Formula Nippon

FN:第4戦岡山 ロニー・クインタレッリもチームもFN初優勝 (INGING)

 予選では思わぬ苦戦を強いられた前戦もてぎ。決勝では最後尾グリッドからロニー・クインタレッリが大健闘の5位に入賞。横溝直輝はアクシデントによってマシンにダメージを受け13位となるも、チームとしては表彰台を狙える力があることをファンにアピールすることとなった。

 迎えた今大会はFニッポン初開催となる岡山国際サーキットが舞台。事前テストがなく、金曜の走行が通常より長めに取られたものの、データのないサーキットでの戦いとあって、各陣営、ドライバーの真価が問われることになる。INGINGは金曜の走行ではクインタレッリが11番手、横溝が14番手ながら、手応えを持って土曜朝の公式予選を迎えた。

■6月9日予選1回目

 夜半に降った雨の影響で、土曜午前10時からの予選1回目はまずまずの好天ながらも、路面はライン上がかろうじて生乾きといった難しい状況。ウエット宣言が出されたこともあり、数台のマシンがレインタイヤでセッション開始と同時にコースインも、これは路面のチェックで計測するマシンはほとんどない。横溝もコースインするも、計測せずピットに戻ってコンディションの回復を待つ。

 照りつける日差しが強かったことから、路面は急速に乾いていったが、そんな中、本格的なスリックタイヤでのアタックが始まったのは、セッション開始から約30分が経過したあたりから。INGINGの2台は、さらにピットでコンディションの好転を待ち、残り8分となってから横溝、クインタレッリが相次いでピットを離れた。

 ゆっくりとしたラップでタイヤを暖めた2台は翌周、横溝が1分21秒966で10番手、クインタレッリが1分26秒243で12番手に。続くアタックラップでは、横溝が1分17秒919で4番手、クインタレッリは1分17秒671で2番手と、ともに好位置につける。

 この時点で残り時間は3分を切っていたが、更なるタイムアップが期待された矢先、横溝がバックストレッチエンドのヘアピンで痛恨のスピンアウト。ここではマシンを降りることとなり、このアクシデントによる黄旗提示のため、クインタレッリはスローダウンを余儀なくされる。

 この後、セッション終了間際に何台かのマシンがタイムを更新し、クインタレッリは3番手、横溝は8番手でセッションが終了したが、黄旗提示中のベストタイムが抹消となり、予選1回目はクインタレッリ2番手、横溝6番手という結果となった。

■予選2回目

 コンディションの難しいセッションとなった予選1回目だが、午後2時25分からの予選2回目も、開始直前から断続的に雨が降るというトリッキーなコンディションに。序盤は湿った路面にタイムを更新するマシンは少なく、時折雨脚が強まるなど、なかなか路面状況は好転しない。

 終盤スリックタイヤでの走行を行うチームもあったが、セクター2ではまだ路面は濡れている状態。INGINGの2台もスリックタイヤの皮むきと状況確認のためコースインも、積極的なアタックは行わずセッションは終了。結局上位陣では予選1回目の結果がそのまま決勝グリッドとなり、クインタレッリは2番手とフロントロウを獲得。一方の横溝も自己最高位となる6番手からのスタートとなった。

■ロニー・クインタレッリ

 「昨日からセットアップを変更し、予選1回目は非常のマシンのフィーリングが改善していて良かった。ただ、予選2回目には多くのドライバーがタイムを上げてくるだろうと思っていたので、この雨は僕たちにとって幸運になったね。雨でアンラッキーをこうむったもてぎとはまるで正反対の一日になった。予選2回目の前に雨が降ってきたときには、飛び跳ねて喜んだよ(笑)。明日の決勝では、小暮選手とフロントロウに並ぶということで、昨年のオートポリスを思い出すよ。あの時は接触してマシンにダメージを負ってしまっただけに、明日はダメージなく1コーナーをクリアしたい。きっと1コーナーは激しい争いで、面白いんじゃないかな」

■横溝直輝

 「予選1回目では、クルマは昨日よりも非常に良くなっていましたし、残念ながらスピンを喫して黄旗の原因になってしまったものの、そのコーナーまではロニーよりも速いタイムで来ていたので、そのラップをまとめ切れなかったことが悔しいですね。けれど、予選2回目にはさらにクルマが良くなるような状況があったので、トップ6よりも上に行けるんじゃないかと思っていたのですが、雨が降ってしまって……。最近は決勝でのラップタイムが良かったので、もっと予選順位を上げたいという気持ちでいたので、自己最高位の6位からのスタートということで、今までで一番良いリザルトを明日は狙いたいと思います」

■由良拓也監督

 「まずは、2台そろって好位置からスタートできることを喜びたいと思います。結果的に横溝のスピンによる黄旗が他のドライバーにも大きく影響したわけですが、それでなくともロニーも横溝もこの岡山国際ではF3で優勝するなど、この舞台でのフォーミュラ経験の豊富なドライバーですから、期待はしていました。明日はおそらく好天でのレースとなるでしょうが、戦略などはこれから考えます。ロニーには2番手というポジションを守れる速さがあると思いますし、ポールの小暮選手を脅かす可能性もあるでしょう。また、横溝もレースラップが速いドライバーですから、なんとかFニッポンで初のポイントを獲得してもらいたいですね」

■6月10日

 不安定な天候の影響で、多くの陣営にとっては不完全燃焼となった土曜の予選セッションだったが、INGINGにとっては恵みの雨。クインタレッリ、横溝ともに好グリッドを獲得したとあって期待の高まる中、迎えた日曜朝のフリー走行でもクインタレッリ9番手、横溝12番手ながら手応えはまずまず。決勝のセットアップも決まり、いよいよ68周の戦いを迎えた。

■第4戦決勝

 前座のF3レースでの雨もすっかり乾いた午後2時30分、Fニッポン第4戦決勝のフォーメイションラップがスタート。クインタレッリは2番グリッド、横溝は6番グリッドとともにイン側からのスタートとなった。

 レッドシグナルが消えると、クインタレッリは抜群のスタートで、出遅れたポールシッターの小暮卓史をかわして1コーナーでトップに立つ。横溝も好スタートで5番手で1コーナーにアプローチをするも、他車との攻防での位置取りから逆転を許し、7番手で2コーナーを立ち上がっていく。

 いきなりリードを築いていくクインタレッリだったが、1周目のヘアピンで多重クラッシュが発生したため、セーフティーカーが導入されることとなり、せっかく築いたマージンを失ってしまう不運に。しかし、このセーフティーカーランの間に小暮、立川祐路、ロイック・デュバルなどのマシンがピットインしたため、すぐにクインタレッリ1位、横溝4位と、インパル勢2台を挟んでINGINGのマシンが好位置につけることに。

 そして迎えた4周目からのリスタートでもクインタレッリは落ち着いて好ダッシュを決め、トップを守ることに成功。一方の横溝はジョアオ・パオロ・デ・オリベイラに先行を許すも、5番手のまま周回を重ねていく。

 クインタレッリは背後のブノワ・トレルイエとの息詰まる攻防を見せながらも、じりじりとギャップを広げて行く。しかし、レース半ばを過ぎた38周あたりから一部で雨が降り出したこともあり、タイヤの磨耗が厳しかった横溝は一時4番手に浮上も苦戦を強いられ、42周目のヘアピンで片岡龍也のオーバーテイクを許し5番手にポジションを下げる。 44周目に2位のトレルイエがピットインした翌周、クインタレッリがピットイン。チームスタッフも素早い作業でコースに復帰したロニーは、見事トレルイエの前でコースに躍り出る。

 一方横溝はピットインを引き伸ばし2番手にまで浮上すると、46周目にピットイン。しかし、残念ながらコースに戻ったときには12番手となってしまう。

 49周目に上位陣のすべてがピット作業を終えると、再びクインタレッリはトップに返り咲く。そこからの20周弱はチームにとって非常に長く感じられたが、終盤に再び力走を見せたクインタレッリはトレルイエを引き離してファイナルラップに突入。そして見事トップでチェッカーを受け、念願の初優勝をガッツポーズで飾ることに。横溝はビヨン・ビルドハイムとの接戦を演じたもののオーバーテイクはならず、12位でのフィニッシュとなった。

 マシンを降り、喜びを全身で表したクインタレッリは、飯田エンジニアらスタッフと抱き合いガッツポーズ。横溝の祝福を受けた後、見事表彰台の頂点でイタリア国歌を聞いたのだった。

■ロニー・クインタレッリ

 「自分にとって、そしてINGINGというチームにとってのFニッポンでの初優勝は最高に素晴らしい気分だね。スタートしてトップに立ち、1周でギャップを築けたのに、すぐにセーフティーカーが出てがっかりしたが、リスタートも完璧に決まり、再びリードすることができた。序盤の20周くらいは、やや燃料も重くて厳しかったが、軽くなるにつれてバランスは向上し、背後のトレルイエ選手からのプレッシャーにも楽に耐えることができた。自分が日本に来て、F3時代からお世話になったINGINGというチームで、ともにFニッポンにチャレンジし勝てたことは大きな喜びだ。ピット作業も完璧だった。まだまだ予選での速さなど、トップチームとの差はあるが、家族のような僕のチームスタッフたちとともに次戦以降も頑張りたい」

■横溝直輝

 「スタートが決まってデュバル選手をパスしたのですが、彼に寄せられてダスティな路面を走ったために1~2コーナーでアンダーを出してしまい、そこで行き場を失うなどして結果的に7番手に下がりました。それでも序盤は5位を走り、一時は4位にも上がったのですが、中盤にタイヤが厳しくなり、雨がパラつくなどしてコース上にとどまるのもつらい状況になったあたりで順位を落としてしまいましたね。ロニーの優勝はチームメイトとしてうれしいのですが、ドライバーとしては当然悔しい気持ちもあります。次戦の鈴鹿では、前回好調でしたし、上位に食い込めるようなレースを狙いたいですね」

■由良拓也監督

 「私自身も実はFニッポンでは初めての優勝ということで、表彰台の一番高いところに乗せていただいたのも初めてだったのですが、ずいぶん景色が良いなぁと。大変良い経験をさせてもらいました。INGINGというチームにとっては、山口県に基盤を置くということで情報がなかなか入らないなどのハンデがあるのですが、そういう現実がある中で今年から色々な経験者が集まり、その核に山口で育ってきたチーフメカニックがいるという形で戦ってきて、卜部オーナー以下、新しいレーシングチームの形態がしっかりできてきたのかなと実感しました。今日は本当にロニーが完璧な仕事をしてくれましたね。」

INGING_070610

33号車ロニー クインタレリ優勝-
34号車横溝 直輝12位トップ差54秒134

 皆様の応援、有難うございました。今後とも、INGINGへの応援をどうぞ、宜しくお願いいたします。

Text & Photo: INGINGモータースポーツ事務局



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