1992年全日本F3000選手権 1992年5月13日 RACE INFORMATION キャビン・レーシングチーム事務局 《第3戦 MINE》 「思いがけない不運」 カーナンバー19 星野一義 DNQ カーナンバー 3 黒澤琢弥 予選13位 決勝1周目リタイヤ 星野がいない! 全日本F3000選手権シリーズ・第3戦決勝をひかえたM INEサーキットのスターティンググリッド上に星野一義の姿はなかった、それ を知った57,000人の観客に衝撃が走った。キャビン・レーシングチームの 期待は黒澤一人にかかる。しかし、その黒澤からもツキが逃げていった。 1992年全日本F3000選手権・第3戦が5月9日(土)、10日(日) 山口県・MINEサーキットで開催された。キャビン・レーシングチームは、星 野一義・黒澤琢弥の陣容でレースに臨んだ。 《体制》 キャビン・レーシングチーム with インパル ドライバー : 星野一義 監 督 : 金子 豊 マ シ ン : ローラT92-50/無限 キャビン・レーシングチーム with ヒーローズ ドライバー : 黒澤琢弥 監 督 : 田中 弘 マ シ ン : DOME F103/DFV 《マシン》 星野は、このレースで新しいローラT92-50/無限を使用。車体番号00 3。マシンは空力を中心に高ダウンフォース仕様にセッティングされている。 黒澤は、従来のDOME F103/DFVを引き続き使用した。車体番号0 03。ボーテックス・ジェネレーター、フロアパネル、ディフューザー、ミドル ウィング等、改良を加えている。 《予選》 金曜日のMINEサーキットは激しい降雨に見舞われ、練習走行は途中で打ち 切りとなった。このため、土曜日の公式予選1回目の前にフリー走行の時間帯が 設けられた。ところがこのフリー走行で、星野一義のマシンのトラブルが発生。 星野のローラは後部からエンジン・オイルを漏らしながら発煙、第1コーナーに 停止した。 星野はマシンの修復のため1回目の予選を見送らざるを得なくなった。コース は土砂と星野のこぼしたオイルでコンディションが悪化、多くのチームはタイム アタックを見合わせた。しかし黒澤は1セット目の予選用タイヤを装着してタイ ムアタック、1分15秒480を記録して2位につけた。 午後の公式予選2回目までには星野のマシンの修復は完了した。ところが、い ざタイムアタックにかかった星野はマシンに異常を感じてペースダウン、ピット に帰還した。 セッション終了直前、星野はコースインして再びタイムアタックにかかるが、 マシンは復調しておらず、2コーナーを抜けたところで走行不能に陥ってしまっ た。星野は結局タイムアタックをすることができないままマシンを降りた。結果 的に星野の予選順位は最下位となり、予選を通過することができなくなってしま った。 一方、黒澤は午前中に装着した1セット目とフレッシュな2セット目を使って タイムアタックを行ったが、結局午前中のタイムを更新することができず、予選 順位を13位まで下げて決勝レースを迎えることとなった。 《談話》 星野一義:「外国人ばかりに上位を奪われるのはしゃくだから、ここでは頑張 るつもりでいた。フリー走行でああいうアクシデントがあって、1回目の予選を 走れなかったけれど、午後は十分にいけるはずだったんだ。でも、ついていない ときはついていないものだなあ。タイムアタックに入ろうとしたらエンジンから 異音がしたので、ピットに戻ったんだ。チームスタッフと最前の努力を尽くして、 とにかく予選を通過しようとコースに出たけれど途中で走れなくなってしまった。 予選落ちとはいっても実力で負けたわけじゃないから、なんだか拍子抜けしたよ うな気分だ。これまで予選落ちというのは記憶にないな。落ち込んでいてもしか たないから、シリーズ中盤に向けてのいい薬だと考えることにするよ」 金子豊監督:「午前中のトラブルは、オイルポンプの配管が外れてオイルが漏 れだし、エキゾーストの熱で加熱されて発煙したもの。このとき、エンジンが消 火剤をかぶってしまった。このため、午後のセッションに向けてエンジン交換を することも考えたけれど、その必要はないと結論を出した。セッションまでには 十分時間はあったが、余計な作業をしてかえってトラブルの原因を作ってもしか たがない。それだけエンジンの調子も良かったんです。しかし、結果的にエンジ ン内部にトラブルが出てしまった。判断ミスだったということでしょうね。チー ムをやっていても、こんなに悔しかったことはないよ。細かいことにも全力を尽 くすという基本姿勢を忘れていたかもしれない。ここは初心に戻ってやり直すつ もりでいます」 黒澤琢弥:「午後はコンディションもよくなったから大幅にタイムアップをす るつもりでいた。でも肝心の2セット目のタイムアタックのとき、途中で何度か タイヤを滑らせて消耗させてしまったんです。それであきらめの気持ちが出てし まって、記録を更新することができなかった」 田中弘監督:「F103は富士のレース以後様々なインプループを行なってテ ストを重ね、このレースに準備してきた。予選では路面の悪い午前よりも午後に タイムアップを期待したがダメだった。グリッド中団がすっかり指定席になって しまったのが情けないね」 《決勝レース》 決勝日は快晴となった。まさかの予選落ちとなった星野の姿はグリッドにはな く、キャビン・レーシングチームの期待は黒澤琢弥に集まった。スタートでは一 瞬出遅れたかに見えた黒澤であったが、第2コーナーで発生したアクシデントを うまく切り抜け、順位を6位前後まで上げる。 しかしながら、第2ヘアピンに向かうとき突然黒澤のマシンはペースダウン。 後続車に先を越されながら第2ヘアピンをスロー走行で通り抜け、そこでマシン は停止した。スタート直後、キャビン・レーシングチームの戦いはあっけなく終 わってしまった。 《談話》 黒澤琢弥:「スタートはミスしないように慎重にいった。一瞬、うまくいった かなと思ったんだけれど、その後の加速がうまくいかずに順位を上げることがで きなかった。結局スタートは失敗でした。でも、そのあとのアクシデントも切り 抜けたし、午前中のフリー走行では予選を上回るタイムも出ていたので、『よし これから頑張るぞ』と気持ちをとり直したんです。でも第2ヘアピンの出口で3 速にシフトアップしようとしたら、ドーンと衝撃がきて、走れなくなってしまっ た。これからというときだったので悔しくてしかたありません」 田中弘監督:「朝のウォームアップランでのタイムは、ガソリン満タン時のレ ースタイムより0.2秒も速かったので、予選は一体何だったんだろうね。レース は期待していたが、駆動系のトラブルみたい。どうも流れが悪いので鈴鹿ではこ の流れをいい方に変えたいね」 ◎’92年全日本F3000選手権ポイントランキング表 1 E.アーバイン 12 2 M.マルティニ 11 3 R.チーバー 9 P.カーカッシ 9 5 星野一義 6 T.ダニエルソン 6 7 服部尚貴 5 8 V.バイドラー 4 R.ラッツェンバーガー 4 10 M.サロ 3 11 黒澤琢弥 2 和田 久 2 13 R.リデル 1 M.アピチェラ 1 提供:キャビン・レーシングチーム事務局