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CABIN鈴鹿1000kmリリース

CABIN RACING TEAM RACE INFORMATION
                        1990年8月29日
<第4戦 全日本鈴鹿1000kmレース>
灯火ともらず  カーボンディスク採用、戦力アップを確認
和田孝夫/中子修/マウリジオ・サンドロ・サラ組
予選5位 決勝リタイヤ
 前回のシリーズ第3戦、富士500マイルレースで総合6位に入賞、勢いに乗るキャ
ビン・レーシングチームは、今回のレースで大幅な戦力強化を図った。前回のレース
でもブレーキ性能とその寿命は大きな問題であった。現在、スポーツプロトタイプカー
選手権のレースにおいて、従来型のスチールディスクブレーキと、カーボンディスク
ブレーキの性能差は明らかとなっている。現実問題として、カーボンディスクを装着
しないマシンには優勝争いに加わる権利はないと言ってもいいほどだ。しかし、カー
ボンディスクは非常に高価なパーツである。カーボンディスクを装着して1シーズン
を戦うと、スペアカーのシャシー1台分にも相当するコストがかかるとさえ言われて
いるほどだ。
 なお、チームは炎天下の長い闘いになるこのレースに備え、3人目のドライバーと
してマウリジオ・サンドロ・サラ選手を起用した。
<体制>
キャビン・レーシングチームwithル・マン
 ドライバー :和田孝夫
       :中子 修
       :マウリジオ・サンドロ・サラ
 チーム監督 :武士俣学
 マシン   :CABIN R90V/NISSAN
今回運びこまれたマシンの改良点は以下の通り。
1)従来のスチール製ディスクに替えて、カーボンディスクを装備した。
2)サスペンション、通気孔等の改良は前回の富士500マイルにおける仕様に準じ
たもの。より車高を下げると同時に軽量化が図られている。
3)決勝レースでの夜間走行に備えて、前照灯の整備。
<公式予選>
 マシンにはまず、今回から新たにチームに加わったサラが乗り込み、レース用タイ
ヤを装着してコースイン。足慣らしをした後、1分56秒台を出してピットに戻る。
マシンを引き継いだのは中子。中子は1分57、58秒台の安定したペースでマシン
の感触をつかみ、セッション残り30分のところでピットインして和田に交代する。
和田は、そのままコースインして1分55秒台を記録、ピットに戻る。ここで1セッ
ト目の予選用タイヤが装着される。また、フロントカウルがよりダウンフォースの強
い型のものへ交換される。この2種類のカウルはラジエーターのアウトレットの形状
以外にほとんど外観上の差はないが、微妙にダウンフォースの強さが異なるのだとい
う。
 タイムアタックにかかった和田は、1分52秒346を記録してトヨタ、ニッサン
のワークスマシンに次ぐ5位へと進出する。さらにチームは2セット目の予選用タイ
ヤをキャビンR90Vに装着。和田を2回目のタイムアタックへと送り出した。和田
のタイムは1分52秒062。タイムは更新されたものの、順位を上げるには至らな
かった。
 作戦通り2セットの予選用タイヤを使いきったチームは、午後のセッションには出
走せず決勝レースへ備えることになった。
和田孝夫の談話:
 「高速コーナーで速く走ろうとしてパワーをかけるとアンダーステアが出てしまう
傾向があります。130Rでは縁石に乗ってしまいました。でも、カーボンディスク
に替えて本当に乗りやすくなりました。スチームディスクとは別物ですよ。今までは
思いきりペダルを踏みつけなければならなかったのが、必要ないんです。それでいて、
ブレーキングポイントがずっと深くなる。」
中子 修の談話:
 「カーボンディスクはいいですよ。乗りやすいです。決勝では、燃費を守ってガッ
チリ走るのがぼくの役目です。」
マウリジオ・サンドロ・サラの談話
 「状況によってマシンの姿勢が不安定になるけども、それを除けば素晴らしいマシ
ンに仕上がっているよ。」
武士俣監督の談話:
 「カーボンディスクのおかげで、決勝ではパッド交換は1回でいけると思います。
マシンの性能は格段に進歩しました。金曜日にちょっとした燃料系のトラブルが出た
んですが、その対策も完璧に済んで、今日の予選で確認もしています。いままで、こ
うしたトラブルは土曜日に出て、必至に対策して日曜日ぶっつけ本番でレースする、
というケースが多かったですから、流れがいい方に変わってきたんだと思います。前
回の6位入賞で勢いがつきましたね。予選のタイムは予想より速かったです。52秒
台に入ればいいやと思っていましたから。決勝では、和田選手にきっちり走ってもらっ
て、中子選手とサラ選手で調整する、という作戦です。無理はしませんが、ワークス
についていきたいですね。」
<決勝レース>
 鈴鹿は晴天となった。8時30分より行われた決勝前のウォームアップ走行では、
和田が好調に走り、総合4位のタイムを記録した。決勝レースへ向けてチームの意気
は上がった。
 スタートを担当するドライバーは和田。和田は熱対策のためクルースーツを着込ん
でコクピットに座る。「きっと表彰台に上がるから、ビールをたくさん買っておいて。
」と和田は言う。
 しかし、決勝レースは皮肉な展開を見せた。和田はローリングスタートで出遅れて
後退、9位でレースを始める。しかし1周を終えた時点で体制を整え、積極的なドラ
イビングで、前にでたポルシェ勢に襲いかかる。2周目1コーナー手前で1台のポル
シェをかわし8位へ進出、追い上げが期待された。その時だった。
 ピット内のTVモニターにスピンしてクラッシュしたキャビンR90Vの姿が映し
出された。ピットは騒然となる。TVモニターから破損箇所が読み取られる。「フロ
ントカウル! ホイールも駄目だ!」ピット内に飛ぶ声に応じて、交換修理用のパー
ツがピットロードへ運び出され、傷ついたマシンを迎える準備が整えられていく。
 和田はスロー走行でようやくピットに戻ってきた。フロント右側を破損しており、
サスペンションのアッパーアーム、ロワアーム、タイロッドが折れ曲がっており、アッ
プライトが割れている。メカニックはマシンに飛びついて部品の交換を開始した。
 修復作業には約50分かかった。キャビンR90Vはようやく走行可能な状態にな
り、再び和田がマシンに乗りこんでコースに復帰した。この時点でトップからは18
周遅れとなっていた。
 和田は2分6秒台のペースから1周毎にペースを上げていく。復帰2周目には2分
2秒台、3周目には2分1秒台、4周目には2分台、5周目にはトップグループに遜
色ない1分59秒台を記録。追い上げが始まったかに見えた。
 しかし、13周目を走っていたキャビンR90Vのリアカウルが脱落。ピットは再
び対策のために騒がしくなる。前回のアクシデントでリアカウルとリアカウルのマウ
ント部が壊れていた。脱落したのは交換した新品のリアカウルで、ピットには一部が
破損したリアカウルが残ってはいたが、マウントが壊れているため、もはやこのカウ
ルを取り付けてレースを続けるのは無理だという判断が、マシンがピットへ戻ってく
る前に下された。
 マシンがピットに戻ってきた際にオイルが発火、発煙したため消火器を使う事態と
なったが、大事にはいたらなかった。これは、リアカウルが脱落する際にオイルキャッ
チタンク付近のオイル系配管を損傷してオイルが洩れ、ピットイン時にそのオイルが
ターボチャージャーのタービン熱で熱せられたのが原因。
 キャビン・レーシングチームの鈴鹿1000kmはあっけなく終わった。しかし、
カーボンディスク採用による戦力アップは十分に証明されたとあって、チームの表情
はけっして暗いものではなかった。次回、SUGOでの雪辱を期して、チームは機材
の撤収にかかった。
和田孝夫の談話:
 「表彰台に上がるつもりだった。本当にみんなに申し訳ない。最初のアクシデント
で、やっぱりマシンのバランスは崩れていたね。」
武士俣監督の談話:
 「最初のアクシデントで、リアカウルのマウントが壊れてしまったんです。それで、
タイラップとガムテープでカウルを固定してレースを再開しました。そのままずっと
1000km走るのは無理ですけど、当然途中ピット作業がありますから、その度に
補強していけば十分だと計算していました。でも、やはりアクシデントの影響でマシ
ンのバランスが崩れていたようで、振動も出ていたんでしょう。思いのほか早く、カ
ウルが脱落してしまった。でもレースに復帰してから1分59秒台も出ていますから
ね。マシンの状態が良かっただけに本当にもったいなくて残念です。マシンの実力は
十分に分かりましたし、先日の菅生でのテストでも好タイムが出ていますから、第5
戦を見ていて下さい。」
    提供:CABINレーシングチーム事務局


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