全日本F3000

F3000:【レースレポート】Round3 SUZUKA

■ロス!今期2勝目 右京、手堅く2位!チャンピオンに王手■
 レースに「もしも」が許されるのなら・・・・。
「スタートが『へたくそ』でしたね」とレース後のインタビューで右京はしきりに
そのことを気にしていた。
 「もしも」右京がスタートを彼の思うスタイルで成功していたとして、レースは
彼のものとなったのだろうか。
 ロスとそのチームは、レース前の僅かな時間で一つの賭けに出た。その賭けとは、
リヤのウイングを1枚外すと言う荒業だったが、その目的は、ストレート速度の確
保だと思われた。しかし、この荒業は彼にコーナーの悪魔を戦うことを強いること
となるのだった。ロスがコーナーに進入してくると、そのすぐ後を右京が来る。ロ
スはコーナーの最初の縁石に触れると、その後を行く右京とは比べ物に成らないほ
ど、大きな円を描くラインをトレースしていく。もちろんロス特有のドライビング
スタイルも多分に有ると思われるが、後ろを行く右京のコンパクトで無駄のない
シャープなコーナリングラインとは余りにも違う。今日の鈴鹿には確実に「2」本
のラインが存在していた。
 「無理に行こうと思えば行けたのですが、星野さんが止まっているのが見えて、
確実にポイントを取ることにしました。」と右京。ギンブルに出ても優勝を狙った
ロスと、確実にタイムを出せるセットアップを選びポイントの欲しかった右京。こ
の瞬間レースは1つの結果を目指して既に動きだしていたのかも知れない。2人は
全く違う「2」つの物を目指していたのだろうから・・
 もっとも「もしも」右京が守りに入らずにギヤンブルに出ていたら、もっと展開
は変わっていたかも知れないが・・。
 この「もしも」は非常に興味深い。
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1991 ALL JAPAN F3000 CHAMPIONSHIP
ROUND 9
MILLION CARD CUP RACE
Round3 SUZUKA
SUZUKA CIRCUIT
28-29 SEPTEMBER 1991
ミリオンカードカップレースRound3鈴鹿
全日本F3000選手権シリーズ第9戦
Report/Youichi Fukuda[NBG01300]
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 日曜の鈴鹿はレース前には、少し雲が出て気温が下がったものの、金曜日までの
台風の事など思い出させないほどの空に恵まれた。シリーズのチャンピオン争いを
持ち込んだサーキットは一種特別な雰囲気に包まれていた。優勝を狙っている、ポ
イントリーダーの片山は、金曜日頃までは、富士で起こしたクラッシュを気にして
いる様子だったらしいが、レース前のインタビューでは、今度はセットアップの選
択に悩んでいる様だ。
 一方、テストや予選ではかなりナーバスになっていたらしい星野は、今日は予選
6番手ということもあってか、ヘルメットごしの表情にも、それほどピリピリした
感じは無い。
 フォーメーションラップを終了して、片山が今年の鈴鹿の定位置のポールにマシ
ンを止める。その右手に第6戦菅生で見事優勝を飾ったチーバーがマシンを止める。
 以下、中谷、小河、服部、星野、ダニエルソンの順でグリッドへ。
 そして、シグナルがグリーンになる。この瞬間から数分でレースは本来その骨格
と成るべき多くの素材と機会を失うこととなる。第1コーナーに最も速く飛び込ん
だのは、ポールの片山では無く、その右手で機会を伺っていた、チーバーだった。
続いて片山、服部の順。星野は6位に留まった模様。
 ここで早くも、古谷がヘアピンでスピン。脱出不可能の模様でドライバーはマシ
ンを離れた。直後、シケインでキャビンカラー!。サンドラップに捕まりリアのタ
イヤはもがく様に暴れるがマシンはびくともしない。星野はこれでリタイア、戦列
を離れる。まだ餌食は続く2周目、2コーナーでアーバイン、スピン。そして、レー
スの骨格は確実に完成していく。
 大混乱後のコース上はチーバーを先頭に、その1秒8後を片山、その後に服部、
中谷、ダニエルソン、小河、バイドラーと続く。
 この後、片山は先行するチーバーを目に見えてぐんぐん追い詰めて、4周目には
その差1秒058に。続く5周目には、1秒を切る0.617秒までに接近。6周
目には、完全にチーバーを射程距離内に入り真後ろに付く。
 片山は、コーナーでは車半分位違うラインを走行。チーバーのミラーには、片山
の姿が目いっぱい映り込んでいるはずだ。
 一方、この2台と3位以下との差は既に4秒8と開いており、もはや2台は違う
レースを戦っている様でもある。
 7周目のヘアピン。片山思い切ってインを付く。片山よりアウトのラインを取っ
ていたチーバーだったが、巧みに押え込みに成功。順位は変化しなかった。
 この後、片山は、1コーナー進入で右に左に1回車を振って牽制するが、チーバー
は直線スピードに絶対の自信を持っており、ピクリともしない。
 8周目になると、3位以下の服部、中谷、ダニエルソン、小河の集団は0.8秒
の等間隔で周回、一瞬のミスも許されない状況となる。
 片山は12周目にも130R進入で、一瞬マシンを左に大きく振ってチーバーの
バックミラーにキャビンレッドをたたき込む。
 ブルーとレッドのマシンがサーキットを駆けると観客席はその度に立ち上がりコー
ナーの先を見つめる。それほど、いつ順位が変わってもおかしく無い状態が続く。
 このころから3位以下に変化が生じ始める。まずは13周目、3位の服部に中谷
が急接近。ところが、20周目にダニエルソンが中谷をあっさりパスこの2台に割っ
て入る。そのダニエルソン、29周目シケインで服部をパス。今度は、1コーナー
で服部を中谷がパス。服部はこの後、急激に速度を落してバイドラーにもパスされ
る。
 21周目、最終コーナーをチーバーのテールいっぱいに付けて立ち上がってきた、
片山。観客席は、今度こそはと期待に立ち上がっての歓声に揺れる。第1コーナー
の進入直前右に左とマシンを振って2回牽制のあと、アウト側からアタックするが、
チーバーはぐんぐん片山を引き離して前へ進む。23周目に今度はイン側からアタッ
クするがこれも失敗。32周目にはヘアピンでブレーキを遅らせ、急接近するが、
これも駄目。コックピットの中のヘルメットが首を傾げる。レースの大部分を占め
たチーバーと片山のバトルは一見退屈なものに思えるが、実際には激しい面白いバ
トルの連続だった。
 そして、レースはこのままチェッカーとなる。ところが、ここで5位を走行して
いたバイドラーが、ピット前でストップ順位を大きく落し10位に転落。これで、
服部は後半苦しいレースに良く耐え6位を得た。
 レースは、結局チーバーが片山を押えて表彰台の中央に立った。奇しくも、同日
行われた、F3のレースと同じ2番手から飛び出した選手がポールを押えて勝つと
いう展開で幕をとじた。これは、去年来たあのF1ドライバーに本当は、右と左ど
ちらが有利なのか聞いてみる必要がありそうだ。
 * 文中に使用しました周回数はタワー表示に1周加算したもの、タイムは全
  て手元(ストップウォッチ)計測によりますので、公式の記録及び結果では
  ありません。出来る限り正確を期しておりますが、間違いがあった場合は申
  し訳ありませんが御指摘ください、訂正させて頂きます。
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                       レポート/福田 陽一[NBG01300]


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