Formula Nippon

第1戦鈴鹿レースレポート

シリーズ名:全日本選手権フォーミュラ・ニッポン
大会名:第1戦・鈴鹿
距離:5.86403km ×35周
予選:4月18日 雨一時曇り・観衆:1万2000人(主催者発表)
決勝:4月19日 快晴   ・観衆:3万8000人(  同  )

新人のトム・コロネル選手、レース中のベストラップをマークして8位でチェッ
カー!
猛チャージを見せた山西康司選手は惜しくもリタイア

 待ちに待った98年全日本選手権フォーミュラ・ニッポン(略称:FN)がいよいよ
開幕した。第1戦の舞台は鈴鹿サーキット。PIAA NAKAJIMA RACI
NGの新体制としては、今シーズンからF1GPにステップアップした高木虎之介選
手が昨年までドライブしていた64号車を山西康司選手が、その山西選手がドライブし
ていた65号車を新加入のトム・コロネル選手がドライブする。FNで2シーズン目を
迎える山西選手は、シーズンオフのトレーニングでもトップタイムを連発。マスコミ
のインタビューにも「昨年後半は苦戦したけれど原因が分かった。今年はテストも僕
がやることになっているのでプレッシャーはありますが、頑張ります」と力強く応え
るなど、エースとしての自覚が出てきたようだ。一方のコロネル選手は昨シーズンの
全日本F3チャンピオン。今回がFNデビュー戦となるルーキーだが、F3では8戦
中6戦で優勝、2位1回と抜群に安定した成績を残しており、レースマネージメント
の能力も高く評価されている。
 予選日の18日はレインコンディションで明けた。路面は完全なウェットだったが、
シーズンオフのトレーニングでマシンのセットアップは順調な仕上がりを見せていた
ことから、2人のドライバーは午前中の公式走行ではタイヤの消耗を考慮し、最終確
認程度の走行で、山西選手が16番手、コロネル選手が13番手に終わっていたが、午後
の公式予選では上位グリッドをゲットできる手応えをつかんでいた。しかしその公式
予選では思わぬ落とし穴が待っていた。午後1時30分から行われた公式予選は、時折
雨足の激しくなる天候で、まずは2人のドライバーともに溝の深い“スーパー・レイ
ン”で走り始めた。そして、セッション後半になって、同じレインタイヤでも溝の浅
いタイプで、いよいよタイムアタックとなったのだが、ここで微妙にマシンのバラン
スが崩れてしまっていたのだ。しかも、山西選手は気が逸ったのか、タイヤが完全に
温まる前にプッシュしてスピン、完全にリズムを狂わせてしまい予想だにしなかった
18番手にまで沈み込んでしまう。一方のコロネル選手は19周も走り込んだのだが、バ
ランスが崩れてしまったマシンでは15番手が精一杯。2人のドライバーは、このパッ
シングポイントの少ない鈴鹿サーキットでは致命的とも思える下位グリッドに飲み込
まれてしまったのだ。
 明けて決勝日の19日は、一転、雲一つない快晴に恵まれることになった。トレーニ
ングでは好調だったから、2人のドライバーはともにドライコンディションは大歓迎。
朝一番で行われたフリー走行では、快調だったトレーニング時のセッティングに戻し
てフィーリングをチェックすることになった。しかし、ここでも思わぬトラブルに遭
遇してしまう。ピットアウトしてマシンの好感触を確かめ、更にペースアップしてい
った山西選手だったが、3周目にいきなりエンジンがストップしてしまったのだ。セ
ッション終了後に回収されてピットに戻ってきたマシンをチームスタッフがチェック
したが、はっきりした原因がつかめない! エンジン本体にも何ら問題は見つからな
かったので、補機類をアッセンブリーで交換し、午後の決勝に備えることになった。
ただし心強い材料も見つかった。それはコロネル選手が1分47秒台の好タイムで2番
手に付けたこと。つまりマシンのセッティングには何ら問題のないことが証明された
のだ。トラブルの原因がはっきり分からないということで不安げだった山西選手の表
情にも、やっと明るさが戻ってきた。午後の決勝レースでは、ただただハイペースで
追い上げるだけだ!
 午後2時にスタートが切られた決勝レース。下位のグリッドからスタートした2人
のドライバーだったがシグナルと同時に好ダッシュを見せ、オープニングラップを終
えた時点では山西選手が13位、コロネル選手が12位と大きくジャンプアップした。山
西選手はなおも3周目には1分50秒198 のベストタイムを叩き出す好調ぶりでコロネ
ル選手をもパスして11番手にまで進出した。さらに9周目には10番手に上がり、なお
も先を急いでいた矢先の11周目に悪夢が再現された。デグナーカーブの先、通称“立
体交差下”で、朝のフリー走行と同様に、いきなりエンジンがストップしてしまった
のだ。序盤の快走でバイオリズムのカーブも上向きに方向展開させたかに思われたの
だがこれで万事休した。さらに、8番手まで進出していたコロネル選手も、1コー
ナーで野田秀樹選手をアウトからパスしよとしてコースオフ。まさにチームにとって
は最悪のシナリオとなるかに思われたが、その後の展開は今後に繋がるものがあった。
コースオフしたコロネル選手はサンドトラップを突っ切って奥のグリーンに辿り着く
や大外を回って2コーナー先で再びコースに復帰。以後はトップグループに劣らない
ハイペースで猛チャージを再開したのだ。
 コロネル選手が、コースオフした際にフロントウイング&ノーズコーンを傷めたこ
とを察知したピットでは、スタッフがスペアパーツを用意して彼のピットインに備え
たが、追い上げに差し支えないと判断したコロネル選手は、ピットに立ち寄ることな
く猛追撃を開始した。一時は13番手にまで後退したものの、その後はポジションアッ
プに次ぐポジションアップ。ここ鈴鹿サーキットはパッシングポイントが少ないと思
われていたのだが、前車との差を詰めて背後に迫るとスパッと思い切り良くパス。こ
れを繰り返していって、27周目にはコースオフした時と同じ8番手まで挽回して見せ
たのだ。彼が33周目にマークした1分48秒602 というタイムは、このレースのベスト
ラップとなった。このコロネル選手の活躍によって、マシンのポテンシャルも改めて
証明された恰好になった。そして『ネバー・ギブアップ!』の精神も。結果以上の内
容を得た開幕戦だった。

■PIAA NAKAJIMA RACING総監督 中嶋悟のコメント
「山西選手は、電気系統のトラブルでエンジンが止まってしまいました。コロネル選
手は、レース中速さを見せてくれた。今回のレースは予選の失敗が全てです。次戦以
降、この様なことのないように全力を尽くして戦います。」


 ●次戦は、5月16日~17日山口県MINEサーキットで開催されます。


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