全日本GT選手権

GTインサイドレポート 99Rd.4/7

■ 1999 AUTOBACS CUP ALL JAPAN GT CHAMPIONSHIP
■ GT INSIDE REPORT
■ Round 4 MINE GT RACE                                    FMOTOR4 EDITION
   GT INSIDE REPORT     インサイドレポート・特集      99/07/11
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'99AUTOBACS CUP GTC第4戦MINE CP MINE GT RACE(7/10,11)

特集 GTへの提言(第3回) ~有力チーム関係者に訊く~
 第2戦富士、第3戦SUGOのGTインサイドレポートでは、最近のGTCマシンの性能
向上およびコストの高騰について、ドライバー、チーム監督などから聞いた。今回
はメーカー直系もしくは関わりの深い有力チームの関係者の意見、考えをレポート
する。(順不同)


木村芳郎・TRD(トヨタテクノクラフト)取締役
「かつてのCカーやJTCCの二の舞にならないようにメーカーを排除するべきだという
意見がときどき聞かれますが、私はそれはまちがいだと思います。いきすぎた過当
競争になると費用が高騰してやめてしまおうということになる危険性はありますが、
それを恐れるあまりメーカーを排除しようとするのは、ボクはまちがいだと思いま
す。モータースポーツというものは、メーカーがそれなりの関与をしてやるべきだ
と思う。
 GTCの現状を維持するなり、さらに発展させていこうと思うなら、レギュレーショ
ンを何年間か現状のまま固定します、とかある時点で言って、年度ごとに新しいク
ルマを作らなくてもいいように動いたほうがよいと思います。現在でも行っている
プライベーターの優遇措置をもっと広げていけば、メーカーに対抗できないという
ことはあり得ないと思います。メーカー側から基本になる車両とエンジンを提供し、
それから先はチームが自分たちのノウハウで速くする。出てきたスープラやNSXが
(チームごとに)全然ちがうカタチをしている、というふうに。
 そうすれば、今はメーカーがかけている開発のための費用を、できるだけ多くの
チームに基本的な車両を提供するためにまわして、多くのチームが参加するための
努力ができます。それで、どこのチームにもチャンスがまわってくるという考えか
たになればいいなと思います。ほかのメーカーさんに比べてウチの台数が多いとい
うのは、そういうふうにしたいからなんです。台数を増やすために基本的な開発だ
けをやって、あとはチームに任せる、と。極端なことを言えば、ひとつのチームで
トヨタからもホンダからもクルマの提供を受ける、それでチームのノウハウでクル
マを仕上げていくというようなことがあってもいいと思う。メーカー同士の戦いで
はなく、チーム同士の戦いにする、そんな方向にいくような方策が取れないものか
な、と思っています。
 99年仕様のスープラは、『ああしなければ勝てない』じゃなくて、いろいろな方
向から徐々にやった結果が『ああなった』というのがホントなんです。でもハチロ
ク(No.86 BPアペックスKRAFTトレノ)を見ると、まったくのプライベートでもこ
こまでできるのか、と思いますね。ですからチームがそれぞれの考えかたでやった
ほうがおもしろいんじゃないでしょうか。チームを育てる、ドライバーを育てる、
それでレースそのものを盛り上げる。そういう方向でいければと思っています。そ
ういう役割というのは、メーカーと具体的に参加するチームとのあいだにいる我々
の役目かな、とも思います。
 外国車を買って参加するチームも、エンジニアやメカニック集団がいて、そうい
う人たちを含めてレースを盛り上げることを考えていかないといけないと思います。
レースというものはかならず技術的なものが伴って、その集大成がチームだという
ふうに。たとえばポルシェで参加するなら、ポルシェを勉強してもらってレースに
向くように改造してもらう努力はしてほしいと思います。完全なレーシングカーを
買って出るなら別ですけど、量産車をベースにしてやるなら、国産車も外国車も同
じですが、チームの力でそのクルマを走らせていくという姿を描いているんですけ
どね」


岡 寛・NISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)監督
「今までのレポートは読みましたが、そのとおりだと思いました。速さの面では、
競争の世界なのでしょうがないと思いますが、ちょっと速くなりすぎていますね。
速くなれば安全対策としてブレーキの強化やクラッシュを考えたボディの強化をし
なければならなくなってくるんです。景気もよくないし、スポンサーやメーカーか
ら出るおカネも減っています。今年よかったからといって来年いいとはかぎらない
ですよね。速さの追究以外の面におカネをかけられるようにしないといけないでしょ
う。速さ、安全性などをトータルで考えて、結果的にはコストを下げる方向でやっ
てもらいたいですよね。
 それから、私たちはプライベーターにもマシンを供給したいと考えています。そ
のつもりはありますが、コストの面で折り合いがつかない。プライベーターに供給
するためにはパーツなどの開発コストを下げないとムリなんです。それをテクニカ
ル・レギュレーション、スポーティング・レギュレーションで可能にしていっても
らいたいですね。GTCは、1台しか出さずにそれで勝てばいいやというレースでは
ないと思います。ギンギンに速いクルマを1台作って勝つことはできると思います
が、それでお客さんが来てくれるかというと、違いますよね。
 お客さんあってのレースですから、ニスモも考えていかないといけないと思って
います。せっかくみんな努力して盛り上がってきてるんですが、平行線ではなく、
もっともっとという気持ちですから、私たちも協力していくつもりです。GT-Aがア
ンケートを取ったり考えを発表してくれているので、問題はないと思いますが。
 イベント自体に関してはみんながんばってると思いますよ、ドライバーも含めて。
去年より今年と、いい方向で来ている。来年はもっといいアイデアが出てきて、お
もしろいレースをしたいと思いますね」

永長 真・童夢×無限プロジェクト・プロジェクトリーダー
「今GTCは非常に人気があります。人気の面でここまで来られたのはファンあって
のものだと思いますが、そのために我々も一エントラントとして非常に努力してき
たと自負しています。ドライバーが一生懸命ファンサービスをしていて、我々もホ
スピタリティの内容や見栄えといったことも含めて改善してきています。同じよう
にクルマは性能だけでなく美しさも意識して、できうるかぎりの提供をしてきまし
た。少しでもたくさんのお客さんに来ていただこうと毎戦努力してきた結果が、今
のGTCの隆盛につながっていると思います。
 少なくとも我々はGTCというカテゴリーを十分に意識して、きちんとほかと差別化
してきています。たとえばエンジンを準備するにも、ただ速くて性能本位で考える
ならばもっと別の考えかたもできるわけです。NSXなら横置きV6を別のエンジンにか
えることもできます。でもGTCはあくまでも街乗りマシンのトップカテゴリーだから
こそ、NSXらしさを損なわないようにしているわけです。そういう意味で素材を生か
して作りあげたつもりです。我々に対してやりすぎだというのなら、それは考えか
たの相違としかいえません。たとえばエンジンだって、ワンレーススペシャルだっ
て作れるわけです。でもこのカテゴリーのなかでそれをやっちゃいけないと思って
いるからやらないんです。あくまでもGT-Aの創立時からの考えかたを尊重し理解し
ているからこそ、今の結果が出ているんです。去年から今年にかけてのレギュレー
ションはNSXにとって不利といえるでしょう。とにかく速いから性能を均等化しよ
うというレギュレーションですから。我々はGT-Aの考えにのっとって、与えられた
レギュレーションのなかでまたベストをつくすわけです。そのベストのつくしあい
が過当競争といわれるのは…。競走なんだからベストをつくすべきでしょう?
 要するに、各チームがベストをつくせる環境にまでいっていないということだと
思います。経済的に自立できていない。はやく各チームが経済的に自立できるよう
にならなければいけません。そのためには、もっともっとお客さんに観てもらうし
かないでしょう。TVをたくさんの人に観てもらって、サーキットにたくさんの人に
来てもらえるようにならなくちゃいけない。
 端的にいえば、我々はハードウェアを売ることが商売です。もっともっと我々の
ハードウェアを買ってもらいたいと思ってます。エンジンは消耗品ですから、我々
も買っていだいてそこで終わりにはしません。メンテナンスサービスという仕事が
あります。今は4台ともハードウエア的にはいっさい区別もしてませんし、データも
オープンにしています。TRDのように、車体は買っていただいてメンテナンスサービ
スをするというのが理想だと思います。そのためにはパイが拡がらないと、つまり
各チームが経済的に自立できないとビジネスは拡がらないんです。
 GTCは、今まで問題を積み重ねて解消して、をくり返してここまできました。決し
て今断崖絶壁に立っているとは思いません。ただまだ全体がプロとして自立できて
いない。経済環境がよくないというのもあるでしょう。社会と、モータースポーツ
の世界の経済環境にはタイムラグがあって、社会がよくなっても少し遅れるようで
す。宣伝広告費は最後にきますから。そんななかで少しでもタイムラグをなくすに
は宣伝広告しがいのあるレースを作るしかないんです。5万人の観客が10万人にに
なれば世界も変わってくるでしょう。だから我々はハードウェアのメーカーとして
魅力あるハードウェアを作るためにベストをつくすんです。モーターに魅力がなけ
れば、魅力あるモータースポーツにならないですから」

以上

☆GTインサイドレポート班では次戦(第5戦富士)でも引き続きこの特集を行う
 予定です。


*今回のGTインサイドレポートは以上です

                       GTアソシエイション事務局
                         GTインサイドレポート班
                        古屋 知幸 = QYB04322 =


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