現在チャンピオン最右翼の名取鉄平(Byoubugaura B-MAX Racing 320)
この組田の取り組みを、何のためにやっているのかと訝しがる関係者もいる。しかし、組田は意に介す様子はまったくない。「これは僕のパッション(情熱)です。それに尽きます」と言い切る。そして、可能であれば、自動車メーカーの育成プログラムにも関わりたいという。
組田のドライバー育成に対する拘りは、自らが若くして経営者になったとき、周りの人たちの助けで成長できた実体験が影響しているように思える。若者の可能性を信じ、手を差し伸べることが、相手と自分の人生において、また社会にとって財産になることを信じている。そして、組田にとってはそれが至上の喜びであり、情熱を注ぐに値することなのだ。
B-MAXへの期待
初回に、B-MAXレーシングは「特異な存在」と書いた。
そう感じるのは、メーカー色の薄いチームであること、外国人ドライバーを積極的に起用すること、海外のチームとジョイントすること、多くのカテゴリーに参戦していることなど、外から見えることだけではない。
それは、オーナーである組田のキャラクターによるところが大きいが、閉鎖的になりがちなレース界にあって、オープンな空気を醸し出しているところからくるものだと思う。これはB-MAXレーシングの大きな魅力である。
ぜひ、新しい風として、レース界、特にスーパーフォーミュラに刺激を与え、たとえ小さくてもファンのために変革を起こしてくれることを期待したい。
最後に、今回ファクトリーにお邪魔をし、組田、宮田両氏には貴重な時間を割いて話を聞かせていただいた。また丁寧な応対をいただいたことに深く感謝を申し上げたい。
(了)
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Katsuhiko KOBAYASHI
Shigeru KITAMICHI
(1)|(2)|(3)|(4)|(5)|(6)|(7)|(8)|(9)|(10)
望むはプロスポーツ化
フォーミュラカーの面白さに魅了され、スーパーFJからSFライツまで数多くのレースに参戦してきた組田のフォーミュラに対する想いは熱い。
スーパーフォーミュラで争うドライバーの凄さを十分に知るからこそ、国内最高峰のフォーミュラカーレースは、純粋にドライバーの戦いであってほしい、プロスポーツであってほしいと強く願っている。
松下信治はエンジンサプライヤー(ホンダ)の意向によって第2戦からの参戦を余儀なくされた
「他のプロスポーツでは、アスリートはスポンサーと対等であるのに比べ、スーパーフォーミュラではドライバーは自動車メーカーのサラリーマンのようになってしまっている」
「このため移籍も限定的で、これはプロスポーツとしての面白さをスポイルしている。トップフォーミュラに乗る選ばれたドライバーは、育成してくれたメーカーに縛られることなく自由に移籍ができるようになってほしい。そう思います」
B-MAXレーシングのファクトリー内には本格的なドライビング・シミュレーターが備えられている
「自動車メーカー、チーム、ドライバー、そしてメディアも、プロスポーツとしてスーパーフォーミュラをどう盛り上げていくのかを、真剣に考え、取り組んでほしい」
「ドライバーの争いだけではなく、技術競争の側面もあって、素晴らしいことをやっているのに、それが一般の人たちに伝わらないのが何とも歯痒いんです」
矢継ぎ早に溢れ出てくるトップフォーミュラへの想い。
この想いが形になるには時間がかかるだろうが「少しずつでも変えていきたい」と組田は言う。そのためには、まずは結果を出し、チームが力をつけることが必要だ。
スーパーフォーミュラは最高の勝負
組田はスーパーフォーミュラとスーパーGTの違いをこう表現する。
「スーパーGTは最高峰の“レース”、スーパーフォーミュラは最高の“勝負”」
勝負師の組田らしい表現だが、言い得て妙である。そして、こう付け加える。
勝負の拠点、ファクトリー内の作業スペースは非常にゆったりとしている
「スーパーGTは、ハンデキャップ制であえて勝ち続けることができないルールになっています。魅せるレースとして大成功だと思います。重くなったり(燃料の流量を)絞られたり、そういう中で速く走らせる技術というのは本当に凄い。ただ、フォーカスされるのはドライバーよりもクルマです」
「一方、スーパーフォーミュラはドライバーの勝負です。今年でいえば野尻選手はずば抜けて速い。あの速さは手が付けられない。野尻は速い。もうそれに尽きます。クルマが速いとは誰も言いません」
→
(10)に続く
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Katsuhiko KOBAYASHI
Shigeru KITAMICHI
(1)|(2)|(3)|(4)|(5)|(6)|(7)|(8)|(9)|(10)
スーパーフォーミュラへの参戦
B-MAXレーシングとして参戦するようになった2014年からの3年間は、全日本F3では名門トムスを脅かす存在になり、スーパーGT(GT300クラス)でもコンスタントにシリーズ上位に名を連ねるようになった。
組田自身も“DRAGON”として全日本F3(Nクラス)にステップアップを果たし、毎年順調に戦績を積み重ねていた。
しかし、チームの戦績や経営が安定し始めると、組田のなかでトップフォーミュラへの想いが募っていく。その想いは日に日に膨らんでいき、ついに2017年から念願のスーパーフォーミュラへ打って出ることを決断する。
参戦初年度は小暮卓史を起用して戦ったが最高位は12位、ノーポイントに終わった
組田は自分の性格を「慎重な部分と無謀な部分が同居している」と分析する。そして、「レースに関しては無謀な部分が出る」とも。
これまでも「結果は後で考えよう、とりあえずやってしまえという感じでした」。その典型がスーパーフォーミュラへのチャレンジだった。
この参戦をきっかけに、組田はB-MAXレーシングを会社組織として独立させるが、その社長に就くことになった宮田は当時のことをこう振り返る。
「組田さんから何の相談もなく(スーパーフォーミュラを)やるから、と言われました(笑)。僕はお金がとんでもなくかかりますからやめた方がいい。F3とは桁が違いますよと言いました」
これまで何かにつけて宮田に相談をしてきた組田だったが、トップフォーミュラへの想いは強く、その決断が揺らぐことはなかった。ここからのチームの苦労は想像に難くない。
新興チームの苦悩
他チームには、監督にタレント性、スター性があり、スポンサーを比較的集めやすいチームもある。しかし、B-MAXレーシングにはスター監督もいなければ、ネームバリューもない。このため、チーム運営はミドルフォーミュラに参戦するジェントルマンドライバーからの運営受託、屏風浦工業からのスポンサード、ドライバーの持ち込みスポンサーフィーなどが活動資金の中心になる。
ドライバーの選定にあたっても、いわゆるメーカー系チームではないB-MAXレーシングは、トヨタ、ホンダ系の有力若手ドライバーを乗せることは叶わない。必然的にその選択肢は限られ、勝てる可能性のある外国人ドライバーを乗せることになる。
2019年は海外チーム、motoparkとのジョイントでルーカス・アウアー(Red Bull SF19)を走らせ第3戦で初表彰台
しかし、コロナ禍の2020年は外国人ドライバーの来日がままならず、苦しいシーズンを過ごすことになった。
満を持して、昨年終盤好走を見せた松下信治を起用してフル参戦しようとした今シーズンも、スーパーGTで日産車に乗る松下がドライブすることに、エンジンサプライヤーのホンダが難色を示し、出鼻をくじかれてしまった。メーカーの支援を受けないチームの苦労は絶えない。
本山監督の起用
それでも、組田は勝つためにあらゆる手を尽くす。1998年、2001年、2003年、2005年とトップフォーミュラで4度のチャンピオンを獲得し、勝ち方を知る本山哲を監督に招聘したのもそのひとつだ。
「本山さんのレースに対する熱量は凄くて、勝つための厳しさも持っています。チームは厳しさのなかでしか急成長できないと思っています。だから、弱小チームですが来てくれませんかとお願いしたんです」と組田。
現役時代はずば抜けた強さを誇った本山哲を監督に迎えたことも結果に結びついている
ここまで読んだ方にはお分かりだろうが、組田が見込んで起用した人材は必ずチームに貢献し、結果をもたらす。
2019年ルーカス・アウアーとハリソン・ニューウェイが表彰台を獲得し、2020年はシリーズ終盤からドライブした松下が最終戦で表彰台に登った。今シーズンも出遅れは響いたが、第3戦オートポリスで3位、第4戦SUGOで4位、第5戦もてぎで3位と、安定したリザルトを残し、チームは確実に力をつけてきている。
もちろん、監督だけの力ではないが、チームをまとめ上げ、結果に繋げるうえで監督の果たす役割は大きい。
松下というポテンシャルの高いドライバーを得たことで、チームが目指す「まずは1勝」もそう遠くないところまできている。
→
(9)に続く
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Katsuhiko KOBAYASHI
Motorsports Forum
(1)|(2)|(3)|(4)|(5)|(6)|(7)|(8)|(9)|(10)
初年度でF3チャンピオンを獲得
2011年、関口を擁して臨んだ全日本F3選手権で、第3戦からの参戦にもかかわらず、関口は6勝を上げいきなりチャンピオンに輝く。関口のドライバーとしての才能が花開くとともに、宮田のエンジニアとしての能力が参戦初年度にして実証されたのである。
2011年9月、関口雄飛(B-MAX F308)がチャンピオンを決めたレースのスタートシーン
翌2012年は山内英輝、2013年は千代勝正を起用し、シリーズ3位を獲得したB-MAXエンジニアリングは、その実績をもって、ニスモに全日本F3におけるNDDP(ニッサン・ドライバー・デベロップメント・プログラム)を任せてほしいと申し出る。
当時、トヨタやホンダのように独自のドライバー育成システムを持たなかった日産は、全日本F3(Nクラス)とスーパーGT(GT300クラス)で、NDDPとして育成プログラムを展開していた。
その交渉が進むなかで、ニスモ側から思わぬ提案がなされた。全日本F3のNDDPを任せるので、セットでスーパーGTもやらないかというものだった。
スーパーGTへの参戦
フォーミュラに傾倒していた組田は、スーパーGTにはあまり興味がなかった。しかし、全幅の信頼を置いていた宮田が「日本でレースをやる以上、スーパーGTは絶対やるべきだ。チャンスがあるならやった方がいい」と助言し、スーパーGTにおいてもNDDPとのジョイントが決まった。
B-MAXレーシングが最初に手掛けたスーパーGTマシン B-MAX NDDP GT-R(星野一樹/ルーカス・オルドネス)
これを機に、B-MAXレーシングチームに改称し、2014年から全日本F3では「B-MAX Racing Team with NDDP」として、スーパーGTではエンラント名こそ「NDDP RACING」のままであったが、3号車のメンテナンスと開発を請け負うことになったのである。
こうして、また一歩階段を登ることになったB-MAXレーシングは、2017年から自チームでスーパーフォーミュラへの参戦を開始し、2018年からはスーパーGTでGT500クラスのGT-Rを任されることになる。
工場の片隅でスーパFJ2台から始まった弱小チームは、僅か8年という短期間で国内トップチームの仲間入りを果たすことになるのである。
→
(8)に続く
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Katsuhiko KOBAYASHI
Motorsports Forum
(1)|(2)|(3)|(4)|(5)|(6)|(7)|(8)|(9)|(10)
急きょ決まったF3参戦
関口のF4での雨中の激走を見ていた人がいた。名門チーム、トムスの監督、関谷正徳である。関谷は関口の走りに光るものを感じ、B-MAXエンジニアリングで全日本F3選手権に参戦することを提案する。提案にはトムスで空いているマシンをレンタルすることも付け加えられた。
2011年全日本F3第3戦、関口雄飛(B-MAX ENGINEERING)は復帰レースで初優勝を飾る
これはF3に戻りたかった関口にとっては願ってもない提案だったが、B-MAXエンジニアリングにとっては戸惑いもあった。従業員が2人しかいないのにF3なんてできるのだろうか。不安になった組田はメカニックに尋ねた。するとメカニックは「F3をやるのが夢だった。せひやりたい」と言った。
B-MAXエンジニアリングにとって大きな賭けとなる挑戦が決まった瞬間だった。
宮田雅史エンジニアとの出会い
F3参戦は決めたものの、やはり経験のあるエンジニアがいないと話にならない。そこで、白羽の矢を立てたのが、現在B-MAXレーシングの社長を務める宮田雅史である。
宮田を組田に紹介したのは関口であるが、この必要なタイミングで最良の人物と巡り逢う強運は、組田が生来持ち合わせているものかもしれない。
組田の右腕としてB-MAXレーシングを取り仕切る宮田
当時、宮田はスーパーGTにランボルギーニで参戦していたJLOCチームのエンジニアを務めていた。国内ではあまり知られた存在ではなかったが、ルマン商会(現在のチームルマン)を経て、単身ヨーロッパに渡り、ルマン24時間レースに参戦したチーム郷、マクラーレン、アウディスポーツなどを渡り歩いた経歴を持つ隠れた逸材だったのだ。
「宮田との出会いは僕にとって非常に大きかった。彼の優秀さはすぐに分かりました。B-MAXをレーシングチームとして発展させるには手放してはいけない人材だと思いました」と組田の評価は高く、その後6年間、宮田はB-MAXエンジニアリングの専属エンジニアを務めることになる。
6年後の2017年、組田はB-MAXレーシングを別会社として立ち上げることになるが、その社長に宮田を就任させ、そこから本格的に、組田と宮田による二人三脚のチーム運営が始まるのである。
→
(7)に続く
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Motorsports Forum
Shigeru KITAMICHI
(1)|(2)|(3)|(4)|(5)|(6)|(7)|(8)|(9)|(10)
オリジナルF4マシンの開発
2010年からF4にも進出したB-MAXエンジニアリングは、すでに入門用フォーミュラマシンのノウハウも蓄積していたため、コンストラクターとしても名乗りを上げることになる。
当時のF4は、日本自動車工業会(JMIA)が開発した共通のカーボンモノコックを使っており、いくつかのコンストラクターがマシン製作を行っていた。
RK-01は現在もJAF-F4において活躍中だ。画像は2016年西日本シリーズの澤田真治(B-MAX・RK01・TODA)
B-MAXエンジニアリングも、屏風浦工業と取引きのあった東京R&DのF4マシンをベースに、オリジナルF4マシン「B-MAX RK-01」を造り上げた。RKは組田龍司のイニシャルである。
そして、このマシンのデビューを演出したのが、今や押しも押されぬトップドライバーの関口雄飛である。
鮮烈のデビューウィン
2011年4月、東日本大震災の影響で開幕戦がキャンセルになったF4東日本シリーズの実質の開幕戦、第2戦が富士スピードウェイで開催された。ここにシェイクダウン間もないRK-01が登場し、関口雄飛のドライブにより雨の予選、ドライの決勝ともに圧倒的な速さを見せデビューウィンを飾ったのだ。
この勝利はマシン性能もさることながら、関口の力によるところが大きかったのは言うまでもない。
2011年若き日の関口雄飛(23歳)
関口はこの頃、2008年の海外挑戦を資金的な都合で断念し、帰国後参戦した全日本F3でもシートを失っていた。そこでスーパーFJでコーチを務めていた繋がりで、自らRK-01の開発ドライバーを志願しての参戦だった。
実は、関口を組田に引き合わせたのは、B-MAXエンジニアリングでスーパーFJに乗り、レーシングカート時代から関口を良く知るジェントルマンドライバー吉田基良だった。この縁がなければ、今のトップカテゴリーに参戦するB-MAXレーシングはなかったはずである。
「関口はその頃からちょっとアウトローな感じでした。僕はそういう選手が好きなんです。ちょっと跳ねっ返りぐらいの方が面白いじゃないですか」と組田は当時を思い出しながら目を細める。自身もそうだったから惹かれるのかもしれない。
このF4での勝利が、B-MAXエンジニアリングと関口にとって思いがけない飛躍をもたらすことになるのである。
→
(6)に続く
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Motorsports Forum
Yoshinori OHNISHI
(1)|(2)|(3)|(4)|(5)|(6)|(7)|(8)|(9)|(10)
勝負師・組田の決断
話は遡るが、2006年からポルシェカレラカップに出場した組田は、3年間の参戦のなかで釈然としない思いを抱いていた。
それは、組田の勝負師たる性格、実業家としての経験に大いに起因するのだが、一つは、イコールコンディションと言われるレースでもマシンの差が大きく、速いチームで走らないと結果はついてこないということ、もう一つは、コスト面が明朗会計ではなく、投資額が速さに繋がっているのか曖昧であることだった。これにはどうしても納得できなかった。
B-MAXエンジニアリングのファクトリーにて
「勝負師」と書いたが、組田は勝負事は好きだがギャンブルは一切やらない。生きた金の使い方をすることに拘るのである。
「これは自分で納得できるよう、自らやる方がいい」。そう思った組田は、早速行動を起こす。本業がリーマンショックでダメージを受ける最中ではあったが、知り合いのメカニックを誘って、2010年にB-MAXエンジニアリングを立ち上げる。
工場の片隅からのスタート
ネーミングの由来は、屏風浦の「B」、一番になりたいという思い、常に全開という意味の「MAX」を組み合わせたものだ。
メンテナンスするのは、組田と、知り合いのスーパーFJが2台、従業員は1人という小さな所帯だったが、クルマをいかに速く走らせるかは本業にも役立つと考え、屏風浦工業のレース事業部としてスタートさせた。
現在、B-MAXエンジニアリングでは、SFライツ5台、FRJ4台、FIA-F4,3台ものフォーミュラを整備している
現在は、トップカテゴリーに参戦するB-MAXレーシングと、ミドルフォーミュラを中心にメンテナンスをするB-MAXエンジニアリングに分かれており、規模も比較にならないほど拡大しているが、チームは11年前に工場の片隅から始まったのである。
→
(5)に続く
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Shigeru KITAMICHI
(1)|(2)|(3)|(4)|(5)|(6)|(7)|(8)|(9)|(10)
念願のレース出場へ
社業で忙殺される毎日だったが、組田の唯一の趣味であるクルマやレースを忘れることはなかった。この間もサーキット走行会やレース観戦に出かけていた。
そして、会社を軌道に乗せた組田が37歳になった頃、親しくしていた、レースやチューニングカーの世界では知らぬ者はいないRE雨宮の社長から「レースをやりたいなら無理してでもやりなよ、やらないと後悔するよ」という一言をかけられる。この言葉が眠っていたレース参戦への想いを呼び覚ますことになる。
2004年ポッカ1000km PROMODET JUジャナイトポルシェ993(組田龍司/清水隆広/吉田泉)
2004年、知り合いのチューニングショップのポルシェ993で、まだスーパーGT選手権に組み込まれる前の「インターナショナル・ポッカ1000kmレース」に参戦。念願のレースデビューを果たすことになる。組田がレース参戦を志してから実に15年の時が流れていた。
翌2005年も同レースにRX-7で参戦する。この年、組田は現在使用するドライバーネーム“DRAGON”に通じる“ドラゴン・クミタ”の名前で出場している。
その後、2006年から3年間、ポルシェカップに出場する。ただ、あくまでも自分の手の届く範囲での参戦で、リセールバリューのあるポルシェなら、一番お金がかからないと判断してのことだった。
フォーミュラに魅了される
念願のレース参戦を果たし公私ともに充実した日々を送っていた組田だったが、順調だった会社経営にピンチが訪れる。2008年の終わりに世界を揺るがしたリーマンショックである。組田も会社のことを考え、一旦はレースの継続を断念しようと考えた。
しかし、長年の夢であったレースをどうしても諦めることができず、一番お金のかからないカテゴリーを探すなかでスーパーFJと出会う。後に組田がのめり込むフォーミュラカーの扉を開けた瞬間だった。
ここからの組田は、フォーミュラの魅力にハマっていく。
組田はフォーミュラカーを操るためにトレーニングを欠かさない
2009年から4年間は、全国で行われていたスーパーFJの地方シリーズに挑戦し、JAF-F4にもスポット参戦をする。ここでフォーミュラカードライビングの基礎を学んだ組田は、2013年、全日本F3選手権(Nクラス)にステップアップ。5年目には念願のNクラスチャンピオンを獲得する。
目標だったマカオGPに参戦
このチャンピオン獲得により実現したのが、当時組田が目標としていたマカオGP参戦だ。2017年の参加ドライバー中最高齢の49歳ではあったが、組田は年齢を感じさせない果敢な走りを見せた。しかし、世界屈指の難コースはそう簡単に攻略できるはずもなく、予選でクラッシュを演じるという洗礼を受けた。
翌年もマカオGPに参加が許された組田は、手堅く完走狙いに切り替え、見事18位というリザルトを残した。「人生で最も記憶に残る出来事。できることならもう一度チャレンジしたい」と、組田のマカオGPに対する想いは強い。
原動力はフォーミュラ愛
組田は、2018年からは全日本F3選手権のオーバーオールクラス、2020年からは新設されたSFライツとFRJに参戦し、マスタークラスのトップコンテンダーとしての地位を確実なものにしてきた。それは54歳の今も現在進行形である。
「フォーミュラに乗り始めたらもうハコ(ツーリングカー)には興味がなくなり、とにかくフォーミュラに乗りたくて、アマチュアが乗れる一番上のF3までまで行ったという感じです」と笑う組田だが、参戦を継続するための努力も怠らない。
多忙ななかにあっても、週5日、毎日2時間のトレーニングは欠かさないという。54歳にして体脂肪率は驚異の1桁である。
もし、サーキットで組田を見かけたら、こっそり観察してみることをお勧めする。その体躯はとても50代のものとは思えないほどである。
とにかく、この組田のフォーミュラ愛こそが、B-MAXレーシングの大きな原動力であることは間違いない。
さて、オーナー組田の考え方などはこの後も度々登場するが、組田が何者かはここで一区切りにして、いよいよ次回はB-MAXレーシングの誕生に迫っていこう。
→
(4)に続く
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Katsuhiko KOBAYASHI
Motorsports Forum
(1)|(2)|(3)|(4)|(5)|(6)|(7)|(8)|(9)|(10)
クルマとバイクに明け暮れた青春時代
組田龍司(以下、組田)は1967年、神奈川県横浜市で生まれた。育ちも横浜の生粋の浜っ子である。
この時代の若者には珍しくはないが、クルマとバイクをこよなく愛し、愛車を改造しては峠を走り、それを生き甲斐として日々暮らしていた。
走り屋なら誰もが抱くレースへの憧れも持ち続けてはいたものの、具体的な行動を起こしたのは、自動車メーカーに勤める社会人として、それなりの収入を得られるようになった22歳の頃。意外に遅かった。
昔の思い出を語るB-MAXレーシング/エンジニアリングの組田龍司代表
地元横浜でレースに参戦しているショップへ行き、レースに出るにはどのくらいの費用が必要なのかと尋ねた。当時、富士フレッシュマンレースにS13型のシルビアクラスが新設され、それに出場することを考えていた。
ところが、ショップから提示された額は「当時の給料では到底支払えるものではなかった」と、ここで膨らんでいたレース参戦の夢はあえなく萎んでしまう。借金をしてまでやることは考えず、俺には無理だとあっさり諦めてしまった。今ならレーシングカートから始めるのかもしれないが、当時の組田はその存在すら知らなかった。
遅咲きの組田は今や日本のジェントルドライバーの代表格だ
屏風浦工業の若き社長へ
時をほぼ同じくして、組田の父が創業した屏風浦(びょうぶがうら)工業にピンチが訪れる。父が癌を患い余命宣告されてしまったのだ。会社の経営に携わっていた父のブレーンからは後を継いでほしいと懇願され、組田は弱冠22歳にして経営のトップに就くことになる。
ちなみに屏風浦工業というやや古風に思える社名は、創業の地、横浜市磯子区の地名である。主な業務は、自動車メーカーが開発する新型車両(試作車)の部品製造である。
【屏風浦工業ホームページ】(リンク)
B-MAXレーシングのトランスポーターにも屏風浦工業のロゴが入っている
そこからの苦労は筆舌に尽くしがたいものだったようだ。中小企業は社長個人の信用、人脈で成り立っているものだということを思い知らされたという。もちろんレースに費やす時間はなく、社業に専念することになる。
「20代前半から30代半ばまでの経験は、ものすごく辛かったですが良い経験でした」と組田が語るように、そこで培われた反骨心とビジネスセンスは現在のレーシングチーム運営でも大いに発揮されている。
社長就任当時から組田にはぶれない思いがある。それは会社に世襲制は持ち込まないということだ。当時、自身が何の苦労もせずに会社を継いだことに後ろめたさがあったという。「一生懸命やっても上に上がれないのではやる気を失う。誰にもチャンスはあるようにしたい」と、今は日々社員を鼓舞し、その中から優秀な人が出ることを願っている。
この誰にもチャンスを与え、育てるという考え方も、レーシングチームの運営に生きている。
→
(3)に続く
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Motorsports Forum
Shigeru KITAMICHI
(1)|(2)|(3)|(4)|(5)|(6)|(7)|(8)|(9)|(10)
いま、国内レースで気になるチームはどこかと尋ねたら、B-MAXレーシングチーム(以下、B-MAXレーシング)と答えるレースファンは多いのではないだろうか。
スーパーフォーミュラ、スーパーGT(GT500クラス)の2大トップカテゴリーに、ここ4、5年の間に相次いで参戦を開始しただけでなく、参戦を継続しているスーパーフォーミュラ・ライツ(SFライツ)、昨年からスタートしたフォーミュラ・リージョナル・ジャパニーズ(FRJ)など、実に多くのカテゴリーでB-MAXのロゴを目にするようになってきた。
2021年のスーパーフォーミュラを戦う松下信治(BYOUBUGAURA B-MAX SF19)
スーパーフォーミュラでは、トヨタ、ホンダ系と言われるチームの多いなか、メーカー色の薄いチームとして活動し、外国人ドライバーを積極的に起用したり、海外のチームとジョイントしたりするなど、やや特異な存在としてシリーズに刺激を与えている。
今シーズン、スーパーGTにおいてGT-Rに乗る松下信治選手のスーパーフォーミュラへの起用を巡って、紆余曲折の末に第2戦から参戦にこぎ着けたことは記憶に新しい。
2021年のスーパーGTを戦うCRAFTSPORTS MOTUL GT-R(平手晃平/千代勝正)
また、チーム代表の組田龍司氏が現役のレーシングドライバーとして、SFライツ、FRJ、FIA-F4などに積極的に参戦していることも、他のチームには見られないユニークな点だ。
B-MAXレーシングはどのように生まれ、発展してきたのか、オーナーの組田龍司氏とは何者なのか、多くのレースファンが抱いている疑問を解くために、B-MAXのファクトリーに突撃取材を試みた。
まずはB-MAXレーシングのオーナー組田龍司氏とは何者なのかから紐解いていこう。
(文中敬称は略させていただきます)
→
(2)に続く
Text: Shigeru KITAMICHI
Photo: Katsuhiko KOBAYASHI
(1)|(2)|(3)|(4)|(5)|(6)|(7)|(8)|(9)|(10)