Rd.6 Fuji [ FUJI INTER F3000 ] 1994.9.4 (1) 《サーキットの情景》 ---------------------------------------------------------------------------- ■静かなる自信 Text/福田 陽一(Yoichi Fukuda) 勝ったのは、ギルバート-スコットだった。本当に危なげ無い完璧な走りだった。 スコットと言えば、シリーズ第2戦として行われた前回の富士で見事なポール・ト ゥ・ウインを成し遂げたのが記憶に新しい。今回も同じ富士とは言え、前回とは全く 条件の違う“熱い”天候になった。まずは、予選。1秒に9人が入り乱れる激戦の予 選を“難なく”制したのは、やはり彼だった。そして、決勝。ジクナルが変わると、 彼は“難なく”ポール・トゥ・ウインを勝ち取った。 いま、思い出される彼の表情がある。ポール・トゥ・ウインを成し遂げた前回の富 士でスタートを待つ彼の表情である。その時、彼は開幕戦の失敗を繰り返してはなら ないと緊張しているはずだった。ところが、彼の顔はその日の天候の様に“静か” だった。自信さえ伺わせるものだった。考え過ぎなのかも知れない。特に、表情に出 さないのが彼の普段の姿なのかも知れないのだ。しかし、あの静かにスタートを待つ 姿が妙に不気味に思えてしまった。 「とても、落ちついていますね」今日、彼のスタート前の表情を伝えるレポートを 聞いて、その時の彼の顔を思い出さずにはいられなかった。 誰一人として、彼の“静かなる自信”に立ち向かえなかったことに、ボクは幾ばく かの不安を覚えてしまう。この後レースは鈴鹿に舞台を移すが、彼は決して鈴鹿でも 遅くはない。その上、この富士での2戦も残している。 ギルバート-スコットは、いま静かにシリーズ第2位で第6戦を終える。 ---------------------------------------------------------------------------- ☆ 詳しいレースの模様は、 (2)《F3000レースレポート》をご覧ください。 ---------------------------------------------------------------------------- 文/福田 陽一(NBG01300)