2008スーパーGT最終戦、「富士GT300㎞レース」の決勝は、終始天候に翻弄される難しい展開となった。そんな中、
スリックタイヤでスタートという作戦を見事的中させた#12カルソニックIMPUL GT-R(松田次生/セバスチャン・
フィリップ組)が今季2勝目をものにした。
これにより、10位フィニッシュを果たした#23XANAVI NISMO GT-R(本山哲/ブノワ・
トレルイエ組)が2008シリーズチャンピオンを獲得、GT-Rは参戦初年度で見事GT500の頂点に立った。
GT300クラスは序盤の混戦を制した#26ユンケルパワータイサンポルシェ(谷口信輝/ドミニクファーンバッハー組)が後続を30秒近く突き放す大差で逃げ切り、
今季初勝利を上げた。
タイトルの行方は、ポイントリーダーの#43ARTA Garaiya(新田守男/高木真一組)が9位に終わったため、
ファイナルラップで6位に上がった#46MOLAレオパレスZ(星野一樹/安田裕信組)が逆転で王座を手にした。
(天候:小雨 コース:ドライ>ウェット 観客動員数:47,100人)
第9戦決勝は午後2時丁度にフォーメーション開始。天候を考慮してタイヤに充分な熱を入れるため、2周のローリングの後スタートした。
スタート進行が始まると同時に小雨が再び降り始め、路面を濡らしたため、上位陣は殆どが浅溝タイヤに履き替えてレースに臨むこととなったが、
#12カルソニックGT-Rと#39デンソーサードSC430の2台だけはスリックタイヤを選択。
結果的にこのときの判断がレース結果を左右することになった。
ホールショットを決めたのはポールポジションの#17リアルNSX。#1ARTA NSXが2番手に上がるが、
#24ウッドワンGT-Rがすかさず100Rでアウトから並びかけ、ヘアピン立ち上がりで2番手を奪い返した。
しかしこうしたバトルが繰り広げられる中、路面はどんどん乾いていく。
このため、2周終わりで#22モチュールGT-Rがピットに飛び込み、スリックタイヤに履き替えたのを皮切りに、
各車相次いで予定外のタイヤ交換をするためにピットに殺到していく。
結局6周終わりで#36ペトロナスSCと#100レイブリックNSXがタイヤ交換を済ませ、全車がスリックとなったときには、
39号車がトップ、12号車が2位に上り詰めていた。
12号車のスタートドライバーは松田次生。39号車はアンドレ・クートだ。
松田は11周過ぎからペースの上がらなくなったクートを次第に追い詰め、
一時は7秒以上有った差をわずか5周でコンマ4秒まで縮めてみせる。
そしてクートが1コーナーでオーバーランを喫した18周目、遂に松田がトップを奪い取った。
このトップ交代劇と相前後して、各車のラップタイムが一気に落ち始める。
雨の影響で再び路面がスリッピーになってきたようだ。
このコンディション変化に足元を掬われたのがニスモの2台だ。
23号車は22周終わり、22号車は23周終わりに相次いで早めのピットストップを済ませ、
スリックからスリックへのタイヤ交換を済ませていたのだが、
この直後から雨が強くなってきたために再びウェットタイヤへの交換を余儀なくされてしまう。
これでタイトル争いのかかった23号車は一気にポイント圏外へ後退してしまった。
トップの12号車はスリックタイヤのまま32周目まで引っ張ってピットイン。ウェットタイヤに交換してセバスチャン・
フィリップをコースに送り出した。
この時点で、2位を走行していた#35宝山SCとは実に45秒の大差がついていた。
フィリップはその後も路面変化に対応して安定したラップを刻み、
無事66周を走りきって第6戦鈴鹿1000kmに続く今季2勝目を挙げて有終の美を飾った。
2位には15番手スタートから着々と順位を上げてきた#38ZENTセルモSC(立川祐路/リチャード・ライアン組)が入った。
38号車は優勝すれば逆転タイトルの可能性があり、立川は懸命にフィリップを追い上げたが、結局12秒270及ばなかった。
これにより、一旦はポイント圏外に落ちながら、 本山がしぶとく順位を挽回して9位でこのレースを終えたザナヴィGT-Rが2008年のGT500クラスチャンピオンを獲得した。
GT300クラスは、序盤から#77クスコスパルインプレッサ、#33ハンコックポルシェ、#19ウェッズスポーツIS350、 #26ユンケルパワータイサンポルシェの4台が序盤から激しい鍔迫り合いを展開、インターミディエイトでスタートした77号車カルロ・ ヴァン・ダム、33号車影山正美の2台をスリックでスタートした19号車織戸学、26号車谷口が捉え、 3周を終えてウェッズスポーツISがトップに立った。
しかしソフトコンパウンドでスタートした織戸に対し、ミディアムの谷口はタイヤが温まるのを待って18周目に織戸を捉え、
トップに躍り出ると、そのまま一気に差を広げにかかり、22周終わりには早くもその差を7秒以上とした。
谷口はその後も2位との差を広げ続けて30周終わりでピットイン、久々のGTドライブとなるドミニク・
ファーンバッハーにステアリングを託すと、ファーンバッハーも後続にまったく付け入る隙を与えず、
最後は2位に29.871秒もの大差をつけて今季初勝利を挙げた。
一方、ファイナルラップまでもつれにもつれたのがGT300のタイトル争いだった。
#43ガライヤ75ポイント、#46モーラZ73ポイントで迎えた最終戦、何位でフィニッシュしようと逆転の可能性は常にある、
一時も目が離せない状況の中、スリックタイヤでスタートした46号車は接触から1周目のコカコーラコーナーで痛恨のコースオフ。
一気に下位に後退する。
それでもスタートドライバーの星野は諦めずに追い上げ、13周目のヘアピンでライバルの43号車を捕らえて11位に浮上、
更にポイント圏内を目指して攻めに攻める。
ところが17周目のダンロップコーナーで46号車は33号車と接触、そこへ43号車も突っ込み、3台はコース上にストップしてしまう。
いずれもレースには復帰したものの、43号車はフロントカウルを破損、33号車はトラブルから最終コーナーで再びクルマを止め、
46号車も大きく順位を落とした。
2台は雨脚の強まった29周終わりで同時にピットストップを済ませると、再びハイペースで周回を重ねて徐々に順位を上げていく。
星野からステアリングを託された安田は再び43号車の高木を捉え、その後も着実に順位を上げ、7位でファイナルラップを迎えた。
対する43号車はこの時点で9位。このままレースがフィニッシュすれば同じ77ポイントながら勝利回数の差でガライヤが王座につく。
ところが6位を走っていた#81ダイシンZがファイナルラップで大きくペースを落としたため、
最後の最後にこれを抜き去った46号車が6位でフィニッシュ。
これで獲得ポイントを78に伸ばすこととなり、2008年GT300チャンピオンは#46モーラZのものとなった。
スーパーGTの2009年開幕戦は3月22日決勝。
舞台は岡山国際サーキットだ。
Text: Kazuhisa SUEHIRO / Photo: Keiichiro TAKESHITA