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F3第8戦鈴鹿レースレポートドライバー細野

           ’90ミリオンカードカップレース
            ROUND 3 鈴鹿
              全日本F3選手権第8戦
              参戦レポートNO18
                    レーシングドライバー 細野 智行
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 90年F3シリーズも、今回で第8戦目を迎えることになりました。季節も秋となり
、段々過ごしやしくなってきたようです。
 今年のF3のレースは、毎回優勝者が変わる程の激戦となり、まさに戦国時代になっ
てきました。ここのところ思うようなレース展開にもっていけなかった僕も、今回は好
きな鈴鹿のコースでもあるので、気合の入れ方がいつもと違います。とゆうか、マシン
のトラブルも少なくなり自分としても、走りにひとつの自信を感じてきたからなのです
。
 思い起こせばちょうど1年前、やはり9月の鈴鹿のレースの時でした。木曜日の練習
中に、デクデーカーブでオーバースピードでコーナーに飛び込み、正面からクラッシュ
パットに突っ込んでしまい首を強打し、むち打ち症で無念の予選落ちとなった苦い思い
でのレースでした。あれからもう1年僕も少しは大きくなった気がします。そして、こ
の9月のレースの思い出を、嬉しかった思い出に塗り替えたい。今年の9月は、負けま
せん。
 9月21日(金) 台風19号の影響で、コース脇の土手が土砂崩れをおこしてしま
         い木曜日の練習は東コースのみとなりました。まるで今回のレース
         が荒れるのではないかと思わせるようなこの事件でした。
          金曜日のテスト走行は2回ありました。もちろんフルコースです
         。僕は、いつものように中古タイヤをはいてコースイン。コースに
         出たとたん凄く滑るのを感じました。S字、逆バンクそして西コー
         スへ行ってもタイヤがなかなかグリップしてくれません。これは、
         タイヤのせいではありませんでした。連日の豪雨でコースのアスフ
         ァルトの細かな隙間にすっかり砂などが詰まってしまった為だった
         のです。いつもの2/3程度のグリップ力でした。
          僕はこの日、何度となくピットインを繰り返し、ひつこい程にマ
         シンをセットしました。「どうせ路面も荒れているしタイムも出な
         い。」「他は新品タイヤでガンガンアタックしているのに・・・」
         などとは思わず、「この時こそ、いいセッティングを出すチャンス
         だ」と自分に言い聞かせ、僕はひたすらセットアップを繰り返しま
         した。
          確かに回りのチームは、どんどん新品タイヤを使い良いタイムを
         出しました。焦らないと言ったら嘘になるでしょう。しかし、僕に
         は自信がありました。「セットが決まれば、絶対にいいタイムを出
         せる!!」と思ってました。
          この日のタイムは、2分07秒95。クラス12位のタイムでし
         た。決していいタイムではありません。でも、僕は満足していまし
         た。それはタイムでなく、セッティングにです。初日、乗り始めて
         から比べると凄くマシンバライスが翌なっていました。
         「あともう少し!!」自分の中で、そう思いました。この日はメカ
         ニックさんもあまりいい顔をしてませんでした。何か者足りなさそ
         うでした。自分にもその様子が、よくわかりました。しかし、僕は
         一人で納得していました。そして、廻りの人は僕が走った時に分か
         ってもらえると思ってました。
 9月22日(土) 予選日のこの日は、朝8時から20分間のフリー走行がありまし
         た。僕は予定通りこのセッションで新品タイヤをはいて走行をする
         ことにしました。最初は中古タイヤで走り、1~2周エンジンの調
         子をみたところで新品タイヤに付替ました。
          1周目、今までと同じように走っているのに、凄くグリップを感
         じました。「マシンバライスが凄く決まっている!!」すぐにそう
         思いました。1周目は06秒3、2周目に05秒7、3周目には0
         5秒5のタイムがでました。僕は間違いなく手応えを感じていまし
         た。
          久し振りに「よ~し」の言葉が、口から出ました。2分05秒5
         9のタイムは、このセッションの2番手のタイムで、決して悪いも
         のではありませんでした。
          3時間後、公式予選が始まりました。僕はA組で、始めの組でし
         た。とにかく、05秒台を目標に走りました。ところが、走り始め
         て3~4周したあたりからでした。何だかエンジンの回転が思いの
         です。メータ類を見ても、異常はありません。僕はタイムアタック
         を繰り返しました。タイムは2分06秒台。あと少しです。しかし
         、何だか変なのです。どうもいつもとエンジンが違う感じがするの
         です。タイヤは段々グリップが無くなり、残り時間も無くなってき
         ました。今回の予選は、何も無ければピットに入らないつもりでし
         た。最後の最後まで、タイムアタックをする予定でした。だから、
         僕はひたすら走り続けました。ところが、ラスト2周ぐらいの時で
         した。エンジンから少しノッキング音が出始めたのです。そして、
         ラスト1周。最後のアタックの時でした。ついにその音は酷くなり
         、僕は仕方無くペースを落とそうとしました。(僕のマシンはコン
         ピュータのマップが手元に無い為、車のぺーすを落とすしかないの
         です。)
          その時でした、突然リヤの方から“ドーン”と音がして、エンジ
         ンが壊れてしまったのです。
          僕は,その場でストップ。そして間もなく予選は終了しました。
         僕はオフィシャルに、何を話しかけられても“ぼ~”っと立ってい
         るでけでした。タイムを出せる自信はありました。しかし、またト
         ラブルです。本当にこの時ばかりは、一瞬何もやりたく無くなりま
         した。ピットへマシンを引いて戻ると、そこにはメカニックの人影
         はありませんでした。すでにB組の予選が始まっていたのです。
          計測出来たタイムは、2分06秒60でクラス10番手でした。
         信じられませんでした。そして、悔しくて悔しくて・・・・・・・
          この日の僕の悔しさは、どうにもおさまりませんでした。どうに
         もならないトラブルです。原因は、はっきり分かっていません。し
         かし、充分なパワーが、出なかったようです。どうして、肝心なと
         きに、トラブルが出てしまうのでしょうか?
          A組でも、B組でもライバル達は、率先していいタイムを出して
         しまいました。「自分だってあれぐらいのタイム・・・・・・」し
         かし、結果は結果です。今回ばかりは、「自分には、もう運がない
         のではないか」と弱気になったり、「まだまだ、負けるもんか」「
         オレは速いんだ」と強気になったりで、決勝へ向けてのコンセント
         レーションには苦労しました。それだけ、ショックが大きかったの
         でした。それだけ、自信がありましたから。
          でも、ドライバー。だから、諦めないことにしました。確かに、
         “ガックリ”しましたが、、でも僕は諦めない。とにかく最後まで
         諦めず、頑張ることにしました。長かった、土曜日が終わります。
 9月23日(日) 9月のレースには珍しい程3日間ともいい天候に恵まれました。
         吹く風は、少し“ひんやり”してちょっとだけ、秋を思わせます。
          決勝日のこの日は、いつもと違って朝のフリー走行はありません
         。AM10:00、僕はサーキットに着きました。エンジンを載せ
         替えた僕のマシンは、シートを被ってピットに止まっていました。
         僕の気持ちはすっかりやる気まんまんになっていました。目覚めの
         いい朝でした。僕はおもむろに自分のマシンに近づき、「今日もよ
         ろしくな」「頑張ってくれよ!」50台近くあるF3マシンでも、
         自分のマシンはやっぱり愛しいものです。
          12時過ぎ、レーススタートプログラムが始まりました。ピット
         前にマシンを並べると、マシンによって集まってくる人の量が違う
         のが良く分かります。まさに、これこそ本当のレースの世界そのも
         のなのでしょう。隣のピットでは、トラブルが出てしまったマシン
         を、メカニック達が慌ててチェックしていました。それを横目に、
         「絶対、トラブルが出ませんように」と祈る僕でした。
          5分前のウォーミングアップランが始まりました。エンジン・シ
         ャーシの状態をチェック。再び僕はピットに戻り、ゆっくり自分の
         ピットの前にマシンを止めます。この時から、スタートするまでは
         普段の時と、時間の立ちかたが、違って感じます。それが、早いと
         か遅いとかではなく。何かが違う感じがするのです。
          フォーメーションラップが終わり、僕はグリットにマシンを止め
         ます。そして、シグナルが赤にエンジン回転は5000rpm“ス
         タート”この一連の作業ばかりは、経験が多い者の勝ちだと思いま
         す。とにかく、どんなに長いレースであろうと、どんなカテゴリー
         だろうと、どこのサーキットであろうとスタートはひとつのレース
         で、たいがい1回だけですから本当に一発勝負かもしれません。
          レースの方は、スタートで2台を抜き20位から17位、15位
         そして13位と順位が上がり、最終的に今シーズン最高の9位に入
         ることができました。今回は、木曜日の事件の時に予感した通り、
         本当に荒れたレースになりました。リタイヤ車も多く、自分として
         も完走できたことは大変嬉しく思いました。しかし、次回はこれで
         は気が済みません。今回のレースを充分自分なりに反省し、ベスト
         を尽くしたいと思います。
 クラッシュ、予選落ちの思い出をすっかり忘れて一生懸命走ったこの9月の鈴鹿のレ
ース。今度こそ優勝の思い出にしたいと思います。
 関係各スポンサーの皆様、今回もご支援ご協力頂きまして本当に有り難うございまし
た。
 次回も一生懸命頑張りたいとおもいます。
                                 細野 智行
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                 お知らせ
 毎回、ドライバー細野智行の参戦レポートをご覧頂きまして誠に有り難うございます
 ここで各スポンサー及び関係者の皆様に、我がVANジャケットレーシングチームの
90年度参戦予定の変更のお知らせをしたいとおもいます。
 当初予定しておりました、F3シリーズ第9戦(西日本サーキット)の出場を変更し
F1日本GPのサポートレース。パナソニックF3スーパーカップレースへ出場する運
びとなりましたので、ここでご報告したいと思います。このレースは、シリーズ戦のタ
イトルはかかっていないのですがF1GPとあって毎年10万人以上の観客を数え、ま
た細野が得意としているコースでもあり充分意味のあるレースが出来ると判断し、エン
トリーを決断いたしました。
                                  以上
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                提供:July 9 RACING
                   Flying Saucer RACING
                        PFG01270/鈴木 規之


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