全日本F3000

F3000:【レースレポート】2&4 SUZUKA

■片山右京、まずは快進撃の第一歩■
 「僕が見ているのは1台だけですから、あとの27台は見てません」今年1月鈴
鹿で行われたインタビューで彼はそう言い切った。
 コースイン5分前のピットで、コクッピットにおさまった、彼は一点を見つめて
いた。そう、その視線先には同じカラリーングのその1台があるのだ。彼には必ず
越えなければならないその1台が。
 「僕の方が勝っているとしたら、きっとそれはチームの総合力でしょう。ドライ
バーじゃないですよ」その1台とのテストタイム差の原因を冷静に分析し、彼はそ
う言いながら、その言葉とは裏腹に自信ありげに微笑んだ。
 スターターの音が激しく鳴り響くピットで、彼はコクッピットにおさまったまま
スタートの時を待つ。あの時と同じ自信ありげな目で。
 そして、35周を終了して表彰台の中央で彼はこう言った、「今日のレースはマ
シンのアドバンテージで勝てたので、実力じゃだめだなあって良く解りました。」
ともちろん自信ありげに微笑みながら・・・
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1991 ALL JAPAN F3000 CHAMPIONSHIP
ROUND 1
MILLION CARD CUP RACE
2&4 SUZUKA
SUZUKA CIRCUIT
2-3 MARCH 1991
ミリオンカードカップレース2&4鈴鹿
全日本F3000選手権シリーズ第1戦
Report/Youichi Fukuda[NBG01300]
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 鈴鹿のパドックにエンジン音が響き渡るころ、風はまだ冷たいものの、日差しは
かなりきついものとなっていた。スタート時間が近つぎ各チームのメカニックやス
タッフ達がピットレーンを慌ただしく走り回る。この時になっても黒沢のマシンは、
リヤのカウルを開けてエンジンを吹かして調整を行っている。
 完璧な体制で望むチーム。レース直前にやっとセットアップの完成したチーム。
それぞれのチームと選手の複雑な思惑の中、それでも、全チームに平等に午後2時
はやって来た。そして、赤いキャビンのマシンがいつもの様にポールにマシンを止
めた。しかし、それはいつもとは違っていた。そのキャビンのシートにおさまって、
じっとシグナルを見つめるのは、星野ではなかったのだ。ポールを手にした片山は
今年から変更されたポールポジションの位置であるアウト側にマシンを止めた。そ
の右手に予選2番手の小河がマシンを止める。
 シグナルがグリーンになると片山はアウト側から力強く小河をリード。スタート
は混乱も無くほぼ予選通りのオーダーで完了した。
 オープニングラップは片山を先頭に小河、関谷、マルティニ、ハーバート、ダニ
エルソンの順。ここで早くもカシオトライアングルで接触発生。どうやら服部とチー
バーらしく服部はリタイヤした模様。
 4周目、チーバー、リースが同時にピットへ。フロントウイングを外して作業に
入った。その頃、同じくピットでは和田がリヤのカウルを開けている。エンジンが
止まってしまうトラブルが発生しているらしい。
6周目、片山と小河の間隔が少し開く。そして、やはり6番手のダニエルソンの
うしろに星野が迫って来た。そして、徐々にダニエルソンとの間隔を詰めている。
 7周目、影山がホームストレートを惰性でゆっくり下ってくる。どうやらミッショ
ンを壊したらしい。そのままピットレーンの出口にマシンを止めてリタイヤ。戦列
を去った。
9周目、片山と小河はラップタイムのシーソーゲームしている様だ。一方、ダニ
エルソンを星野が猛追、その差1秒足らずまでに詰めている。もう時間の問題かと
思わせた。ところが、10周目、星野にプレッシャーを掛け続けられていたダニエ
ルソンが2コーナー辺りでスピンそれを避けようとしてアウトにマシンを振った星
野の前にスピンしたダニエルソンのマシンが。これで2台ともサンドラップへ。そ
の毒牙にかかる。スピンの原因はブレーキトラブルと伝えられた。同じ頃、久々の
トップフォーミュラ復活の舘も裏のストレートで戦列を離れる。星野、ダニエルソ
ンのトラブルは、片山、小河のバトルをより激化させた。
 12周目の順位は、片山、小河、関谷、ハーバート、ラマース、マルティニの順。
小河は正確な走りで片山にプレッシャーを掛ける。片山はそれを堂々と受けて立つ。
同じ頃、ピットにチーバー。服部との接触でどうやらフロントサスを痛めたため
リタイアの模様。ガレージにマシンを引き込む。
15周目、ピットで黒沢のマシンがカウルを開けている。エンジンが吹けないら
しい。レース前からの症状が本格化したらしい。この時、ゼッケン10番にブラッ
クフラッグが出された。バイドラーである。黄旗無視が原因の様だ。30秒のピッ
トストップを指示される。
 16周目、タイトなコーナーでは完全に小河がテールにつくが直線の延びに絶対
の自信を持つ片山はロングストレートで小河を離す。小河は冷静に片山の動きを見
てミスを待つ。しかし今日の片山は違った。レース後のインタビューではミスを沢
山したと本人は言っているが、レースの展開を変えるようなミスらしいミスをほと
んどしていない。また関谷はこの2台に完全に置いていかれている、と言うか2台
以外の全てが置かれているのである。そして、この2台は周回遅れを出すことによっ
て、その処理と駆引きという微妙な争い抱え来んだ。
 17周目、田中、黒沢がコースサイドにマシンを止めた模様。開幕戦らしくトラ
ブルが続出している。
 やはり、片山と小河は周回遅れの処理具合によりその間隔を変化させてグランド
スタンドに戻って来る。そして、22周目、ここに来て小河がペースを落しはじめ
た。片山との差が2秒近い開きになる。一方、片山は1分48秒台前半のタイムで
逃げている。小河は何かトラブルか追撃の様子は見られない。これで勝負あったか。
思わせたのも束の間、27周目に入り小河は思い出したように1分47秒台を立て
続けに叩きだし、片山を追う。しかし、レースは残り8周余りだ。これを十分と見
るべきか少ないと見るべきか。
 28周目、7番手の松本も快調に飛ばしていたがピットイン。ミッショントラブ
ルの模様。マシンを降りた。
 30周目、キーポイントはやはり周回遅れだった。この周回で周回遅れの処理に
手間取った片山に小河急接近。もし、もう一度、片山がミスすれば、それでレース
はひっくりかえる可能性を十分持っている。小河は片山の後ろにぴったりつきミス
を誘おうとするが、片山はそれに耐えている。
 34周目、中谷がホームストレートの立ち上がりにマシンを止めた模様。一方、
快調に順位を上げて来ていたラマースがハーバートをかわして4位に浮上。
 そして、トップがコントロールラインを通過。片山はガッツポーズでホームスト
レートを駆け抜けた。この後の土壇場でラマースが関谷をかわして3位表彰台を奪
取。関谷は、またも不運に見舞われた格好となった。
 「完璧でしたね」田中監督は一言、そう言った。片山はこの勝利でまた大きく飛
躍するだろう。そして表彰台中央に片山が立つ。そして彼はそのとき彼が唯一最も
恐れた男がその両側には居ないことを改めて確認するのだろう。
 * 文中に使用しました周回数はタワー表示に1周加算したもの、タイムは全
  て手元(ストップウォッチ)計測によりますので、公式の記録及び結果では
  ありません。出来る限り正確を期しておりますが、間違いがあった場合は申
  し訳ありませんが御指摘ください、訂正させて頂きます。
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                       レポート/福田 陽一[NBG01300]


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