SUPER GT

SGT:第3戦チャン 南国タイでの灼熱のレースを無事に完走。ポイント獲得ならずも、次戦に期待をつなぐ14位でフィニッシュ (Arnage)

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 前戦の富士ラウンドから一か月半のインターバルを経て、迎える第三戦はチャーン・インターナショナルサーキットで開催されるタイラウンド。Arnage Racingの第2ドライバーを担うNanin Indra-Payoong選手の凱旋試合となる、前半戦の山場である。特に昨シーズン、6位という好成績でNanin選手の故郷に錦を飾ったArnage Racingは、現地の注目を集めていることもあり、チームは念入りにメンテナンスを施して、車両を三週間の船旅へと送り出し、意気込んでレースウィークを迎えたのだった。今年もタイラウンドでは、プロジェクトμ様のスポンサードを受けてエントリー名称を「P.MU SLS」と変更、カラーリングも華やかなタイ仕様となった。そのP.MU SLSを操るのは、昨年同様加納選手とNanin Indra-Payoong選手の二人。そして、二人のドライビングを万全にサポートすべく、今年も安岡選手が心強いアドバイザーとして同行した。

July 20th Qualifying

  • 天候:晴 路面状況:ドライ 気温:36℃→38℃ / 路面温度:58℃→57℃ 入場者;16,412人

gt-rd3-arnage-02  今年のタイラウンドは、昨シーズンの10月から6月へとレース開催時期が変更になり、雨季とされるこの時期につきもののスコールや10月とは比べ物にならないほど強い日差しが、レースの命運をどのように左右するのだろうか。

gt-rd3-arnage-07  今シーズンは金曜日の慣熟走行の設定がなかったため、木曜日に現地入りしたArnage Racingのドライバー陣は、金曜日に設けられたコースウォークの時間に、一部改修の行われたサーキットの様子を下見して週末のレースに備えた。

 予選日となる土曜日。朝から厳しい日差しの照りつけるチャーン・インターナショナルサーキットでは、午前10時から公式練習が行われた。前戦の富士ラウンドで、シーズン当初から抱えていたギア抜けのトラブルからようやく脱し、やっと本格的にレースを戦える状態になったArnage Racingは、車両を順調に走らせてセットアップを進めていった。特に、よりよいスプリングチョイスを模索してバネ交換を実施した結果、非常によいサスペンションのセットアップにたどり着けた。路面の状態は昨年に比べてかなり良くなっていたものの、天候と相まってまだまだタイヤには厳しいコンディション。そんな中、両ドライバー共に順調に周回数をこなして24周を走行、それぞれマシンとコースの感触に慣れていった。なお、公式練習の結果は、14Lap目に加納選手が出した1'36.869(21位)がベストとなった。

 午後になってもスコールの心配はなく、真っ青な空が広がっている。南国の厳しい太陽が照りつける中、15時から行われた予選には地元の期待を背負ってNanin選手が臨んだ。Nanin選手はQ2進出をかけ、最後まで猛烈なアタックで上位陣に迫ったが、35秒台が目の前に見えた最終ラップで痛恨のスピン。結局タイムは4Lap目にレコードした1'36.087にとどまり、惜しくもQ2進出は叶わなかった。しかし、最終的に出た決勝のグリッド順は今シーズン最高の15番手。前戦までのように上位チームに離されていく感覚はなく、また、参戦しているNanin選手と同郷のタイ人のドライバーの中では断トツの好タイムを叩き出せたことで、明日の決勝に向けて期待を抱ける予選結果となった。なお、300クラス予選の結果は次の通り。

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  • P1 #25 VivaC 86 MC 土屋 武士 / 松井 孝允 (1'33.915)
  • P2 #3 B-MAX NDDP GT-R 星野 一樹 / 高星 明誠 (1'33.988)
  • P3 #10 GAINER TANAX GT-R アンドレ・クート / 富田 竜一郎 (1'34.507)
  • P15#50 P.MU SLS 加納政樹 / N.インドラ・パユーング (1'36.087)

July 21nd Race Day

  • 天候:晴れ 路面状況:ドライ 気温:37℃→35℃ / 路面温度:50℃→58℃ 入場者:38,381人

gt-rd3-arnage-05  予決勝日の朝は前日よりも雲が多く、午後からはスコールの予報もでているが、それでも気温は朝早くから30度を超えて蒸し暑い。この日もチャーン・インターナショナルサーキットには昨年同様、地元の多くのモータースポーツファンや関連スポンサーの招待客などが、アジア最高峰のハコ車レースを一目見ようと数多く押し寄せた。タイの人気者Nanin選手を抱えるArnage Racingのピットにも、Nanin選手のスポンサー一行が大勢訪れ、ピットウォークの時には身動きができないほどの盛況ぶり。Nanin選手自身も引きも切らない取材に大忙しだったが、9時50分から行われた朝のフリー走行、続くサーキットサファリも順調にこなすことができた。特に前日の走行時に前進したタイ仕様のセットアップを再度確認し、また、ピットシミュレーションを含めたNanin選手から加納選手へのドライバーチェンジの練習も行って、決勝に向けてのテンションが上がっていった。

gt-rd3-arnage-12  15時。懸念されていたスコールの気配もなく、気温も40度近くまで上昇する中、いよいよ決勝が始まる。スタートドライバーを務めるのはもちろんNanin Indra-Payoong選手。周囲を見ながら、落ち着いた非常に良いスタートを切った。Nanin選手はレース開始直後の混乱をアグレッシブに切り抜けて、あっという間に12位までポジションを上げ、12Lap目で11位にまで浮上。ラップタイムも1分36秒後半から37秒前半をキープしながら、非常に順調に走行を続けた。ピットインする車両の出始める30Lap目前後には、見かけ上の順位は4位まで上がり、ピットで見守る地元応援団はわきに沸いた。ところが32Lap目、落とし穴が待っていた。Nanin選手はヘアピン付近でスピン、大きく順位を落としてしまう。しかも、リア左側をヒットしてリアタイヤを破損してしまったために早々にピットインしたいところだが、ピットを共有する22号車のピットインタイミングと重なってすぐにピットに戻ることができない。Nanin選手は熱中症の症状を呈し、苦しみながら2Lapほど周回して34Lap目、ようやく加納選手にステアリングを委ねるべくピットに戻ってきた。リアタイヤを交換し、素早い給油とドライバーチェンジを終えて、P.MU SLSは16位でコースに戻った。加納選手はコースに復帰するや、すぐに順位を一つ上げ、怒涛の追い上げを開始。タイヤが温まってくると、1分36秒台の素晴らしいタイムで前方の車両を脅かす。途中500クラスの集団や300クラスの周回遅れの車両が壁となって加納選手の激走を阻む場面もあったが、最後まで渾身のプッシュを続けた。残り10Lapというところでまた一つ順位を上げた加納選手は、全くペースを落とすことなく、なんと最終ラップで決勝のベストとなる1’36.266をレコード。そのまま14位でチェッカーを受けた。

 Arnage Racingは十八番とされるタイヤ無交換作戦ができず、惜しくもポイント獲得には至らなかったが、Nanin、加納両ドライバーの素晴らしい走りとチーム一丸のピットワークで、気温36度の中での過酷なレースを完走して終えることができた。

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  • P1 #3 B-MAX NDDP GT-R 星野 一樹 / 高星 明誠
  • P2 #10 GAINER TANAX GT-R アンドレ・クート / 富田 竜一郎
  • P3 #7 GAINER DIXCEL SLS ヨルグ・ミューラー / 荒 聖治
  • P14 #50 P.MU SLS 加納政樹 / N.インドラ・パユーング
チーム代表 伊藤宗治
gt-rd3-arnage-16  ヨコハマタイヤ様のおかげで、この暑いタイのレースもどうにか完走することができました。タイまで来てくださったスポンサーの皆様、ファンの皆様、テレビの前で応援してくださった皆様、ありがとうございました。結果からみれば、ポイントも獲りそこなって残念なところもあったレースではありましたが、エンジニア的には、ちょっとシッポを捕まえたというか、この先につながるものの後姿がちらっと見えてきたというか、そういう明るい兆しを感じたレースでした。今回は、今年Arnageメンテナンスの22号車ともどもなんとか完走させたいという、チーム全員の意気込みというか、思いが、こうしてまずまずの結果につながったと思います。次戦も応援よろしくお願いします
ドライバー 加納政樹
gt-rd3-arnage-30  富士のレースからこの灼熱のタイに来て、時期的なこともあって、去年よりかなり過酷なレースでした。特に今回のタイは注目されてる分、それだけの結果を残さなあかん中で、途中までは作戦通り、ナニンくんがプッシュしながら行けたし良かったんですが、ちょっとしたミスや、ちょっとした判断の誤りが招く結果っていうのを思い知らされたレースでした。全チームがレベルの高い今のSUPER GT全の中で、ワンミスもせずにチェッカーを受けることができれば、ポイントとか、その先も見えてくるんじゃないかっていうことを、特に痛感しました。ナニンくんが熱中症っていうんで、ちょっと緊急のピットインやったし、SLSでリアだけ交換ていうのは初めてで、タイヤのグリップ感やバランスがどうなんかなと思ったけど、たいした違和感もなくて問題はなかった。リアがNEWな分どこら辺までのタイムが出せるのか、コンスタントに1分36秒台で走りたいなって思ったんですけど、まあ悪くないペースだったんじゃないかな。ただ、コンスタントに走らなあかん中、500の集団や、300の周回遅れや上位集団なんかをどうかわすかっていうところで、ロスがあったんじゃないかなと思います。最終10Lapのところ辺りからはかなり団子状態ですごかったんですけど、一台でも前へって、プッシュプッシュプッシュって走ってる中で、そういう周回遅れの車とか500の集団をうまく行かせて、順位を上げていける形が一番いいんじゃないかと思うんです。もう少しレベルを上げたいところなんかなと。うちの得意分野であるタイヤ無交換ができないとなると、その状況の中で少しでも前にどう上がっていくのかっていうのを考えて走るしかないわけで。車としてのこともだんだんわかってきてるし、産みの苦しみをやってきた中、少しずつ見えてきてるものもあります。完走はきちっとやっていきながら、次のステップができればと思っています。特に次回の富士はSLSは悪くないんで、しっかり、まず完走して、あわよくばポイントゲットできるように頑張りたい。
ドライバーNanin Indra-Payoong選手
 スタートはよかったですね。ただ多分今回は、エアコンと空気(外気)がなかったでしたね、車の中に。だからどんどん暑くなって、最後は熱中症で、その時にスピードが落ちた。車はよかったですが、一番つらかったのは熱中症でした。次の富士はストレートが長い分ベンツは速いので、前も11番だったし、よくいけばポイントゲットができる。タイは遠いので応援に来れなかったみなさんも、富士には応援しに来てください。
アドバイザー安岡秀徒
gt-rd3-arnage-28  かなり暑いレースウィーク、気温的にもレース的にも、Naninくんの走り的にも、かなり熱いレースウィークが終わりました。はるばるブリラムまでやってきて、いいレースがしたいねという話はしていたので、完全燃焼という感じのレースにならなかったのが少し残念だと思ってます。ナニンくんらしいオープニングラップからの数周、順位を上げていけてはいましたが、ちょっとタイヤにとっては厳しかったんじゃないかなと思います。コースサイドで見て無線で会話をしている立場としては、若いナニンくんに、のびのびと走らせてあげたいということもありますし、あんまりぐちゃぐちゃも言いたくない。SUPER GTは長いレースなので、先を見越したドライビングっていうのは、僕も経験を積んできてわかったことで、まだそこは難しいっていうのはわかっているつもりです。なので、そういうアドバイスを送りつつ…っていう、ナニンくんが持ちこたえつつ自由に走れるぎりぎりのバランスの中で、何とか進んでいってたと思うんですけど、本人いわく、熱中症になってしまって、そこで大きくタイムロスをして、そこから大きくポイント争いから外れてしまったっていうのは、ちょっと残念でしたね。ただ、そのあと加納さんは本当にしっかり走ってくれて、最終ラップに加納さんの自己ベストが出たんですけど、最後までプッシュしていける走りっていうのは、一周たりとも無駄にしないレースをしたいと思っている、まだまだ勉強中の僕たちとしては、理想的でした。後半そういうレースができたことは、しっかりと得るものがあったと思うので、そういう意味では次につながる週末になったんじゃないかと思います。次の富士のレースも、加納さんとナニンくんがドライビングして、僕やチームがサポートをするという形なので、今回みんなが味わった悔しさを次に返せるように、また三人で頑張っていきたいなと思います。また次に応援よろしくお願いします。暑い中お疲れ様でした。

gt-rd3-arnage-22  応援してくださった皆様方には深く感謝しますとともに、8月8日~8月9日に富士スピードウエイで開催される次戦富士ラウンドにおきましても、応援のほど宜しくお願いいたします。

Arnage Racing 2015 SUPER: GT Race report


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