ANABUKIレーシング・チーム 1995年 全日本F3選手権シリーズ第2戦 レースレポート 「ああ無情、今季初ポールポジションは雨に流れて」の巻 その1 4月9日、静岡県の富士スピードウェイで開催された全日本F3選手権シリーズ第 2戦「第19回インターナショナルフォーミュラカップレース」の予選で、ANABU KIレーシングチームの本山 哲選手(ダラーラ395/無限)は今季初のポールポ ジションを獲得、決勝での活躍にも期待が寄せられました。 ところが、決勝当日の午後から降り始めた雨でコースコンディションは最悪の状態 となり、レース主催者は午後2時30分にF3の決勝レース中止を発表。 残念ながら、童夢チーム&本山選手の今季初ポールポジション記録は、春の雨に流 れてしまいました。 <公式予選> 第2戦の舞台となる富士スピードウェイは、世界中でも1、2を争う高速サーキッ トといわれますが、その特徴は何と言っても1.45kmにおよぶ長い直線。もちろん 国内最長のメインストレートです。 富士を闘う基本は、このストレートでいかに車速をを伸ばせるかにかかってきます が、100Rや最終コーナーなどの高速コーナー区間でのマシンの安定性もおろそか にできません。 1.直線区間での空気抵抗を減らし、 2.コーナリング時にマシン・ボディを路面に押しつける下向きの空気の力(ダウ ンフォース)を得る という、空気力学(エアロダイナミクス)的に相反するセッティングの課題に、どの チームも頭を悩ませるのですが、逆にそこがチームのウデの見せどころです。 今季の全日本F3で大勢を占めるマシンは、「ダラーラ」というイタリアのマシン 製作会社の既製品ですし、また厳しいレギュレーションのなかではマシンを自分好み に変更できる範囲は、前後ウイングの角度や大きさ、そしてマシンの足周りの調整な ど、限られてきます。 しかし、マシン到着の遅れからほとんどテストが行えなかった前回と違い、今回は 準備もバッチリ! 開幕戦のデータを活用しつつ、木曜日からの練習走行でさらに磨 きをかけたマシンで、チームと本山選手は土曜日の予選に臨みました。 富士の長いメインストレートで、後続車が前車のうしろにピタリとつける「スリッ プ・ストリーミング」という走方がよく見られます。 こうすると、前車のおかげで空気抵抗が少なく、エンジンパワーをセーブしたまま 前車を追走できるので、直線区間の終わりで追い越すことが可能となるのです。 前車のスピードが速い場合、その効果は倍増となります。 予選が始まると、どのドライバーも自分より少しでも速い、あるいは同程度の速さ を持つドライバー&マシンの後ろにつこうとして、コース上は大混雑です。 軽く走ってマシンの調子を確認した本山選手は、いったんピットに戻ってタイミン グを図り、再びコースへ。いよいよタイムアタック開始です。 本山選手が狙ったのは、今季最大のライバルで前回の勝者、デ・ラ・ロサ選手でし た。 2台は着かず離れずの間隔をおいて走行していましたが、本山選手は最終コーナー でロサ選手のうしろにピタリとつき、充分に車速ののったところでロサ選手をパス! 1分31秒358のタイムで、本山選手の名前がラップボードの最上段に躍り出まし た。 続く周回では、ロサ選手が本山選手のうしろを狙いましたが、それを許せばロサ選 手にタイムを逆転されかねません。スリップ・ストリーミングは「使っても使わせな い」のが、予選タイムアタックの鉄則なのです。 ロサ選手の追撃をかわそうと、本山選手は逃げに逃げました。 その結果、本山選手は前周のラップ・タイムをコンマ3秒も上回る1分31秒02 7をマーク!! 他車のスリップを使わず、単独の走りで叩きだした本山選手のこの タイムには、うしろにいたロサ選手も「ちょっと追いつけなかった」とコメントして います。 午後の予選2回目で、道上 龍選手が本山選手に迫るタイムをマークしましたが、 コンマ07秒差で本山選手には及ばす。 結局、本山選手自身はF3で二度目、童夢チームとしては初めてのポールポジショ ンが決定しました。 その2へ続く