SUPER GT

SGT:第6戦SUGO SKT EXE SLS、ピットレーンに棲む魔物にチャンスを阻まれるも、チームの意地をかけて作り上げたマシンで、タイラウンド以来の完走 (Arnage)

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 8月末のSUPER GT第5戦鈴鹿ラウンドで大クラッシュをして、フロント部分に致命的な損傷を負ったSKT EXE SLS。フロント真正面からガードレールに激突した衝撃で、マシンの生命ともいえるボディ(シャシー)の前部が大きなダメージを受け、そのままでは今後のレースを戦うことは不可能な状態だった。チームは検討を重ねた結果、次戦菅生ラウンドに出場することを最優先に、ボディ交換をする決断をした。HWAより新しいボディが届いたのが菅生ラウンド10日前。Arnage Racingは各方面からの温かいご支援とご協力を得て、6日間という短期間のうちにボディ交換とパーツの移植を行い、車両をほぼ元の形に戻して、みちのく路へと送り出した。

 今シーズンの第6戦となる菅生ラウンドを戦うのは、開幕戦以来の加納選手×安岡選手のコンビ。鈴鹿後の状況から菅生ラウンドへの出場は不可能かと思われていただけに、菅生大会に参加できる喜びはひとしおで、両ドライバーを含め、チーム員全員が、熱い意気込みを胸に仙台入りした。

September 19th Qualifying

  • 天候:晴れ 路面状況:ドライ 気温:26℃→24℃ / 路面温度:33℃→30℃ 入場者;8,000人

gt-r06-arnage-01  9月の東北でのレースウィークは低温が予想された。搬入日となる金曜日には冷たい小雨も降ったため、予選日の天候が心配されたが、土曜日の朝になると天気は急速に回復。夏の再来を思わせるまぶしい日差しに、汗ばむほどの陽気となった。

 連日のハードな作業の末、なんとかマシンを車の形にして菅生サーキットに持ち込んだArnage Racingだったが、予選前日のチェックの際に、ABSと車両とのマッチングに深刻な問題があることが発覚した。深夜までHWAのエンジニアと共に原因を探した結果、なんとか原因となる箇所を見つけてトラブルを解決、無事に予選日を迎える目途が立った。

 ボディ交換後初めての走行となる午前中の公式練習では、チームは車両を早々にコースインさせ、加納、安岡両選手が新しくなったボディに少しでも慣熟しようと、交互に周回を重ねた。しかし、何度か赤旗による中断があったり、安岡選手のドライブの際にシフトが入らなくなるトラブルが出たりと、なかなか思い通りの練習走行を重ねることができない。午前中の公式練習は29Lapを走行するにとどまった。*ベストラップは10Lap目に安岡選手が出した1'22.060(22位)

gt-r06-arnage-03  午後になってもまぶしい秋空は変わらず、日差しは強いものの、東北の秋を感じさせる爽やかな天候。予選は午後2時から行われ、Q2進出を目指して安岡選手がアタックを開始した。安岡選手は6Lap目に1'21.085を記録したが、JAF-GT勢とマザーシャーシ勢が上位を占める、今シーズンの流れに食い込んでいくことはできず19位。またしてもQ2進出はお預けとなった。とはいえこの順位は、6台参戦しているMercedes SLS GT3の中で3番目の順位であり、SLSには不向きな菅生のコースにもかかわらず、SKT EXE SLSが健闘したことを窺わせる。躯体の新しくなったマシンはこれまでになくフィーリングが素直になったという両ドライバーの評価に、Arnage Racingは確かな手応えを感じて、翌日の決勝に向けてのメンテナンスを楽しんだ。

 なお、300クラス予選の結果は次の通り。

  • P1 #55 ARTA CR-Z GT 高木 真一 /小林 崇志 (1'19.107)
  • P2 #25 VivaC 86 MC 土屋 武士 / 松井 孝允 (1'19.408)
  • P3 #31 TOYOTA PRIUS apr GT 嵯峨 宏紀 / 中山 雄一 (1'19.489)
  • P19 #50 SKT EXE SLS 加納 政樹 / 安岡 秀徒 (1'21.085)

September 20th Race Day

  • 天候:晴れ 路面状況:ドライ 気温:26℃→26℃ / 路面温度:38℃→35℃ / 入場者:28,500

gt-r06-arnage-10  決勝日も抜けるような青空に、爽やかな風の吹く心地よいレース日和となった。SKT EXE SLSは前夜遅くまでかかって更に仕上げのステッカーリングが施され、日曜の朝にはすっかり元通りになった姿を見せた。9時からのフリー走行は、決勝を想定して安岡選手、加納選手の順で時間いっぱいを使って17Lapを走行。これといったトラブルもなく、ドライバーチェンジのシミュレーションも行いながら順調に周回を重ねて、予定していたメニューをしっかりとこなすことができた。特にこれまで蓄積してきたセッティングのノウハウを朝の走行で煮詰めた結果、エンジニアがこれまでよりもさらに進んだレース向けのセットを投入、生まれ変わったSKT EXE SLSは決勝の時を待った。

 午後2時、全く雨の心配のないドライコンディションのなか、宮城県警の白バイとパトカー先導によるパレードラップのあとフォーメーショ ンラップと続き、いよいよ菅生ラウンドがスタートした。

gt-r06-arnage-13  スタートドライバーを託された安岡選手は、300km先のチェッカーを目指して、19番手から追い上げを始めた。しかし、コース幅の狭い菅生サーキットで混戦を制するのは至難の業である。安岡選手はタイヤの温まってくる9Lapあたりから1分22秒後半~23秒台の良いペースをキープしながら、浮上の機会を狙って走行を続けた。真夏を思わせる気温と荒れる路面は、「菅生の魔物」の暗躍を予想させる。クラッシュやアクシデントが続発したが、安岡選手は淡々と走行を続け、6Lap目に18位、23Lap目に16位と、少しずつポジションを上げていった。そして、その直後の24Lap目、バックストレートで500クラスの車両同士が接触して大なクラッシュが発生したためセーフティーカーが導入、29Lap目のピットレーンオープンと共に、コース上にいたほとんどの車両がピットインした。SKT EXE SLSも16位のままピットイン、給油、タイヤ交換を行い、安岡選手からバトンタッチを受けた加納選手はいざ追い上げ、とばかりにピットアウトを試みた。ところがピットレーン出口付近の車両がピットアウトに手間取りピットレーン出口を塞いで動かない。大渋滞の様相を呈するピットレーンには10台以上の車両が身動きもできずに閉じ込められ、コース上を周回しているマシンとの明暗が、ここでくっきりと分かれてしまった。

gt-r06-arnage-19  ようやく加納選手操るSKT EXE SLSがコースに戻った時には、ポジションは21位に後退。しかし、加納選手はここ数戦の悔しさを晴らすかのように素晴らしいドライビング見せる。狭いコースで、激しく追い上げてくる他車両との、ぶつかり合うような激しい接近戦を耐え忍び、加納選手は61Lap目にポジションを一つ上げて20位でチェッカーを受けた。

 Arnage Racingは、順位こそ振るわなかったが、第3戦タイラウンド以来の完走でレースを終了、アルナージュ魂の意地をかけて作り上げたSKT EXE SLSを無事な姿で戻すことができた。

  • P1 #25 VivaC 86 MC 土屋 武士 / 松井 孝允
  • P2 #31 TOYOTA PRIUS apr GT 嵯峨 宏紀 / 蒲生 尚弥
  • P3 #11 GAINER TANAX SLS 平中 克幸 / ビヨン・ビルドハイム
  • P20 #50 SKT EXE SLS 加納 政樹 / 安岡 秀徒
チーム代表 伊藤宗治
 今回は、鈴鹿のアクシデントで危機的な状況でしたが、なんとかクルマにして菅生に持っていくことができ、かねてから定評のチームワークで問題を最小限にとどめて走行させることができました。Arnage Racingらしい事の運びで非常に嬉しいことだったと思います。レース自体はとても不運なものになってしまいましたが、最後まで諦めなかった加納さんが、苦手なコースだったにも関わらず十分な走りをしてくれて、次につなげられる結果だったのではないかと思います。とにかく、鈴鹿後の苦しい時期にチームの意向を汲んでご尽力くださったHWAとAMGの皆様、温かいお言葉で応援してくださったスポンサー様やファンの皆様には、重ねて心からのお礼を申し上げたいと思います。次戦も応援よろしくお願いします。
ドライバー 加納政樹
gt-r06-arnage-06  お疲れ様でした。前回の鈴鹿から今回の菅生にかけては、チームのみんなの意地と意気込みがあって、ここ(菅生)に来れたわけですし、そのなかで、ちゃんとチェッカーまで受けれて、アルナージュらしいレースができてほんとによかったと思ってます。今回のレースは途中でSCが入ったりしてレースが荒れたんですけど、そんな中で順位はどうあれ、とりあえず、完走することができて、いつものような流れでレースできたんじゃないかと思います。でもあのタイミングで交代するのは今までにないパターンで、まあ今まででたぶん一番長く乗ったレースになったんじゃないかな。これからこういうレースもあるんじゃないかと思うし、何より、ここ3戦、ほんとに色んなことがあって、色んなことが起こる中で、それが一つ一つドライバー含めチームの引出しになって、また強くなっていくんやと思います。去年はオートポリスのレースから、ポイントを取っていく流れが出来たような気もするし、今日のクルマの動きを考えると、結構ちゃんと曲がるし、オーポリも厳しいような感じじゃなさそうなんで、今回の経験も糧にしてね、何よりまずちゃんと完走して、とりあえずはレースをすっきり終わらせる。その中でまあ順位が後ついてくると思うんで、それを目指して、頑張りたいと思います。ありがとうございました。
ドライバー 安岡秀徒
gt-r06-arnage-02  とにかくクラッシュしたらシーズン終了だっていうのは、アルナージュ一年目からずっと言われてきたことで、鈴鹿のあの映像を見たときには、もう完全に『今シーズン終了』という風に思ったんですけど、こうして次の菅生のレースにほぼ普通に走れて、特に何かがあって何かを我慢しなくちゃいけないということもなく、まあいつも通りに、練習走行から走りはじめて、予選、決勝と来れて。ほんとに、みんなの頑張りだと思います。前から言ってますけど、恵まれた体制で走ってるなあっていうのは感じます。そんな中で、今日のレースとしては、結果的にはSCでピットに入ったことが良くなかったんですけど、300のジェントルマンドライバーの渋滞とかは想定していたし、そこで運がいい方ではなかったにしてもちゃんと走れて、その運がいい方じゃなかったおかげで単独でも走れたんです。その中で今日試したセッティングが、僕としては結構いいタイムで走れた感じがあったわけですが、そこが、初めてレースカーとして、決勝日のクルマとして、アストンのレベルにあったというか、近づいたと感じられた日だったんですね。そういう意味で、実はすごく充実したレースだったと言えます。ですから、ほんとはもっと乗って、あのタイヤがどうなっていくのか、やっぱりフロントタイヤがキツイっていうので、相当大事に走ってたんだけど、それでどのくらい行ったのかとか、そういう状況でリアはどうだったのかっていうのを今日のこのバランスで知りたい。もうほんとに残り2戦になってしましましたけど、流れとしてはようやく好転してきましたので、オートポリスでいいレースができるように、頑張りたいと思います。お疲れ様でした。

 応援してくださったスポンサーの方々には深く感謝しますとともに、残す2レースも変わらぬ応援を賜りますようお願い申し上げます。10月31日~11月1日にオートポリスサーキットで開催される、次戦九州ラウンドにおきましても、応援のほど宜しくお願いいたします。

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Arnage Racing SUPER GT Race report


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