CABIN RACING TEAM RACE INFOMATION 1990年5月30日 第4戦「オールジャパンF3000シリーズラウンド2鈴鹿」 ゼロから出直し 星野、片山得点ならず 原 貴彦、F3初優勝を飾る 星野一義 予選B組2位 16位 片山右京 予選A組2位 決勝リタイヤ マシンの不調をなだめながら松本選手を追走していた星野が、S字でコースアウト して、キャビン・レーシングチームの戦いは突然終わってしまった。残り1周あまり、 2位入賞を目前にしての突然のコースアウトであった。 1990年全日本F3000選手権・第4戦が、5月27日(日)三重県・鈴鹿サー キットで開催された。キャビン・レーシングチームは、このレースに星野一義、片山 右京の陣容で参戦した。星野は、今回からTカーとしてローラT90-50の新車を 持ち込んでいる。 <体制> キャビン・レーシングチームwithインパル ドライバー:星野一義 監督 :金子 豊 マシン :ローラT90-50/無限(Tカー ローラT90-50/無限) キャビン・レーシングチームwithヒーローズ ドライバー:片山右京 監督 :田中 弘 マシン :ローラT90-50/DFV(Tカー レイナード89D/DFV) <公式予選> 鈴鹿サーキットは早朝から快晴。気温とともに路面温度も上昇の気配を見せる。片 山は、まず1セット目の予選用タイヤで1分47秒951を記録。この時点で2位を 1秒以上引き離す好タイムだ。しかし、その後松本選手がベストタイムを更新したた め、片山は2セット目予選用タイヤを装着してコースイン。タイムアタックにかかる。 片山のタイムは当初1分45秒台と伝えられて驚きの声を引き起こしたが、直後に1 分47秒828と訂正された。1回目のタイムを更新したものの、松本選手の記録に は届かず、片山はA組2位で1回目の予選を終えた。 続いてB組の星野が予選に入る。星野は1セット目の予選用タイヤで1分47秒7 32を記録してB組首位に立つが、ライバルの小河選手が1分46秒台に乗せる好タ イムを叩き出して逆転。星野はピットインしてタイヤの左右を交換、水で冷却して再 度コースに入る。走行を続けて状況を測った星野は予選残り8分でピットに戻り、2 セット目の予選用タイヤを使ってタイムアタックにかかる決断を下した。結果は、1 分47秒667。残念ながら小河選手を上回ることはできず、星野はB組2位で予選 を終了した。午後には路面コンディションが悪化したうえ、主だったチームは1回目 の公式予選で2セットの予選用タイヤを使い果たしたため、順位に大きな変動は起き ず、上位が1回目の予選順位のままグリッドに並ぶことになった。星野はグリッド2 列目内側、片山はグリッド2列目外側である。 星野一義選手:1分47秒667 B組2位 「1分47秒台前半を出せばポールが取れるかな、と思っていたんだけど、小河君 は速かったねえ。今日のタイムアタックでは遅いクルマにひっかかるということもな かったし、自分ではそんなに悪い結果じゃないと思っている。あえていうなら、路面 コンディションを読むのが難しかった。もう少し可能性はあったかもしれないね。で も、本番用セッティングではベストタイムを記録してきたし、鈴鹿は西日本と違って 前のクルマが抜けないサーキットじゃないから、決勝ではいけると思っています。ま た、この前みたいに粘り強く頑張りますよ。このレースは、シーズンの流れの上で大 切なレースだろうからね。」 片山右京選手:1分47秒828 A組2位 「2セット目の予選用タイヤをつけて勝負をかけるつもりでコースインしたら、一 番混み合っている所に出ちゃったんです。それで、ダンロップ下とデグナーで遅いク ルマにひっかかってしまった。1分47秒台前半にはのせられるはずだったんですね どねえ。調子は完璧ですよ。でも小河さんの46秒台は速いよねえ。あれにはちょっ と届かなかっただろうな。でも、決勝はいいところにいってみせますよ。5月29日 はぼくの誕生日なんです。気持ちよく迎えたいですよね。」 <決勝レース> 日曜日は、土曜日に増して気温が上昇し、照りつける太陽の下で、レースのスター トが切られた。星野は松本選手、小河選手に続く3番手につけて戦いを始めたが、片 山は出遅れ、マルティニ選手、高橋選手、チーバー選手の後ろ7番手へ後退する。 星野は松本選手、小河選手と一団となって先頭争いを展開、片山はなんとか上位進 出を果たそうとチーバー選手攻略にかかる。上位には大きな波乱も起きなかったが、 といって間隔が広がることもなく、緊迫した雰囲気のまま進んだ。 14周目、片山がデグナーでスピン。体制を立て直してレースを続行したものの、 せっかく追い詰めたチーバー選手に逃げられてしまう。片山はなんとか形勢を挽回し ようと頑張るが、こんどは19周目2コーナーでスピンアウト。今度はサンドトラッ プにつかまって走行不能となり、リタイヤとなる。 小河選手をかわし、2位に浮上した星野だったが、首位をいく松本選手に詰め寄り はするものの順位を入れ換えるには至らず、34周目を迎える。星野はS字でマシン トラブルのため、そのまま左前方からタイヤバリアに突っ込んでしまったのだ。サス ペンションの曲がってしまったマシンは、もはや走行不能であった。 星野一義選手:決勝16位 「ずっとサスペンションの調子がおかしかった。多分、左フロントのサスだろうと 思う。それで、右コーナーで前のクルマとの間隔を詰めても、左コーナーで離されて しまうことの繰り返しだった。終盤は、なんとかこのままゴールできればいい、と思っ ていたんだけど。あの周、おかしかったサスペンションが急に折れたかなにかして、 マシンのコントロールが効かなくなってしまったんだ。それでコースアウトした。く やしいよ。ポイントで恵ちゃん(松本恵二選手)に抜かれてしまったのが本当にくや しい。」 金子 豊監督 「道具が駄目になってしまったら仕方ないよ。確かにこのレースを落としたのは痛 い。でもそう言ってばかりはいられないから。中盤戦に向けて、ゼロからやりなおし ますよ。」 片山右京選手:19周リタイヤ 「走り出したらすぐに、ブレーキのストロークが出ちゃったんです。踏み込むと、 そのままスゥッと奥までいっちゃう感じですね。それで、デグナーなんかいつもは5 0m手前を過ぎてからブレーキを踏むんだけど、今日は100m前から踏んでいた。 でも、そういう条件で最善をつくすのがプロですからね。なんとか追いつこうとがん ばっていたんだけど、タイヤをいじめるまでも攻めきれませんでした。そのうち自分 のミスでデグナーでスピンして。最後も自分のミスですね。ああいうところでミスし てしまうところに反省の材料がありますよ。もったいなくって、つまらないですね。 こういうレースは、反省します。」 田中 弘監督 「原因はわからないですけれども、ブレーキが不調になってしまった。テストでは まったく出なかった症状です。おそらくは熱が原因だろうと思うんだが。今回は右京 に悪いことをしましたよ。クルマの調子さえ良ければ、もっと前の方でレースができ たはずなのに。でも、リタイヤっていうのは痛いよなあ。53秒で走りつづけてさえ いれば3等賞だったのにね。あのスピンはちょっとなあ。右京も、耐えることを覚え なきゃな。でも、まあ人間なんだからたまにはスピンもするわ。今日は、右京に悪い ことをした、ということですよ。」 なお、今回併催された全日本F3選手権シリーズ第3戦にキャビン・レーシングチー ムから出場した原 貴彦選手は、予選7番手から見事なスタートで首位に飛び出し、 迫るライバルを抑えて念願の初優勝を遂げた。 原 貴彦:F3第3戦 予選7位 決勝優勝 「僕も決していいスタートではなかったんだけど、回りがみんなミスしてくれたん ですよ。まず服部選手がスタートで出遅れて、それを避けようとしてみんながもたつ く間にぼくはすっと抜けていたんです。それから羽根選手は1コーナー手前でシフト ミスしたのかな。それでぼくはアウトから並びかかって前へ行けた。1コーナーは予 選順位で通過できればいいや、と思っていたのに。みんなぼくにうまく働いたレース ですよ。途中、羽根選手が迫ってきたのは知っていたけど、レース途中で右のバック ミラーが脱落してしまったのでよく見えなかった。でも、きれいなレースだったでしょ う? レース中は、最悪2位でもいいから、とにかくつまらないミスをするのだけは やめよう、と考えていました。一昨年、オーディションで選ばれてから今日勝つまで、 長かったですね。100年くらいに感じましたよ。最高の道具を揃えてもらっておき ながら結果が残せなかったですから。」 ●’90全日本F3000選手権ポイントランキング表 1 2 3 4 得点 3/4 4/15 5/13 5/27 合計 1 松本 恵二 4 0 9 9 22 2 星野 一義 9 9 3 0 21 3 小河 等 0 6 6 0 12 4 マルティニ 1 2 0 6 9 5 チーバー 6 0 0 0 6 5 片山 右京 0 4 2 0 6 7 長谷見昌弘 3 1 0 1 5 8 ベルタッジア 0 0 4 0 4 8 クロスノフ 0 0 0 4 4 10 和田 孝夫 0 3 0 0 3 10 高橋 国光 0 0 0 3 3 12 中子 修 2 0 0 0 2 12 ヴァイドラー 0 0 0 2 2 14 影山 正彦 0 0 1 0 1 <順位による得点> 順位 1 2 3 4 5 6 得点 9 6 4 3 2 1 提供:キャビン・レーシング事務局