全日本F3000

童夢インサイドレポートvol.2

◆童夢インサイド・レポート 第2回 「鈴鹿タイヤテスト 二日目の巻」
 鈴鹿タイヤテスト二日目は、曇っているものの雨の心配はなく、時おり陽がさす天候。路面温度も20度前後と、絶好のタイヤテスト日和だ。
 いい気分で初日を終えたクルムはもちろん、光貞もマシンとともに復活。ようやく本来の軌道に戻ったテスト二日目は、クルムが新しいサスペンション・セッティングの調整とタイムアタックの練習、光貞がロングランによるタイヤの磨耗テストを担当した。
 背中一面テーピングが痛々しい光貞だが、今はなによりもマシンに乗って走ることが、いろんな意味での自信回復剤になるのだろう。さすがに昨日は落ち込みが激しく、「お前が昼メシを食べへんなんて、雪でも降るんとちゃうか!」と松本監督や佐々木正マネージャーにおちょくられても、何も言い返せない超ドツボ状態だったが、マシンを調整しながら36周を走り終えて、大分元気を取り戻してきたらしい。大好きだというスパゲティをしっかり食べて、午後からのロングランにひかえる。
 クルムの方はタイヤ比較テストと同時進行で、サスペンションのテストを午前中に行った。これは、次の富士戦へ向けたテストだ。
 今季開幕前に路面舗装をしなおした鈴鹿と違い、富士スピードウェイの路面はとにかくバンピー。跳ねを抑えるのに各チームそれぞれに工夫しているのだが、童夢ではリアの足回りの動きを向上させることで、バンプ対策の強化を図ったのだ。
 具体的には、新しいロッカアームとダンパーのバネ三種類をあれこれ試しながら、5周ずつ走行し、ベストと思われるセッティングが決まったところで、クルムは今回のテストで初めてのロングランに挑戦した。
 ガソリンも多めに積んだ決勝レース仕様で、平均して1分46秒台前半か45秒台後半を行き来するまずまずのタイム。クルム担当のメカニックも「やっぱりコイツ速いわ」と改めて感心している。
 20周の全力疾走を終えて帰ってきたクルムは、「首が痛いぃ」と唸りつつも、表情は明るい。午後はいよいよタイム・アタックの練習だ。
 今回のテストにダンロップが持ち込んだタイヤは、二つのファミリーに大別される約400本。それぞれのファミリー、つまり構造だが、がまたいくつかの種類に分けられ、その中から最終戦のコンディションに最も合うと思われるセットを探し出し、それをもとに実際に最終戦で使われるタイヤを開発するのである。
 予選を想定した走行のために、昨日からの流れで選び出されたタイヤは3種類。そのなかでも、現時点で最良と思われるものを、こちらは決勝セッティングでの磨耗度をチェックするべく、光貞がロングランに入っている。
 クルムは10?のガスを積み、5周ずつのタイム・アタックを繰り返す。
 一度はいってリアのダンパーを調整し、新しいタイヤにはきかえて再びコースへ。
 1分44秒前半のタイムを出したところで、今度はリア・ウイングを小さめのものに変えてダウン・フォースを減らしたら、いっきにコンマ5秒以上アップの1分43秒421をマークした。
 他のチームでも予選を想定した走行に入っており、終了30分前になるとコース上は本番さながらのタイムアタック合戦の様相を呈している。
「こうなったら意地の張り合いやなあ」と、松本監督は刻々と変わるラップモニターに嬉しそうな声を上げているが、汗だくのクルムは眼をギラギラさせてモニターを睨みつけるだけだ。
 1分43秒421を出したあと、それを上回るタイムを出せないクルムに、チームはややソフトめのタイヤで、またリア・タイヤにキャンバーをつけてみたら、さっきのタイムを上回るほどではないが、なかなか調子がいいという。
 そこで今度はややハードめのタイヤでタイムアタックに出してみた。
 つまり、2mのハードルを飛べない選手に、2m50のハードルを飛ぶ練習をさせる。
 当然、2m50のハードルを飛ぶことはできないが、次に2mにハードルを戻した時、最初よりも同じ2mが低く感じられて、難なく飛べるようになる、という方法なわけだ。
 ところがなんと、クルムは2m50をいきなり飛び越えてしまったのだ。
 ハードめのタイヤでトライした1周目に1分42秒991、2周目に42秒602、そして3周目に42秒983という、3周連続42秒台をマークして、それがまぐれでないことを証明し、肩で息をしながらピットに戻ってきたクルムを、松本監督はじめスタッフが思わず拍手で出迎えたのだった。
 このように、概ね順調のうちに鈴鹿タイヤテストは終了した。
 11月の最終戦用にはクルムが最後にはいたタイヤが開発の軸になりそうである。
 ただ、レース想定のロングラン・テストをしていた光貞のマシン(本当はアピチェラのマシンだが)が、いよいよこれからという時に1速ギアが壊れてしまい、最後までテストを続けられなかったのが気になるが、クルムの急成長といい、新しいセッティングを試したマシンの仕上がりの好調さといい、林代表のいう「最終戦1-2フィニッシュ」への手応えは充分に感じられた。
 ひょっとすると最終戦を待つまでもなく、次の第9戦で童夢2台が表彰台に上り、またアピチェラ&童夢の94年タイトル決定の瞬間にファンの皆さんは立ち会うかもしれない。
 第9戦富士ファイナルは、11月12日(土)に予選、翌13日(日)に決勝が行われる。
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 というわけで、初めての童夢レポートをお届けしましたが、いかがだったでしょうか? 今回の原稿裏話はFMOTOR4Fの会議室2にアップしてます。もしよろしければ、そちらの方も覗いてみてください。皆様のご意見もFMOTOR4Fでお待ちいたしております。


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