全日本GT選手権

GTインサイドレポート Rd.5/8

                  ALL JAPAN GRAND TOURING CAR CHAMPIONSHIP
                     1997  GT INSIDE REPORT
  Round 5 CP MINE GT RACE                                      5 Oct. '97
   Inside Report Special          インサイドレポート 特集       FMOTOR4版
 -------------------------------------------------------------------------
'97GTC第5戦 CP MINE GTレース
GTインサイドレポート・スペシャル

◎GT500クラス・エントラントにきく 1
現状のGTCをどう考えているか、今後はどういう方向に向かうべきと考えているか、
レギュレーションについてを中心に、各チームの代表に話を聞いた。(順不同)
なお、GT-A事務局の考えは、前回富士で聞いたGT300クラス・エントラントの意見
に対するものも含め、次戦の菅生でレポートする予定。

No.3 ユニシアジェックススカイライン 長谷見昌弘代表
「現状では、レギュレーションがスープラに有利なように働いている。昨年もスト
レートは速かったが足回りが煮詰まっていなかったので目立たなかった。今年は
コーナーも速くなり、速さが目立つようになった。NSXも速い。コーナーのスピード
が圧倒的に速く、安定しているからアクセルを開けるポイントも早い。そうすると
直線でも(ターボ車に)ついていけちゃう。で、ブレーキングポイントが違うから、
突っ込みで前に出られる。来年、ホンダが力を注いできたら、もっと速くなるだろ
う。そうなったら、もうどうしようもないよ。こうした現状を考えると、一番いい
のはスープラの重量は1200kgに揃え、ミッドシップは50kg重くすることだと思う。
 GT500より上のクラスを作ることはありえないでしょう。GT700なんて、誰が言っ
てるのか知らないけど、そんな存在もしない言葉は使わないでください。不愉快で
す。だって、それはGT500を潰すことでしょう? GT500がなくなっていいんですか?
 そもそもGTCは、できるだけおカネをかけずにやろうというのが始まり。バブルが
はじけても一生懸命レースをやってきた人がいるから続いている。今は台数も増え
ていい状況になってきているのに、1億円もするクルマでやったら、それに反する。
Cカーの二の舞になっちゃうよ。毎回いろんなクルマが勝ったり負けたりするような
状況をいかに保つかが大事。ウェイトが勝敗を左右するようなレギュレーションに
すべきだと思う。できれば、毎回、メーカーのしがらみなどがない人が高いところ
から見ていて、『あのクルマは直線が速すぎるから次回からリストリクターを絞ろ
う』とか、『コーナーが速いから重くしよう』とか、そのくらいのレスポンスでや
るのがいい」

No.38 カストロール・セルモ・スープラ 佐藤正幸代表
「現状のレギュレーションに大きな問題はないと思う。ムリにイコールコンディショ
ンに揃えようとすると、抜きつ抜かれつがなくなって、1列縦隊のレースになってし
まう。それを考えれば現状は、まあやむをえないのではないか。ただ、できること
なら、ウェイトを全体に軽くしたほうがいいと思う。いくら日本独自のレースといっ
ても、ヨーロッパやアメリカからも参加しやすくしたほうがマシンもバラエティに
富んでくる。マクラーレンだって1200kgという重量がイヤでやめたようだし、あま
りネガティブな方向にいっちゃうとレースのグレードが下がってしまうよ。軽くす
るにはおカネがかかるっていったって、やってみたわけじゃないでしょ? まずは
軽くする努力をしてみるべきだよ。GT500より上のクラスを作るというのは、台数が
10台以上そろうのならともかく、1台か2台おまけみたいに走るんじゃしょうがない。
お客さんの側に立っていうと、朝早くから来てくれるお客さんに対して、レースと
レースの間隔が開きすぎている。イベントをやるとか、もっと退屈させないような
ことを考えるべきだと思う。これはGTに限らず日本のレース全部にいえることだけ
ど、サーキットもオーガナイザーも、見せかたということをもっと考えていかない
と。パドックももっときれいに見せられるようにして、見る側からあこがれられる
存在になっていかないといけないと思う」

No.34 STPタイサンアドバンバイパー 千葉泰常代表
「現状としては、昨年のレギュレーション改訂で車両重量を1200kgで合わせる方向
であったのに、排気量2リッター以下は1150kgという特例が認められていることは
おかしいと思います。少なくとも重量に関しては1200kgで統一すべきでしょう。ま
たリストリクター径に関しても、NA3.5リッター以下車の特例がありますが、これは
たとえば2バルブ車の特例などに比べ、有利すぎるような気がします。来季に向け、
このあたりの見直しは必要だと思います。それ以外では、とくに大きな不満はない
ですね。現状で十分コンペティティブですし。ただ来季、たとえばポルシェGT1のよ
うなクルマを日本で走らせるということには反対です。JGTCのレギュレーションに
合わせたとしても、やはりもともとのポテンシャルが違いますから。あれは違う世
界のクルマなんですよ。もしあのクルマが出るとなると、国産メーカーもR390GT1の
ようなクルマを出さざるをえなくなるでしょう。それはこのシリーズの破綻を招く
ことに繋がるでしょうから、なんらかの規制を行う必要があると思います」

No.30 綜合警備PORSCHE 坂田智和監督
「現状はやはりプライベーターには非常に厳しいですね。ポルシェGT2は、昨年まで
はまだ直線だけは速かったですけど、今はポルシェを使うメリットはなにもないに
等しいです。ですから我々としては、来季に向け、レギュレーションを原点に戻す
方向がありがたいですね。つまり全車パワーダウンして車両重量を軽くしてもらう
のが理想です。だったらGT300に出ればいいじゃないかという意見もあるでしょう
が、対スポンサーを考えると、それも難しいですし…。たとえばポルシェGT1を持っ
てくるようなことも手としてはあるでしょうが、価格的なものを考えれば現実的じゃ
ないですし、もし持ってきたとしてもウェイトをバンバン積んだのでは勝負になら
ないでしょう」

No.510 RH CERUMO SUPRA ポール・ベルモンド氏
(昨年ヨーロッパのBPRシリーズに参戦。日欧の2つのGTシリーズにフルエントリー
 の経験を持つGTCでは唯一のドライバー)
「GTCはオーガナイズ、プロモーション、レギュレーション、ドライバーのレベル、
参加車輌のどれもとてもプロフェッショナルだと思う。レギュレーションはバトル
のあるすばらしいレースとすることを目的にエア・リストリクターと重量ハンデで
参加車輌の競争力のバランスをうまくとっている。それでニッサン、トヨタ、まだ
信頼性が不足しているがホンダも勝つ可能性がある。速いクルマがあってもすぐに
ハンデが課せられるのでいいと思う。GT500 の上のカテゴリーを作るというのはい
かがなものだろう。現在ヨーロッパで走っているレギュレーションのマシンを走ら
せるということだろうが、それができるチームはいいとしても、小さなチームには
難しいのではないだろうか。現在、ニッサンがル・マン用のGT1カーを持っている
し、トヨタも開発している。ホンダはどうなのか知らないが、そうしたところがク
ルマを供給できるならいい。ドライバーにとっては速いマシンのほうがおもしろい
のだから。ただ、チームの財政的な問題は果してどうなのか。ヨーロッパのGT規定
を採用するというのもクルマがあって初めてできることだ。FIA GT選手権はかつて
のグループCのようになって来ている。私がBPRシリーズに出ていた昨年と比較する
と現在のFIA GTのコストはかなり高騰している。GTCは国際選手権ではなく国内選
手権なのだから、レギュレーションは国ごとの事情を考えて採用すべきだ。トヨタ、
ニッサン、ホンダがGT1車輌をそれぞれ4チームなり5チームに供給できるというな
らそれはそれで興味深いものとなるだろうが、数台のGT1カーのみが優勝を争うよう
になるのはいいとは思えない。今は毎レース数台のニッサン、数台のトヨタ、ホン
ダにも勝つチャンスがあって、12台ほどのマシンが優勝を争っている。だから選手
権は興味深いものになっている。そのことを考えなければならない。観客も勝つチャ
ンスがあるのは1台だけというレースは見たくないだろう。ヨーロッパでも昨年は
多くの銘柄のマシン、多くのドライバーに勝つチャンスがあったが、FIA GT選手権
はシュナイダーのメルセデスとレートのマクラーレンBMWが全部のレースを勝ってい
る。これでは選手権としての関心は大きくない」

No.18 avex童夢 無限NSX 佐々木 正氏
「GT500 の上のカテゴリーを、という案に関しては、そういうマシンはGT-Aの当初
の主旨の求めていたのとは違うと思う。GT500 については、あくまでも前にエンジ
ンのついたクルマを想定した日本独特のレギュレーションになっているため、GT本
来のミッドシップのマシンを造るにはやりにくいレギュレーションになっている。
そのあたりをいろいろなクルマが出てこられるようになってこそ理想的なレースに
なるのではないか。今のレギュレーションのままだと造りにくいクルマが出てくる。
今は特認車輌などという方法でそれを補ってはいるが、ちゃんとルールのなかでい
ろいろなクルマが出てくるようにしてほしい。ウエイトハンデについては競争の原
理を損なうものだ。それにGTの場合は走行距離も長いのでブレーキなど危険性の問
題も出てきてしまう。賛成はできない。最低重量1200kgというのも反対だ。重いレー
シングカーを造るというのは、こんな馬鹿げたことはない。ウチでも120kg 以上の
ウエイトを積んでいる。それなりに努力したことが報われるようなカタチにしてほ
しい。変なところで足かせしても他のところで稼がなければならないので、過激な
競争をなくすことにはならない。自然体にした方がいいと思う。
 レース自体については、GTはどうしても大所帯になるから仙台のようなところは
やめてほしい。チームは狭いなかで大変な思いをするし、スポンサーの心証も悪く
する。仙台で2回やる必然性はないはずだし、ガレージに入ってクルマのドアを両
方開けられないようなところでレースをやるのは危ない。興行的な面では事務局が
一所懸命やってくれているが、参加する側としては仙台はやめてもらいたい」

No.5 5ZIGEN SUPRA 木下正治代表
「GT700クラスのモンスターマシンは日本にそぐわない。FIA GTのベンツを見ても
マクラーレンを見てもエスカレートしてるでしょう。マキシマムでもGT500のクラス
に留めるべきです。基本的には現状でいいと思いますが、NSXやMR2なんかの2シー
ターはよくないと思います。4シーター以上の2ドアでレースをやるべきです。レギュ
レーションについては、初年度なんでどうのこうの言えるかわかりませんが、あま
りエスカレートしないようにしてほしいですね。今回もポルシェのリストリクター
問題がありましたけど、抑えてイコールコンディションにする方向で続けてほしい。
あとは、来年に関しては、300kmは充分走れるんで400kmぐらいの耐久性を増したレー
スにしたらどうでしょうか? ファンサービスについては、フォーミュラニッポン
に比べたらよっぽどやってると思います。あとは、誰もがオープンで入れるクラス
もいいし、台数を増やすのもわかるんですが、もうちょっと内容をアップしてほし
い。GT300とGT500クラスのスピード差があってもいいけど、あまり差があり過ぎる
のも問題があるでしょう。ドライバーの基準をもう少し厳しくしないと、色物で終
わらない正常なレースをしないといけないでしょう。最後に言いたいことは、役者
あってのレースやから、もう少し我々の意見を採り入れてくれるといいと思います。
あと一点は、エスカレートしないため、メーカー直系のチームがやってるプライベー
トテストは制限して、オフィシャルテストだけにしてほしい。ウチらはレースもテ
ストも同じおカネかかりますから」

No.36/No.37 カストロール・トムス・スープラ 舘 信秀社長
「GTは結構お客さんが入っているし、JTCCの幹事としてはうらやましいかぎりだ。
うまく行っているのかな、と思う。ただ、GT500 、GT300 ともに力の差があり、上
と下の差がもう少しつまるといいと思う。ある時期はスカイラインが速くて、ある
時期はスープラが上位独占してしまうというのではマンネリ化してしまう。上を抑
えるのか下を上げるのか、それをどういう風にすればいいのかはわからないが。ほ
んとうの意味のコンペティションから言えば違うのかもしれないけど、今はこうい
う方法しかないとボクは思っているし、今のGT-Aの考え方、今のルールの決め方は
支援するほうだ。ただ、現実的にスープラが強くて、今回はホンダが前のほうに割
り込んできたので、内容としては面白くなるかもしれないが、スカイラインにも速
くなってほしいし、欲をいえば外国車がもう少しエントンラントの顔ぶれのなかに
ほしい。
 ボクはGT500 の上のクラスを設けてもいいと思う。いくつかのメーカーから何台
か出て来て、激突して1メーカーが抜けた、2メーカーが抜けたというふうになっ
た結果、何年かしてそのクラスが無くなってしまったとしても、今のクラスがその
まま成り立てば、GTはなんとか存続していけるのではないか。グループCが潰れた
のは、あれしかなく、その下がなかったから。今のレースが基盤になって、そこに
世界のGTクラスが入ってきて、ワーッとやってワーッとやめていってしまっても、
こっちが残っていればいいと思う。ボクは反対じゃない。混走でもいいと思う。別
なレースとしては成り立たないでしょう。ただそれより、第三者的には今のGT500の
ポルシェが、もう少し前を走れるようにしたい。外国車が逃げて国産車が追うとい
うのがおもしろい。欲をいえばきりがないが、今GTはうまく行っているのではない
か、と思う。いろいろ心配なところはあるが、全体的には成功しているし、やって
いる人の工夫でいろいろなアイディアを入れてやって行けばもっとおもしろくなる
と思う」

*GT500クラス・エントラントにきく2に続く


                       GTアソシエイション事務局
                         GTインサイドレポート班
                        古屋 知幸 = QYB04322 =


トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

検索

最新ニュース